同じ建物でも「階数格差」があったり、マンション物件は「一点物」だ。失敗しない選び方とは?(写真:shimi/PIXTA)

「新築マンションは買った途端に2割も3割も値下がりする。それなら中古マンションのほうがお得」といわれることがあります。本当なのでしょうか? 少し考えてみたいと思います。

マンションの購入に当たっては、大きく2つのニーズが混在していることが多いです。1つは「広い部屋に住みたい」とか「充実した設備に囲まれて暮らしたい」などと、居住性や快適性を高めたいというニーズです。もう1つは、「賃貸暮らしで高い家賃を払い続けるより、買ったほうが総額は安く済むかもしれない」とか「値上がりするエリアかもしれない」といった金銭的合理性や資産性を期待するニーズです。

しかし、こうした2つのニーズは混在しやすい反面、「同時に満たす」のは簡単ではありません。

実需と投資のニーズを同時に満たすのは難しい

マンション購入のニーズについて、ちょっと専門的になりますが、もう少し掘り下げてみましょう。

不動産業界では、買い手が住むための物件は「実需物件」、賃貸などで収益を得るための物件は「投資物件」と区別されています。実需と投資で、検索用のポータルサイトも異なったりします。

実需物件を選ぶ場合、多くの人が広さや設備、ブランドなどを重視します。一方、投資物件を選ぶ場合は利回り重視で、家賃が高くなりそうな物件を安い価格で買えることを望みます。また、安定した家賃収入を得たいと考えれば、物件の広さよりも立地にこだわる必要があります。ここで問題は、立地と広さを兼ね備えた物件というのが一般に高価格であること。そのため、投資物件の買い手は、広さのほうを妥協して物件を選ぶことになりがちです。広さの妥協は居住性を譲ることでもあるため、実需と投資のニーズを同時に満たすことも簡単ではないということができます。

できる限り2つのニーズを満たすマンションを探すには、どうしたらいいか。最近、「半投半住」という考え方が広がりつつあります。投資的な観点で「資産価値を維持しやすい」物件を「住まいとして買う」際にも気にかけましょう、という考え方です。つまり、自分たちが購入し暮らそうとしているマンションは、将来、貸したり売ったり簡単にできる物件なのかどうか、そこを意識するということです。

こうした「半投半住」を重視して物件を探している人から、「いろいろ見て回ったが、新築でも中古でもあまり価格が変わらない」という声を聞くことがあります。

確かに、東京23区、もっというと都心の千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区、文京区、江東区などで「駅から5分以内」の中古マンションは、周辺で販売されている新築物件と、さほど価格が変わりません。人気のエリアのマンションは中古になっても値崩れしていないのです。裏を返せば、中古の価格が新築に比べて下がっている場合、そのエリアは長期的に資産価値を維持しづらい物件が多いと見ることもできます。

したがって、「新築・中古ともあまり価格が変わらないエリアを見つけて、新築・中古の縛りなく両方の物件を探す」が、「半投半住」のマンション探しの基本姿勢といえそうです。

価格に影響する要素が複雑で、物件はすべて「一点物」

マンションは需要と供給の関係で価格がほぼ決まりますが、人気のエリアのマンションが中古になっても価格が下がらないのは、古くても欲しい人がたくさんいるからです。

一方で、同じ建物のマンションであっても、間取りや階が違えば窓から見える景色も異なったりします。マンション価格が需要と供給の関係で決まるのは間違いないのですが、「不動産は一点物」といわれるように、マンション物件は、それぞれ「要素」条件が異なるので一つとして同じものがありません。中古物件になると価格に影響する要素がさらに増えます。

先日、マンション価格が年々上昇しているエリアで物件を見て回りました。新築時4500万円だった物件が、築10年経った現在は6500万円で売買されていました。相場は上昇基調とはいえ、それにしても強気な価格です。

何か変だとヒアリングをしてみると、オーナーは5年ほど前に中古でこの物件を買ったことがわかりました。新築時に購入した人がオーナーであれば、取得価格も4500万円でしょうから価格交渉できるかもしれません。しかし今のオーナーは新築時より、かなり高い価格で購入したのでしょう。だから、強気な価格を付けていて、交渉の余地もありませんでした。中古マンション市場では、このようなケースが少なくないと思います。

私自身も過去に物件を売却しようとしたことがあり、「高く売れるなら売る、そうでないなら持ち続ける」という方針で募集をかけました。このような方針の物件オーナーと価格交渉する場合も骨が折れるかもしれません。

一方で親から相続した物件を早く現金化したい、転勤までに引っ越しをしなければならない、といった事情を抱えるオーナーとは、価格の相談に柔軟に応じてもらえるかもしれません。同じ物件であっても、売り主の事情によって価格が変わるわけです。やはり「不動産は一点物」です。中古物件を探す場合、売り主がなぜ売却しようとしているのか、その理由を探ることもテクニックの1つです。

最大のニーズを満たしてくれるかを吟味

ここまでを整理すれば、マンション購入に当たって「新築と中古の価格差があまりない都心部などのエリアに、大きすぎない物件を、中古であれば売り主(オーナー)の事情もヒアリングし、価格交渉することが大事」ということになりますね。

とはいえ、物件の「性格」と購入の「ニーズ」がずれていては元も子もありません。オーナーが価格交渉に応じてくれるとしても、自分のニーズを満たさない物件について交渉するのは意味がありません。

人気のエリアで資産価値の維持が見込める物件であっても、購入の一番のニーズが「子どもが思いきり走り回れるような家が欲しい」ということなら、資産価値の維持より物件の広さを優先するほうがいいのです。将来売却したり賃貸したりする考えもなく、終の住み処とするのであれば、資産性にはそれほどこだわる必要はありません。

大事なのは、自分が満たしたいニーズと、物件の特徴をクリアにすること。そのうえで、その物件はニーズを満たすかどうか、吟味して選べば、自分にとってのオンリーワンの物件を見つけることができると思います。くれぐれも、実需のニーズも投資のニーズも同時に満たしてくれるような物件を探し回らないことです。「パーフェクトな物件なんてないんだ」と思いながら探すほうが、自分にとってのオンリーワン物件に巡り合う機会につながるでしょう。