40代女子座談会 「おばさん」と呼ばれることにどう慣れる?
雁須磨子がOhta Web Comicで連載中の『あした死ぬには、』の第1巻が、6月13日に発売された。同作は、40代で直面する心と身体の変わり目をコミカルであたたかなタッチで描写した作品。それに先立ち、主人公の多子と同年代の40代女子3名による座談会が開催された。40代女子はいったいどんなことで悩んでいるのか? 座談会の内容を一部紹介しよう。(※一部ネタバレを含みます)
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【座談会参加者】
・Aさん ウェブ編集者・独身(子ども2人)・41歳
・Bさん 映画宣伝・独身・44歳
・Cさん ウェブディレクター・独身・42歳
◆体の不調を気力で乗り越えられなくなるのが40代
A:体の不調って、いきなりきますよね。
C:急ですよね……。
B:多子みたいな更年期の症状はまだないんですが、夜中に動機が止まらなくなって、救急車で運ばれるところは身につまされましたね。私も2回くらい体を壊しているので……。その時は親に「もうこれ以上仕事をするな」と言われて。確かに親を泣かせてまでする仕事なのか、と自問自答するところはありました。
A:そうだったんですね……。
B:私も多子と同じで映画宣伝の仕事をしているんですが、今はわりと楽なポジションにいて。もし今も多子みたいにがっつり作品担当をするような立場にいたら、「体問題も抱えて、いつまでこのペースで仕事ができるのかな?」って絶対に考えていると思う。40代になると親とか家族の事とも、バランスをとりながらやらなきゃいけなくなってきますしね。
A・C:うんうん。
B:30代でクリアしたハードルよりもさらに高いハードルがいつも待っているなと……これを越えたら次、越えたら次っていうのがどこまで続くんだろうと思ったりもします。
A:私は39歳の夏に体の不調がきたんですけど、普通に洗濯ものを干していたら「首ぎっくり」になったり、冷房が急にしんどくなって震えが止まらなくなったりもして。一回そういうことが起こると、元に戻りにくくなってしまう。その夏はずっと具合が悪かったですね。昔みたいに、とは言わないから、せめてキープしたいと思うようになって……前は素足にてろーんとワンピースとか着てたんですけど、もう絶対に足首出さないし、丹田には常にカイロを貼っておくようになりました。
C:そういう体の不調を、気力でカバーできなくなってきますよね。
A・B:わかる!
C:40歳になって、気力ってこんなに折れるものなんだなって思いました。気力を取り戻すには体が元気じゃないとだめだし、いいアイデアも体が元気じゃないと湧いてこない。私もA さんがおっしゃったようにあらゆるものを試しました。まだ探し中なんですが……空手もやっていたんですよ。
B:わー空手ですか!
C:今までの自分とは真逆のことをやってみたらいいんじゃないか、というショック療法的なことを考えて(笑)。3年くらい続きました。今はゆるやかに、無理をせずスポーツセンターでエアロビをやっています。20代のころはいやだなと思って見ていたんですけど、今は理にかなっている、と思うようになりました。「U.S.A .」に合わせて踊っている自分を、何とも思わなくなりますし(笑)。
A:それはありますよね。昔恥ずかしいと思っていたことを何とも思わなくなる。おばさん化してるのかなって思いますけど……。
◆「おばさん」と呼ばれることに慣れる日は来るの?
──「おばさん」と呼ばれることに関してはいかがですか。多子のかつての同級生で主婦の塔子は、パート先で「オバチャンって!」と呼ばれたり、そのことに傷ついていると同じ年齢のパート仲間に「そんな傷つくようなことじゃないと思うんだけどナ〜」と言われたりして、「ちゃんとおばさんにならなきゃって思ったの」と娘に話します。
B:私は今、甥っ子と二人暮らしをしてるので、「叔母さん」と呼ばれることに慣れていて。意味は違うんですけど、同じ音なので「おばさん」と呼ばれるハードルは低いかもしれないです。「あ、はい。おばさんですよね」って。
──確かに意味は違いますけど、叔母さんである自分をはっきり認識できていると、おばさんである自分を認識することにも自然とスライドしていくかもしれないですね。
C:私は親戚の中でも一番年が下で、常に一番若い子という扱いをされてきたんですよね。甥っ子からも「ちゃんづけ」で呼ばれるので、「叔母さん」という気持ちも「おばさん」という気持ちも薄くて……。ただこの間ですね、実家から駅まで歩いていたら幼馴染の子と会って。彼女が連れていた幼稚園生の子供が私を見て「誰のママ?」って言ったんですよ。その時はもうね、「おばちゃん、誰のママでもないよー」って言いました。
A・B:笑
C:自分で自分のことを「おばちゃん」って言った時に、おばさんであることを受け入れたというか、もう呼ばれてもいい時なんだなって思いましたね。自分から言えるかどうかに、すごくハードルがあるなと。ただ塔子さんみたいに、人から「オバチャン!」って呼ばれた時にどう思うかは……。
A:私は自分から「おばちゃんはね」って言いたくないし、人からも言われたくはなくて。ただし、「私たちおばさんになったよね」って同年代の人たちと言うことはできるんですよ。共感しあえる中で自分のことをおばさんと認めることは全然かまわないんですけど……どういうことがあると、受け入れられるようになるんですかね。
C:この漫画を読んでいくうちにわかるのかなと思っています。いろんな人たちが出てくるし、すごく内面を掘り下げて描いてくださってるから……。電車の中で多子が内観するシーンがたまに出てきますよね。あれ、すごくわかるなと。真剣に考えている時というより、ああいうふとした時に自分を受け入れられる。
A:私も好きです! 自分が変わっていくことを、「脱皮」みたいなイメージで浮かべるシーンが特に好きで。
A:40年生きてくると、核の自分に近づいて行っているような気がして。自分が何が好きなのかとか何が得意なのか、何を大事にしているかとかがわかってきて、周りの目があんまり気にならなくなってくる。世間の「こうしなきゃいけない」みたいな常識からそろそろ自由になりつつあるなと。おばさん化みたいなネガティブなことなのではなくて、いい意味でもあるのかなと思います。
B・C:うんうん。
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この座談会の本編はこちら
(http://www.ohtabooks.com/press/2019/06/13120000.html)。
なお、本日公開の「後編」では、より切実な恋愛・結婚・お金・人生などについて語りつくしている。
『あした死ぬには、』の第1巻は、2019年6月13日(木)発売。1200円+税。Ohta Web Comicで好評連載中の本作は、第1話と最新話が無料で公開されている。