交際を宣言したFCAとルノー、当事者の意志を無視した小姑の介入で、突然の破局!
フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は6日、仏ルノーに対して5月27日に提案した統合を取り下げると発表した。提案も突然だったが、取り下げはそれに勝る早業だ。
【統合の狙いは】FCAとルノーが統合を目指す狙いとは?
FCAがルノーに提案した統合プランでは、日産と三菱自動車を含めた1500万台規模の自動車メーカーが誕生し、販売地域も車種も相互補完効果が高いというのがキーポイントだった。
ルノーの経営に係る事項にはフランス政府の介入が甚だしい。今回も、FCAが統合を提案した翌日の28日には、仏経済・財務相が「統合は日仏連合の枠組みの中で実施すべきだ」と発言して水を差した。フランス政府幹部の発想は明確だ。フランスにとって都合が良ければ歓迎で、都合が悪ければ注文を付ける。今回も、統合会社の最高経営責任者(CEO)にルノー出身者を就任させる確約や、フランス国内での雇用の維持、本社をフランスに置く等々を、求めていたと仏紙フィガロが報道している。
FCAの主要な構成会社であるフィアットが本社を置くイタリアの副首相が、フランスの”いいとこ取り”を嫌って、「イタリアに利益がないと判断すれば統合交渉に介入することもある」と示唆して参戦してきたことも、更に混沌の度合いを深めた。
日産の姿勢が明確でなかったことも要因であると伝えられている。西川社長も「日産とルノーの関係を見直す必要がある」と見解を表明したが、日産が当事者ではない以上、明確な姿勢を示すことはそもそもあり得ない。
こうした状況を背景に、ルノーの取締役会が2日に渡って開催されたが、結論を出すことは出来なかった。筆頭株主であるフランス政府が「決議を延期したい」と希望したというのであるから、取締役会が結論に辿り着かなかったのは当然と言える。
今やフランス政府は、ルノーのやることなすことにケチを付ける小姑のようなものだ。色々理屈を付けてはいるが言いたいことは、「俺たちの言うことを聞け」なのだから、経済的存在である事業会社の発想とは相いれない。黙って見ていられなかったイタリア政府も50歩100歩だ。
今回のドタバタ劇は、ルノーとのアライアンスをどうするかという難問と向き合っている日産にも、大いに参考とすべき事柄が多い。事前にフランス政府と周到な準備を重ねてきたはずのFCAのエルカン会長も、フランス政府の姿勢にあきれ返ってさじを投げたようだ。
日産にとって愉快な出来事ではなかっただろうが、いずれ統合の可否を論じる交渉相手のルノーと、背後に控えるフランス政府の実態が図らずも世間に周知された意味合いは大きい。フランス勢も当面は動きにくくなったのではないだろうか。