17歳久保建英、なぜ高速FKを蹴れるのか 恩師証言「小5から続けていること」とは?
小学5年生から久保を指導するプロトレーナーの木場氏 ルヴァン杯鳥栖戦のゴールを解説
8日にルヴァンカップBグループの第5節が行われ、秩父宮ラグビー場ではFC東京がベガルタ仙台と対戦する。
4月10日には同会場で55年ぶりのサッカー公式戦として第2節FC東京対サガン鳥栖が行われ、FC東京が1-0と勝利を収めているが、この一戦で存在感を発揮したのがFC東京の17歳MF久保建英だ。久保は7日に発表されたU-20W杯に向けた日本代表メンバーに招集されず、一部報道では同時期に行われるコパ・アメリカに臨む日本代表に選ばれるとも言われている。
鳥栖戦の後半39分、久保は右サイドで得たFKのキッカーを務め左足を振り抜くと、ライナー性の鋭いシュートがファーサイドに突き刺さった。これが今季公式戦初得点。ひと振りで勝ち点3を手繰り寄せた。
この一撃に感嘆の声を上げたのが、久保が小学5年生の頃からトレーニング指導に当たり、バルセロナのカンテラ(下部組織)時代から知るプロトレーナーの木場克己氏だ。鋭い腰の回転から放たれたファインゴールについて、次のように解説する。
「脇腹、お尻、膝周りの強化が生きていますね。あとはひねる筋肉である腹斜筋。振りが速いのは、インナーマッスルとアウターマッスルに同時に刺激を入れながらのトレーニングをやっているから。パワーを溜めることができている感じがします」
木場氏は体幹・体軸・バランスを強化する「Koba式体幹・バランストレーニング」の開発者であり、かつてガラタサライDF長友佑都の体幹トレーニングを指導。現在は鹿島アントラーズFW安部裕葵らトップアスリートが師事するスペシャリストだ。
「完全に習慣化している」 地道な体幹強化の成果としての高速FK弾
木場氏が久保の指導において重視してきたのは、体幹強化によって頭の位置が体の中心からブレないようにすること。このFK弾につながったトレーニングについて、次のように解説する。
「体幹のインナーマッスルと、その周りを支えるアウターマッスルがあって、骨盤を安定させる腹横筋、多裂筋があります。まず多裂筋を作って、ひねる筋肉である腹斜筋のアウターマッスルを作って、中と外を一緒に鍛えるというトレーニングですね」
鍛錬の成果として安定した姿勢で踏ん張ることが可能になり、腰の鋭い回転を支える要因となっている。まさに鳥栖戦で久保が見せたキックは、そうした要素が土台となった。体幹が安定しているからこそ、左足を強く振り抜いても正確性が損なわれることがない。
「小5からやり続けているなかで、頭をブレさせないことは常に言っています。そういうところがキック力と精度にもつながっています。常にやっているから、完全に習慣化しています」
特製のマットやチューブ、ウォーターバッグなどを使った体幹トレーニングを継続してきたことで、現在の久保はさまざまなトレーニングを高いレベルでこなせるようになっているという。日頃から癖になるほどに積み重ねてきたことは、公式戦の場でも自然と発揮されている。力強く正確なキックは、一朝一夕で身についたものでも、才能だけで片付けられるものでもない。木場氏は続ける。
「カラダが外側に逃げるということは、脇腹と臀部、ひざ周りが瞬時に連動していないということです。重心がブレるので、使える筋肉の最大値が10から6に減ったりするイメージです。カラダの軸が真っ直ぐになって、インナーマッスルとアウターマッスルが同時に働けば、最大値につながります。頭がブレていたりしたら、体の片側が使えていない状態にもなり、腰に負担が掛かるケースもあります。タケフサの頭がブレていないというのは、このゴールから見ることができますよね」
長年にわたる着実な強化が、鳥栖戦のFKを始めとした結果につながっていることは間違いない。安定感のある体幹に裏付けされたプレーは、遠くない未来のさらなる飛躍も予感させる。(Football ZONE web編集部・片村光博 / Mitsuhiro Katamura)