女子たちは、自撮りは「自然な盛り」、プリクラは「こってりとした盛り」と使い分けて楽しんでいるようです(写真:Fast&Slow/PIXTA)

春は中高生にとって新しい仲間とスタートする季節です。友達ができたらすることは、もちろんスマホでの撮影です。友達と一緒に自撮りしたり、クラス全体で他撮りしたり、その枚数は膨大になります。そして、撮影した写真は、せっせとInstagramにアップ。「ストーリー」には新しい制服や学校行事で撮影した投稿があふれかえります。毎年変わらない生活を続けているオトナには、その新鮮さが羨ましくもありますね。

自撮りアプリは「自然な盛り」のブーム

ところで、自撮りは「どれくらい盛れる(かわいく写る)か」が勝負です。2019年3月19日にSHIBUYA109エンタテイメントが発表した「スマホの中身」調査によると、15歳〜24歳の女性の98.2%が自撮りカメラアプリを利用していました。スマホのカメラにビューティモードが付いている機種もありますが、若い女性にiPhoneユーザーが多いからでしょうか、調査対象約580人のほとんどがアプリを使って自撮りを加工していました。

そんな自撮りアプリに最近ある変化が起きています。それは「自然な盛り」のブームです。

App Storeの無料アプリランキングの4位(執筆時点2019年4月18日)に入る自撮りアプリ「SODA」は、ナチュラルな盛りが売りです。最近のトレンドは、プリクラのようにいかにも盛れているものではなく、さりげなく自然な加工なのです。SODAは、自撮りアプリ「SNOW」で一世を風靡したSnow Corporationが提供しています。


加工前(左)と加工後(右)(写真:Snow Corporation)

どれぐらい自然なのか、こちらの画像を見てください。SNOWのイメージキャラクター「SNOW GIRL」をしている堤もねさんの加工前、加工後の画像です。

人気の「Natural」フィルターにメイク機能「Pink」を重ねて撮影しているそうです。こうして比べてみると盛っていることに気づく程度で、いかにも加工した印象はありません。しかし、加工前よりも表情が明るく、かわいく見えますね。

こうした「自然な盛り」の傾向は、日本だけではありません。同じく人気急上昇中の自撮りアプリ「Ulike」は、中国のShenzhen Lianmeng Technologyが提供しています。同社は自撮りアプリ「FaceU」も開発しており、今人気のショートムービーSNS「TikTok」を提供しているバイトダンスの子会社です。

Ulikeは、フィルターを選ぶだけで適度なメイクや透明感のある肌に加工してくれるアプリです。「美顔」機能で目やあごなどをパーツごとに調整することもできますし、「メイク」で口紅や頬紅を追加することもできます。また、「姿勢」機能では、シーンに合わせたおすすめの自撮りポーズを出してくれるので、いつもと違うスタイルで撮影できるのも楽しいですよね。

SNOWは新たな方向性で首位をキープ

とはいえ、まだまだ「SNOW」人気も健在です。先ほどの調査で自撮りアプリの人気ランキングの1位は「SNOW(63.6%)」。そして2位は「B612(55.5%)」、3位は「SODA(32.7%)」「Ulike(32.7%)」が同率ランクインしています。


SNOWが一大ブームを起こした動物スタンプ(写真:筆者作成)

SNOWが2016年に爆発的な人気を博したときには、動物のスタンプやデカ目加工がよく利用されていました。こうしたエフェクトは今でも人気がありますが、最近では写真全体を白っぽく加工したり、文字やフレームを施したりといったスタンプにも人気が出ています。「新元号令和に決定」とテロップが入るフレームや、「平成最後の○○」と文字入れできる機能もあり、つねに時代を意識して新しさを提供する姿勢を感じます。

2位の「B612」も同じくSNOW社のアプリで、以前から人気がある定番の自撮りアプリです。機能はほぼSNOWと同じで、スタンプの種類が少し違う程度なのですが、女子たちはお気に入りのエフェクトやスタンプが決まったら、しばらくそれを使って撮影し続けるため、同じようなアプリでも「私はSNOW」「私はビーロク(B612)」と愛用のアプリが分かれるのです。

また、どちらのアプリも輪郭や目の大きさをどの程度加工するかを細かく調整し、その設定を保存できるため、次回からは好みのエフェクトをすぐ呼び出せます。お気に入りアプリから離れられない理由のひとつですね。

SNOWブームが始まった頃に人気だった、こってりとした盛りができるほかのアプリは現在身を潜めています。しかし、同じく明らかに盛れていることがわかる「プリクラ」の人気は健在です。

マイナビティーンズラボが2018年11月に発表した「2018年10代女子が選ぶ流行ったモノ」ランキングの7位、8位にプリクラ機の「PINKPINKMONSTER」、そして「これ以上可愛くなってもいいですか」がランクインしています。「プリはプリだから思いっきり盛れるほうが楽しい。全身も入るし」と、新しい学校の制服で集まり、撮影する女子高生たちもいました。

「足を長くする」加工も

最近のSNSは写真だけでなく、動画もシェアします。TikTokにもAIによるビューティ機能があり、顔には106個のポイント、体には17個のポイントを設定してリアルタイムでの加工を施しています。彼女たちが足を長くする加工をしているなんて、ご存じでしたか?

女子たちにとって写真を盛ることは当たり前で、ある種遊びのように「これは盛れたね」「これ○○ちゃんかわいい」と友達同士で言い合っています。とはいえ、あまりにもあからさまな加工をシェアするのは少し気恥ずかしいのでしょう。日常との差をあまり大きくしたくないという気持ちから、「現実カメラ(スマホのカメラ)」を愛用する女子高生もいました。

「さりげない盛り」の流行、プリクラで施される大げさな加工、そして現実を映すスマホのカメラ、この3つがどう共存していくのか、今後の自撮りカルチャーに注目です。