盗撮、つきまとい…悪質マナーで「混浴」が減る中、継続する温泉旅館の思いとは?
10連休が近づいていますが、休みを利用して温泉に出かける人もいるのではないでしょうか。国内の有名温泉地の中には、男女一緒に入浴可能な温泉もあり、カップルで楽しめます。ところが、近年は、一部の入浴客による盗撮やつきまとい行為などが問題となり、混浴を取りやめたり、温泉施設そのものを閉鎖したりする動きも出ているようです。そんな中、何度も悪質な客のマナーに苦しめられながらも、温泉の混浴を継続する旅館があります。
過去に、のぞきやつきまといなどのトラブル
群馬県みなかみ町の宝川温泉は、古代から「病(やまい)が治る温泉」と言い伝えられていました。温泉旅館「宝川温泉 汪泉閣(おうせんかく)」は1923年創業で、現在は3つの混浴露天風呂があります。今年4月から、混浴露天風呂の入浴時、旅館が用意する湯あみ着の着用を男女ともに義務付けました。
汪泉閣の副支配人、岡本浩さんに聞きました。
Q.どのような人が利用するのでしょうか。
岡本さん「宿泊の利用状況で見ると、男女比は半々程度ですが、若干男性の方が多いです。2018年の宿泊は3万1544人でしたが、そのうち43.6%の1万3740人が外国人観光客でした。一番多いのがタイからで、次にヨーロッパです。2019年1〜2月は、宿泊客の7割近くが外国人でした。外国人観光客は2012年以降、着実に増えています」
Q.なぜ、多くの外国人観光客が利用するのでしょうか。
岡本さん「『パートナーと一緒に温泉に入りたい』という要望をお持ちの人が多いほか、東京から比較的移動しやすい場所に旅館があるのが要因ではないかと考えています」
Q.4月から湯あみ着を義務付けた理由は。
岡本さん「混浴が初めての人にも、安心して入浴いただくためです」
Q.過去に混浴をめぐってのトラブルはありましたか。
岡本さん「一部の入浴客によるのぞきやつきまとい、盗撮などのトラブルがあり、その都度、警察と連携して対処しました。現在は、長時間入浴して女性を待ち伏せする行為を防ぐため、入浴時間に制限を設けるなどの対策をしています」
Q.マナー悪化により、他の地域では混浴温泉を閉鎖する動きもあります。混浴を継続する理由は。
岡本さん「お客さまから『古き良き伝統文化を残してほしい』という要望を頂いたほか、混浴可能な温泉を求めて多くの外国人観光客がいらっしゃるためです。もともと群馬県は観光立県で、県内各地で観光客の誘致に力を入れています。当館も、海外で営業活動を行い、混浴ができる宿泊施設であることをアピールし、お客さまの獲得につなげています。将来的に混浴をやめる可能性がないとは言い切れませんが、当面は継続していきたいと考えています」
Q.混浴について、どのような意見が寄せられていますか。
岡本さん「『今後も混浴を続けてほしい』『なぜ、湯あみ着を採用したのか』など、さまざまな意見を頂いています」
温泉などでの混浴について、厚生労働省生活衛生課に問い合わせると、「旅館業、公衆浴場に関する管理要領でそれぞれ、『男女別』『おおむね10歳以上の男女を混浴させない』などのルールは設けていますが、最終的には各自治体の条例で決まります」とのこと。
群馬県食品・生活衛生課は「現在の条例では男女別が原則ですが、風紀上支障がないと認められた場合は混浴が認められることもあります。例えば、入浴時に水着や湯あみ着を着用させるなどの場合です」としています。
汪泉閣は日帰り入浴もでき、入浴料は中学生以上2000円、小学生1500円、未就学児は無料です。