【まとめ】2018年の Amazon 広告事業で知っとくべきこと :「Google、Facebook、そして Amazon の時代がくる」
Amazonが広告事業で力を強めている。広告バイヤーや競合の小売企業、各プラットフォームも広告業界におけるAmazonの存在の大きさを認めざるを得ない段階にきている。
2018年10月に発表された第3四半期におけるAmazonの広告事業収益は、123%増の25億ドル(約2800億円)となっている。続伸する同社が、GoogleとFacebook2社のデュオポリーに割って入るのにさほど時間はかからないと見られている。eマーケター(eMarketer)は、広告主が2018年にAmazonへ投じた費用は46億ドル(約5150億円)に達するとしており、これは市場のシェアの7%を占める。これはGoogleの37%、Facebookの20%という数字にはおよばないものの、Amazonの成長速度はいずれのプラットフォームもはるかに上回っている。2018年第3四半期にブランド各社がAmazonに支払った広告支出は、2017年第3四半期とくらべて250%増加している。
業界アナリストもAmazonのポテンシャルを高く評価。シティリサーチ(Citi Research)は2018年1月に 、Amazonの広告事業は今後10年で500億ドル(約5.6兆円)に到達すると予測している。
「いまのAmazonは、継続的に金を払わなければ勝負できないプラットフォームになっている。広告がなくなることはない。Amazonの市場シェアは、今後も増加するだろう。そして、Google、Facebook、さらにAmazonが市場を独占する時代が来る。2018年のAmazonの成長は、その将来を感じさせるものであり、2019年には誰の目にも明らかになるだろう」と分析するのは、プラットフォーム管理システムを提供し、Amazonでサードパーティ販売も行っているスクバナ(Skubana)でCEOを務めるチャド・ルビン氏だ。同氏は「今後はさらにAmazon向けに予算が割かれるようになる」と予測している。
Amazonのこの勢いには、Googleですら危機感を覚えているようだ。Googleが間もなく立ち上げるショッピングアクション(Shopping Actions)は、Googleが潜在顧客をほかのeコマースウェブサイトに流出させずに、自らのプラットフォーム内で購入させるためのもので、Amazonと競合するサービスだ。
ルビン氏はGoogleのこの動きについて「Googleプラットフォーム内にAmazonが侵食しつつある現状に対抗しようとしている」と指摘する。Googleは、2019年上旬からフランスを皮切りにショッピングアクションを展開していく予定だ。
このように競争が激化しAmazonの広告事業が存在感を増しているいま、Amazonの広告事業関連で2018年に起こったことを、あらためてまとめてみよう。
8月にAmazonは無秩序に拡大を続けていた広告部門であるAMG(Amazon Media Group)、AMS(Amazon Marketing Services)、AAP(Amazon Advertising Platform)を単一のプラットフォームに統合した。米DIGIDAYのセブ・ジョセフ記者による記事の通り、以前Amazonの広告事業には異なるカスタマー体験とサービスを提供する組織が複数存在していた。この状況を対する不満を解消するために実施されたのがこの統合だ。たとえば、以前はサードパーティの販売業者とAmazonの卸売業者は、まったく異なるプロセスで広告を購入していた。
この統合以前に、あるメディア幹部は米DIGIDAYに対し、次のように語っていた。「プラットフォームの仕組みさえ分かっていれば、Amazonとの業務は管理可能だ。だが、いまではAmazonのなかでも異なる部門で取引を行うブランドが増えており、そうした場合は管理は難しくなる」。
次にAmazonは販売部門をひとつに統合するといわれている。販売が間近に迫っているワンベンダー(One Vendor)は、サードパーティの販売業者と卸売業者を同じバックエンドシステムで扱う商品となっている。
Amazonは第2本社をバージニア州とニューヨーク市ロングアイランドの2カ所に置くことを発表し、同社の広告事業に注目が集まった。米DIGIDAYのシャリーン・パサック記者がこの発表を受けて掲載した記事で述べている通り、Amazonのこの動きによって同社が事業の拡大に本気で取り組んでいることがあらためて浮き彫りになった。
「Amazonの商品がどのように進化しているのか、我々は直接目にしている。進化の原動力になっているのは予算の拡大であり、Amazonのなかでももっとも成長著しい分野だ」と述べているのが、Amazon認定のエージェンシーとなったアイプロスペクト(iProspect)の米国のプレジデント、ジェレミー・コーンフェルト氏だ。同氏は「この動きはある意味、Amazonが同社の方針について興味深い宣言しているともいえるだろう」と語っている。
これは広告エージェンシーにとっては問題になりうる展開だ。現時点ですでにAmazonは仲介役としてのエージェンシー抜きにブランド各社のマーケターと直接的な人脈を築いており、各社と直接取引を行っている。一方で広告バイヤーはAmazonに関する専門知識の獲得に苦労している。Amazonプラットフォーム独特の微妙な差異に精通した人材が不足しているためだ。
Amazon.comで「luggage(旅行かばん)」を検索すると、さまざまな宣伝商品が表示される。この記事の執筆時点ではスイスギア(Swissgear)の商品が検索結果ページ上部に「見出し」のように表示され、資金を投じているロックランド(Rockland)の4商品は検索結果のトップに表示される。このような広告商品は急速に増えつつある。電通イージス(Dentsu Aegis)傘下のマークル(Merkle)が発表した第3四半期のデジタルマーケティング報告書によると、スポンサーブランド(スイスギア製品が表示される箇所)になるためにブランドが投じた広告資金は前年度と比べて87%増加しており、スポンサープロダクト(ロックランド製品が表示される箇所)になるために使われた資金は前年度比で62%増加している。
かつてAmazonの検索結果は、レビューやコンバージョン率が高い製品などのオーガニックな指標を用いていたが、ルビン氏が指摘する通り、現在では、予算を投入したかどうかが重要となっている。広告費用を払ったブランドの製品が優先的に表示されるため、キーワード広告への投資はもはやAmazonへの参加費用のようなものになりつつある。マークルの報告書によると、第3四半期におけるスポンサーブランドの売上の62%、スポンサープロダクトの売上の42%がブランドのキーワード広告によるものとされている。
だが、どれほど広告予算を注ぎ込んだところで、Amazonの自社ブランドの優先表示をやめさせることはできない。ブラックフライデーやサイバーマンデーのような大きな集客が見込める時期だけでなく、Amazonが設定するプライムデーでもAmazonの自社ブランドは検索結果やおすすめ商品で目立つように表示される。Amazonの商品が優位になり、ほかのブランドは大きなハンデを背負っているのだ。さきほどの旅行カバンのように、通常の検索結果でもAmazonは自社ブランドに出資している。旅行カバンを検索したときに表示されるスポンサープロダクトは1行すべてがAmazonベーシックのカバンとなっており、いうなれば自作自演の状態だ。
Amazonの次の課題となっているのが、「検索し、商品をクリックして購入する」という実用上のカスタマー体験を阻害せずに広告事業を拡大させて行く方法を見つけることだ。Amazonの広告事業の動きは、売り手の利益をさらに奪う形になっている。Amazonの販売業者によると、サードパーティの売上の15%がAmazonの取り分となっているという。マケプレプライム(または、フルフィルメント by Amazon[Fulfilled by Amazon:FBA])のサービスを利用すると、さらに17%が取られ、広告サービスを利用するとさらに20%がAmazonの取り分となる。販売業者にとっては厳しい状態だ。
ルビン氏は2019年について、次のように予想している。「販売業者は、現状よりも賢く出資する必要がある。2019年には、Amazonでの販売を続けられなくなる企業が、たくさん出てくるだろう」。
Hilary Milnes(原文 / 訳:SI Japan)
2018年10月に発表された第3四半期におけるAmazonの広告事業収益は、123%増の25億ドル(約2800億円)となっている。続伸する同社が、GoogleとFacebook2社のデュオポリーに割って入るのにさほど時間はかからないと見られている。eマーケター(eMarketer)は、広告主が2018年にAmazonへ投じた費用は46億ドル(約5150億円)に達するとしており、これは市場のシェアの7%を占める。これはGoogleの37%、Facebookの20%という数字にはおよばないものの、Amazonの成長速度はいずれのプラットフォームもはるかに上回っている。2018年第3四半期にブランド各社がAmazonに支払った広告支出は、2017年第3四半期とくらべて250%増加している。
「いまのAmazonは、継続的に金を払わなければ勝負できないプラットフォームになっている。広告がなくなることはない。Amazonの市場シェアは、今後も増加するだろう。そして、Google、Facebook、さらにAmazonが市場を独占する時代が来る。2018年のAmazonの成長は、その将来を感じさせるものであり、2019年には誰の目にも明らかになるだろう」と分析するのは、プラットフォーム管理システムを提供し、Amazonでサードパーティ販売も行っているスクバナ(Skubana)でCEOを務めるチャド・ルビン氏だ。同氏は「今後はさらにAmazon向けに予算が割かれるようになる」と予測している。
Amazonのこの勢いには、Googleですら危機感を覚えているようだ。Googleが間もなく立ち上げるショッピングアクション(Shopping Actions)は、Googleが潜在顧客をほかのeコマースウェブサイトに流出させずに、自らのプラットフォーム内で購入させるためのもので、Amazonと競合するサービスだ。
ルビン氏はGoogleのこの動きについて「Googleプラットフォーム内にAmazonが侵食しつつある現状に対抗しようとしている」と指摘する。Googleは、2019年上旬からフランスを皮切りにショッピングアクションを展開していく予定だ。
このように競争が激化しAmazonの広告事業が存在感を増しているいま、Amazonの広告事業関連で2018年に起こったことを、あらためてまとめてみよう。
Amazonは自社の広告事業を単一のプラットフォームに統合
8月にAmazonは無秩序に拡大を続けていた広告部門であるAMG(Amazon Media Group)、AMS(Amazon Marketing Services)、AAP(Amazon Advertising Platform)を単一のプラットフォームに統合した。米DIGIDAYのセブ・ジョセフ記者による記事の通り、以前Amazonの広告事業には異なるカスタマー体験とサービスを提供する組織が複数存在していた。この状況を対する不満を解消するために実施されたのがこの統合だ。たとえば、以前はサードパーティの販売業者とAmazonの卸売業者は、まったく異なるプロセスで広告を購入していた。
この統合以前に、あるメディア幹部は米DIGIDAYに対し、次のように語っていた。「プラットフォームの仕組みさえ分かっていれば、Amazonとの業務は管理可能だ。だが、いまではAmazonのなかでも異なる部門で取引を行うブランドが増えており、そうした場合は管理は難しくなる」。
次にAmazonは販売部門をひとつに統合するといわれている。販売が間近に迫っているワンベンダー(One Vendor)は、サードパーティの販売業者と卸売業者を同じバックエンドシステムで扱う商品となっている。
Amazon第2本社の場所の1カ所をニューヨーク市に決定したと発表
Amazonは第2本社をバージニア州とニューヨーク市ロングアイランドの2カ所に置くことを発表し、同社の広告事業に注目が集まった。米DIGIDAYのシャリーン・パサック記者がこの発表を受けて掲載した記事で述べている通り、Amazonのこの動きによって同社が事業の拡大に本気で取り組んでいることがあらためて浮き彫りになった。
「Amazonの商品がどのように進化しているのか、我々は直接目にしている。進化の原動力になっているのは予算の拡大であり、Amazonのなかでももっとも成長著しい分野だ」と述べているのが、Amazon認定のエージェンシーとなったアイプロスペクト(iProspect)の米国のプレジデント、ジェレミー・コーンフェルト氏だ。同氏は「この動きはある意味、Amazonが同社の方針について興味深い宣言しているともいえるだろう」と語っている。
これは広告エージェンシーにとっては問題になりうる展開だ。現時点ですでにAmazonは仲介役としてのエージェンシー抜きにブランド各社のマーケターと直接的な人脈を築いており、各社と直接取引を行っている。一方で広告バイヤーはAmazonに関する専門知識の獲得に苦労している。Amazonプラットフォーム独特の微妙な差異に精通した人材が不足しているためだ。
Amazonの自社ブランドが優遇されるなかでも、ブランドは引き続きAmazonに資金を投じている
Amazon.comで「luggage(旅行かばん)」を検索すると、さまざまな宣伝商品が表示される。この記事の執筆時点ではスイスギア(Swissgear)の商品が検索結果ページ上部に「見出し」のように表示され、資金を投じているロックランド(Rockland)の4商品は検索結果のトップに表示される。このような広告商品は急速に増えつつある。電通イージス(Dentsu Aegis)傘下のマークル(Merkle)が発表した第3四半期のデジタルマーケティング報告書によると、スポンサーブランド(スイスギア製品が表示される箇所)になるためにブランドが投じた広告資金は前年度と比べて87%増加しており、スポンサープロダクト(ロックランド製品が表示される箇所)になるために使われた資金は前年度比で62%増加している。
「旅行カバン」の検索結果には、キーワード広告のブランド製品が、スポンサーブランド(スイスギア)とスポンサープロダクト(ロックランド)として表示される
かつてAmazonの検索結果は、レビューやコンバージョン率が高い製品などのオーガニックな指標を用いていたが、ルビン氏が指摘する通り、現在では、予算を投入したかどうかが重要となっている。広告費用を払ったブランドの製品が優先的に表示されるため、キーワード広告への投資はもはやAmazonへの参加費用のようなものになりつつある。マークルの報告書によると、第3四半期におけるスポンサーブランドの売上の62%、スポンサープロダクトの売上の42%がブランドのキーワード広告によるものとされている。
だが、どれほど広告予算を注ぎ込んだところで、Amazonの自社ブランドの優先表示をやめさせることはできない。ブラックフライデーやサイバーマンデーのような大きな集客が見込める時期だけでなく、Amazonが設定するプライムデーでもAmazonの自社ブランドは検索結果やおすすめ商品で目立つように表示される。Amazonの商品が優位になり、ほかのブランドは大きなハンデを背負っているのだ。さきほどの旅行カバンのように、通常の検索結果でもAmazonは自社ブランドに出資している。旅行カバンを検索したときに表示されるスポンサープロダクトは1行すべてがAmazonベーシックのカバンとなっており、いうなれば自作自演の状態だ。
Amazonの次の課題となっているのが、「検索し、商品をクリックして購入する」という実用上のカスタマー体験を阻害せずに広告事業を拡大させて行く方法を見つけることだ。Amazonの広告事業の動きは、売り手の利益をさらに奪う形になっている。Amazonの販売業者によると、サードパーティの売上の15%がAmazonの取り分となっているという。マケプレプライム(または、フルフィルメント by Amazon[Fulfilled by Amazon:FBA])のサービスを利用すると、さらに17%が取られ、広告サービスを利用するとさらに20%がAmazonの取り分となる。販売業者にとっては厳しい状態だ。
ルビン氏は2019年について、次のように予想している。「販売業者は、現状よりも賢く出資する必要がある。2019年には、Amazonでの販売を続けられなくなる企業が、たくさん出てくるだろう」。
Hilary Milnes(原文 / 訳:SI Japan)