VRモードがスゴすぎる『エースコンバット7』 開発者が語る戦闘機の「体験」とは?
戦闘機フライトシューティングシリーズ最新作『エースコンバット7』では、ついにVRでドッグファイトが楽しめます。『東京ゲームショウ2018』の一般公開に先立ちメディア向け体験会が開かれ、開発スタッフが取材に応じました。
仮想現実に広がるコックピットからの光景
「東京ゲームショウ2018」においてバンダイナムコエンターテインメントは、PlayStation4/Xbox Oneで2019年1月17日発売予定(STEAM版は2月1日)の戦闘機フライトシューティング『エースコンバット』シリーズ最新作『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』に収録される「VRモード」をソニー・インタラクティブエンタテインメントブースにてプレイアブル出展、これに先立ち、メディア向け体験会が行われました。
操作方法など従来のシリーズを継承しつつ、「VRモード」ではさらなる体験の深化を実現した『エースコンバット7』(画像:バンダイナムコエンターテインメント)。
「VRモード」は「本物のパイロット体験」をコンセプトとしており、従来の戦闘機ゲームとは全く異なる新しい体験であると言えます。頭部に装着するPlayStation VRの両眼にはそれぞれ独立したグラフィックスが描画され立体視になっており、プレイヤーは、遮るものない透明なキャノピーで覆われたコックピットに座っているという感覚を得ることができます。
空母からの発艦シークエンスも実際に操作する(画像:バンダイナムコエンターテインメント)。
今回は雲が立体オブジェクト化、突っ込むと視界は真っ白に。障害にも盾にもなる(画像:バンダイナムコエンターテインメント)。
激しい攻撃にさらされるなか離陸、臨場感あふれる描写(画像:バンダイナムコエンターテインメント)。
現実の戦闘機同士のドッグファイトは敵味方の位置を正確に把握する「状況認識」が最も重要とされます。そのためパイロットは最大9Gの負荷が掛かる急旋回の最中においても、つねに首や上半身をひねり、全周囲を目視で警戒しています。「チェックシックス(6時方向確認)」などとも言われますが、筆者(関 賢太郎:航空軍事評論家)はVRモードにおけるチェックシックスの面白さに大変驚きました。背後を取り合うためお互いに切り返しを何度も繰り返すシザーズ機動では首を右に左に上に自由に動かすことで常に敵機を視界内に補足しつづけたり、ミサイル警報が鳴った場合は必死に背後を確認して防御機動を実施したり、側面の敵機さえ照準可能な近年のオフボアサイト空対空ミサイルも「ヘルメット照準」がしっかり再現され、ミサイル発射後も妨害のために大量のフレアを連続投下する敵機を見続けるなど、まさに実際のパイロットそのものように振る舞うことができたためです。
またコックピット内部のヘッドアップディスプレイや多機能液晶ディスプレイは飾りではなく、ゲームとして必要な戦術情報や飛行情報はすべてこれらの機器にきちんと表示されていることも、これまでとの大きな違いであると言えるでしょう。
写真や動画では伝わらないそこにあるという「体験」
VRモードで使用可能な機種は4機種。そのうち3つはF/A-18F「スーパーホーネット」、F-22A「ラプター」、Su-30M2を選択可能であることが明らかになっています。機種選択を行う格納庫は『エースコンバット04』のそれを再現しており、やはりVRに対応しているため機体のディティールを存分に眺めることができます。筆者はかつてSu-30の実機を前にし、余りの大きさから圧倒されたことがあります。写真や動画だとこの感覚は全くわかりませんが、VRでは同じように現代戦闘機が家ひとつほどの大きさがある金属の塊であることを実感できました。
格納庫のF/A-18F「スーパーホーネット」。写真では伝わらない、「そこにある」という感覚を体験できる(画像:バンダイナムコエンターテインメント)。
そしてひとりの戦闘機好きとしてとても興味深いと思ったもうひとつの遊びが、「VRエアショー」です。これは空母艦上を会場とした戦闘機のアクロバット飛行を眺めるモードであり、航空自衛隊のブルーインパルスにおいても実施されている「バーティカルキューピッド」「バレルロール(コークスクリュー)」といったアクロのほか、「スプリットS」「ハイヨーヨー」といった空中戦闘機動を眺め楽しむことができます。音声による解説も行われるため、空中戦について詳しく知りたいならばVRエアショーで空中戦闘機動を学び、ゲームで試してみるのも面白いかもしれません。
「VRエアショー」より。スモークを途中で途切れさせるのは専用の処理が必要で、プログラマーに嘆かれたという(画像:バンダイナムコエンターテインメント)。
『エースコンバット7』開発の総指揮を執ったバンダイナムコエンターテインメント エースコンバット・ブランドディレクター 河野一聡(こうのかずとき)さんは「格納庫で見ているだけで楽しい、発艦するだけで楽しい、着陸するだけで楽しい、『エースコンバット』の楽しさを凝縮しており、本物のパイロット体験をして欲しい」といいます。
「戦闘機体験」の大きなブレイクスルー
河野さんはまた、将来のエースコンバットとVRについて次のように語りました。
『エースコンバット7』ブランドディレクターの河野さん(写真中)とVRプロデューサーの玉置さん(同左)、プロデューサーの下元さん(同右)(関 賢太郎撮影)。
「『エースコンバット』において、『04』以降、ゲームの中心となるキャンペーン(ストーリーモード)は、ライバルの登場や演出やカットシーンなど、プレイヤー自身がエースパイロットとしてだんだん成長していくドラマを追体験する方向に進化して行きました。一方で(今回の)VRモードは、もっと原始的な『戦闘機を操ることが楽しい』『あなたはパイロットです』という『戦闘機体験』を提供します。根っこは同じですが伸びる方向が違うのです。VRモードで突然、第三者視点でのライバルとの会話を見させられると興ざめでしょう。では『エースコンバット』の未来はどこにあるのかと言われると、方向性は(いまお話した)ふたつともあります。どっちをつくるかは時代やお客さんの要望次第ですが、VRを期待しているお客様に『エースコンバット』をつくるならば、(ドラマ重視の)ナンバリングタイトルとは違った別の『エースコンバット』かなと思います」
1995(平成7)年にプレイステーション用ソフトとして発売された初代『エースコンバット』は、それまで家庭用ゲーム機ではできなかった3次元空間を自由に飛び回るドッグファイトを実現し戦闘機体験ゲームの新しい時代を開きました。二十余年の歳月を経た現在、VRによって「戦闘機体験」はひとつの大きなブレイクスルーを迎えたと言えるかもしれません。
『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』はPlayStation4/Xbox Oneにて2019年1月17日、PC(STEAM)にて同2月1日発売予定です。なお、上述の「VRモード」はPlayStation4の周辺機器PlayStationVR(別売)専用で、そのほかのVR機器には対応していません。