オリンピック開催時期に就活する「2021年卒」の学生たちはどうなるのだろうか?(写真:Fast&Slow / PIXTA)

東京で開催される夏のオリンピック開催まであと2年を切りました。再来年の今頃は世界中から人が集まる祭典が終了した時期。まさに「祭りの後」で、オリンピックロスが起きているかもしれません。

オリンピック開催時期はビジネス活動に支障の懸念

そんな、迫りつつあるビッグイベント開催期間の“特別対応”がビジネスパーソンにどのような影響をもたらすのか? そろそろ話題にのぼるようになってきました。


この連載の一覧はこちら

たとえば、都心部にオフィスのある勤務者はテレワークにすべきではないか? あるいは、配送関連の会社は交通渋滞を鑑みて、どのようなルートを使うべきか? オリンピック開催はビジネス活動にさまざまな支障を引き起こすことが予想されます。

当然ながら仕事を停止することはできないので、迂回策の検討が進んでいます。ちなみにリオオリンピック・パラリンピック期間中、学校は休みで、役所や会社も開店休業の休日状態にしてしまったようです。

東京も開催期間(7月下旬から9月上旬)はすべてお休み……としたいところですが、そこまで大胆にはできないでしょう。ただ、休日はかなりの特別対応が行われます。政府により改正五輪特別措置法が可決。祝日を移動して休日扱いの日が大幅に増える予定です。つまりオリンピックのために全国各地もお盆休みが前倒しになるのです。

さらに、例年なら海や山でさまざまなイベントが行われる時期ですが、開催期間の実施を避けるため、中止ないしは大幅に日程変更を強いられることになる見込み。ビジネス機会の減少を嘆く声も聞こえてきます。

特別対応への不満の声はビジネス周りに限りません。たとえば、お盆休みは実家に帰り、親戚と集まることを楽しみにしているある友人は「お盆をないがしろにするのか」「東京オリンピックに日本中を巻き込まないでほしい」と文句をぶつけてきます。いずれにしても、オリンピック開催で仕事や日常生活に支障が出ることは認識しておくべきでしょう。

開催期間の休日化が人生の大きな岐路になり、対策に苦慮しそうで気になる人たちがいます。それは「2021年卒」の学生たち。現在は大学2年生で再来年に就職活動をすることになります。そう、まさにオリンピック開催時期に就職活動をすることになります。

現在は1年先輩である「2020年卒」の学生に対する選考の指針が経団連から出たところです。2020年卒の学生に対する選考時期は2019年の春から秋が中心になります。経団連が出した指針によると、学生が本分である学業に専念する十分な時間を確保するため早期に行うことは厳に慎むべきとされており、会社説明会のスタートは2019年春から。選考活動は6月1日以降。正式な内定日は、卒業・修了年度の10月1日以降としています。

この指針に対し、経団連に加入している企業は表面的には遵守。選考活動は真夏に佳境を迎える前提になっています。

ただ、優秀な学生を確保したい企業側の思惑もあり、真夏を迎える前に内々定を出して学生を確保する企業が大半。指針が形骸化しつつあるのが実情です。こうした背景もあり2021年卒からは選考期間の指針を示さない方針が、経団連の中西宏明会長から表明されました。タイミング的にオリンピックの開催年と重なっています。企業の選考期間は自由……ですが、真夏の約1カ月半は選考が困難。いったいどうなるのでしょうか?

ガイドラインが廃止に?

景気がよくなると企業は人材を確保するため「青田買い」と呼ばれる、早期からの選考活動に入りたがる傾向があります。ただ、それが過剰に行われると学生の本分である学業に支障をきたすとの観点から、選考時期にガイドラインを示す就職協定が1952年に定められました。

ただ、1996年に廃止になったので、経団連の指針がそれに代わるガイドラインとして機能していたのは事実です。形骸化していたとの意見もありますが、大企業の大半は表面的には遵守していたので青田買いの加速を抑制する機能は果たしていたと認識しています。

ところが、こうしたガイドラインが全廃されそうなのです。これは、企業にとっても、学生にとっても大きな転換期となるのは間違いありません。

たとえば、就職サイトの運用も大きく変わることでしょう。解禁日とされる日に「●●ナビがオープン」と求人情報が一斉に開示されなくなるかもしれません。また、各社の求人もまちまちにアップされるようになるでしょう。

学生は選考がいつ行われるのか? 先輩たちの就活が参考にならない、悩ましい状態になるのではないでしょうか。

さらにオリンピックが近づけば企業活動にも制限がかかるので、夏前に採用活動を終了させるべく、選考期間を大幅に短縮することになるのではないでしょうか。さらにいえば、大学3年生以下で行われているインターンが実質的な選考目的となり、2022年卒の就職活動が早々にスタートする可能性もあります。

企業は慎重な判断と取り組みが求められる

このようにオリンピック開催の影響は大きなものになります。求人倍率が比較的上昇トレンドにあるので、楽観的に考えてしまう学生もいるかもしれませんが、乗り遅れてしまって、希望する会社のエントリーを逃してしまうといった機会損失が増える気がしてなりません。そのような学生が出ないようにするためにはどうしたらいいのでしょうか?

そもそも、本当にガイドラインを廃止してしまうのか? それを改めて検討いただきたいと筆者は思います。

廃止するのであれば、学生たちは3年生のうちから会社研究を進めて、エントリーしたい会社を選んでおく必要があると思います。そうして会社ごとの選考スケジュールを確実に押さえて、就活を行うのが安心でしょう。

当然ながら大学の就職課が学生へのサポートを手厚くすることは大前提として必要です。選考の早期化、短期決戦化などで“就職難民”となる学生が出ないよう、秋採用の推進も必要でしょう。

今どきの就職活動に対する意気込みは、筆者の時代とは大きく違うと感じます。どの会社に入社しても安泰とは限らないから、会社選びは慎重。売り手市場とは言われていますが、就職活動のために1、2年生で単位取得に励んできた……という声をよく聞くなど、将来に向けての大事なイベントと大半の学生が認識しています。オリンピックイヤーの就職活動が思い出したくないものにならないように、企業も慎重な判断と取り組みを行っていただきたいと切に願います。