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●実売6万円台の一眼カメラ用スタビライザーが登場

ミラーレスや一眼レフでなめらかな動画を撮影するための「カメラスタビライザー」、これまでは大きくて扱いづらく、しかも高価な製品しか存在しませんでした。そのような状況のなか、意欲的な価格とサイズのカメラスタビライザー「MOZA AirCross」が登場。どれほどの実力を持っているのか、さっそく実機でチェックしてみました。

○片手でも扱え、価格が安いのが画期的

昨今、4K画質の動画撮影に対応するミラーレスやデジタル一眼レフが増えてきました。プロ用のムービーカムと同等か、それ迫るクオリティの精細な動画撮影が楽しめるようになっています。

ただし、4K画質の動画が撮影できるといっても、満足するクオリティの動画が容易に撮れるとは限りません。カメラを手持ちして4K動画を撮影すると、高精細だけにブレや揺れがより気になってしまうからです。ボディやレンズに手ぶれ補正機構を搭載していても、歩きながらの撮影で見られる大きな揺れまでは補正できないのです。ブレや揺れを抑えるには、カメラをしっかりとした三脚に固定するのが一番。しかし、撮影の自由度が極端に低下してしまうので、動き回る被写体を撮影するのはほぼ不可能になってしまいます。

手持ちでもブレや揺れの少ない動画を撮影するための味方となるのが、カメラ用の「スタビライザー」です。歩きながらの撮影でブレや揺れ、傾きが発生しても、それを打ち消すようにカメラを固定する部分が電動で細かく動くことで、安定感のある動画に仕上がる仕組みになっています。

この手のスタビライザーは、ドローンメーカーとして有名な中国DJIの「Osmo Mobile 2」など、スマートフォン用の製品が普及しています。ただ、重量のあるミラーレスや一眼レフに対応したカメラスタビライザーは安いものでも十数万円と高価なうえ、両手でしっかり保持する必要がある製品がほとんどで、普通の人が手軽に扱えるとはいえませんでした。

ところが、リンクスインターナショナルが5月末に発売した中国Gudsen Technologyの「MOZA AirCross」は、大口径レンズを搭載したフルサイズミラーレスが装着できる性能を持ちながら片手でも扱え、しかも実売価格は税込65,000円前後とお手ごろ。これまでのプロ向けカメラスタビライザーとは一線を画す価格とサイズ、使いやすさに仕上げたことで注目されています。

○使用前にバランスを取るのがやや面倒

MOZA AirCrossは、ミラーレスなどのデジタル一眼に対応する3軸ジンバルを採用した、片手持ちが可能なカメラスタビライザーです。本体の主要部分はアルミニウム合金が用いられており、重量は896gに抑えられています。ペイロード(耐荷重)は1.8kgで、ボディとレンズを合わせて1.8kgまでのカメラが装着できます。

MOZA AirCrossを使用するにあたって、まずカメラを実際に乗せてバランスを取る必要があります。手順としては、最初にカメラの前後のバランスを調整し、その後チルト軸、ロール軸、ヨー軸とバランスを取っていきます。慣れないと手間と時間がかかり、面倒に感じるかもしれません。しかし、この調整ができていないと本来の補正効果が出ませんので、あきらめずに落ち着いて調整してください。慣れてくれば、調整は3分もかからずできるかと思います。

なお、レンズを交換したり、光学フィルターやレンズフードを着脱した場合はバランスが変わってくるので、その都度調整を実施する必要があります。デジタル一眼に対応したカメラスタビライザーは、そのような繊細さがあることは覚えておきましょう。

●補正効果には満足、片手持ちでの撮影はやや厳しい

今回は、富士フイルムの最新ミラーレス「FUJIFILM X-H1」をMOZA AirCrossに装着し、動画を撮影してみました。

使用した印象としては、肝心のブレの補正精度はなかなかのものだと感じました。歩きながら撮影したところ、ゆっくり歩く分にはこの手のジンバルが苦手とする縦方向のブレもよく抑えてられおり、安定した映像になりました。カメラスタビライザー特有の浮遊感もバッチリ演出できたと思います。

ジョイスティックによるジンバルの動きもスムーズで、不自然な挙動はまったくありませんでした。一応、片手で持てるように設計されていますが、腕の疲労やカメラの安定性を考えると、通常は両手で持ったほうがよいと感じました。

前述の通り、MOZA AirCrossに搭載できるカメラの最大重量は1.8kgまでとなります。デジタル一眼レフの場合、ミドルレンジクラスのフルサイズ機と標準ズームレンズの組み合わせならば問題なく使えます。一例を挙げると、キヤノンの「EOS 6D Mark II」(約765g)と標準ズームレンズ「EF24-105mm F4L IS II USM」(約795g)ならば許容範囲内に収まります。

ボディとレンズが一眼レフよりも軽いミラーレスなら、メーカーを問わずF2.8クラスの大口径標準ズームレンズを組み合わせてもまったく問題ないでしょう。

○一眼で動画撮影を重視する人は注目すべき

本機のライバルは、DJIが7月に販売を開始したカメラスタビライザー「RONIN-S」(実売価格は税込92,800円)といえます。RONIN-Sは、機能が豊富なうえに頑丈感のある作りが目を引くなど、MOZA AirCrossよりも完成度が高くハイエンド志向のカメラスタビライザーだと感じます。ですが、RONIN-Sは重さが約1,850gもあるなど、ボディもまさにハイエンドな作り。価格も、RONIN-SはMOZA AirCrossより2万数千円高く、コストパフォーマンスはMOZA AirCrossのほうが優れています。

動画撮影を満喫したいと考える写真愛好家にとって、カメラスタビライザーは三脚のような「持っていて当たり前」のカメラアクセサリーになりつつあるといえます。MOZA AirCrossやRONIN-Sなど、さまざまな製品を店頭で試すなどして、ぜひその効果を体感してみてください。

(動画のモデル出演:テレジア)