クルピ解任の背景にあった悩み、嘆き、不安… 迷走ガンバに何が起きていたのか?
ガンバ大阪は7月23日、レヴィー・クルピ監督の解任と宮本恒靖新監督就任を発表した。ライバルのセレッソ大阪で辣腕を振るったクルピ監督は今季就任したばかりだが、わずか7か月の短命政権に終わった。夏の補強は一切なく、放出ばかりだった支援体制の乏しさに同情の余地はあるものの、その決断は致し方ないところだ。
17試合を終えて4勝3分け10敗。攻撃的スタイルを掲げながら15得点はリーグワーストタイ。J2降格圏の16位と低迷しており、12年以来の悪夢だけは避けなければならなかった。
解任への決め手となったのは、広島戦(18日)と清水戦(22日)の2試合だった。ワールドカップで中断した2か月。クラブは立て直しに期待を寄せていた。だが広島には0-4、清水にはホームで1-2と競り負けた。一向に攻守に形が見えない惨状。梶居勝志強化部長は「課題をどう修正できているのか評価しないといけない」と清水戦後に話したが、選手個々のアイデアに頼るクルピ体制はもはや限界を露呈していた。
求心力の低下も甚だしかった。開幕直後は「バランスが悪い」「今は見極めている段階」と指揮官は強がっていたが、開幕から10試合以上を経てもなお同じフレーズを繰り返した。負ければシステムや選手の組み合わせを入れ替えるだけ。その理由を選手に説明することもなかった。ベンチ外が続き、夏に移籍した選手は「監督から何かを言われることはない。自分が求められているモノが分からない」と悩んだ。また主力選手の1人は「もっとチームとしての形、決まりごとが欲しい」と嘆いた。
極めつけは中断期間中のトレーニングメニュー。9日間のオフを経て6月19日から全体練習を再開したが、雨が降ったら練習時間が短縮される事態が続いた。強度の強い練習はなく、相変わらず紅白戦ばかりに明け暮れた。当然、夏場で走り切る体力は蓄えられるわけがない。選手間では「こんなんで大丈夫ですかね?」と不安がる声ばかりが漏れていた。
この事態はフロントの見通しの甘さだろう。ブラジル代表監督の噂も出たことがある名伯楽は決して戦術家でもなければ、攻撃的サッカーを重視するわけでもない。そして若手を登用することはあっても、決して育成に秀でているというわけでもなかった。あくまで強いチームを率いるモチベーター型指揮官であり、リアリストである。
確かに香川真司や乾貴士らを擁してC大阪を率いていた時代は、才能豊かな選手たちを気持ち良くプレーさせる術には長けていた。そしてC大阪で展開されたのは、ボールを握るサッカーではなく、マルチネスという稀代のパサーを中心としたカウンタースタイルだった。G大阪がクルピに求めた「攻撃サッカー」「若手育成」などの方向性は持っていなかった。
宮本新監督にまず求められるのは、これまで指揮していたU-23チームで見せていたような明確な規律と方針である。現実的にはJ1残留。そこを打ち出した上で、何をしなければいけないかをハッキリさせられるか。残り17試合。時間は少ないが、理論派指揮官として名高い宮本新監督の手腕には大きな期待をしたい。
取材・文●飯間 健
17試合を終えて4勝3分け10敗。攻撃的スタイルを掲げながら15得点はリーグワーストタイ。J2降格圏の16位と低迷しており、12年以来の悪夢だけは避けなければならなかった。
解任への決め手となったのは、広島戦(18日)と清水戦(22日)の2試合だった。ワールドカップで中断した2か月。クラブは立て直しに期待を寄せていた。だが広島には0-4、清水にはホームで1-2と競り負けた。一向に攻守に形が見えない惨状。梶居勝志強化部長は「課題をどう修正できているのか評価しないといけない」と清水戦後に話したが、選手個々のアイデアに頼るクルピ体制はもはや限界を露呈していた。
求心力の低下も甚だしかった。開幕直後は「バランスが悪い」「今は見極めている段階」と指揮官は強がっていたが、開幕から10試合以上を経てもなお同じフレーズを繰り返した。負ければシステムや選手の組み合わせを入れ替えるだけ。その理由を選手に説明することもなかった。ベンチ外が続き、夏に移籍した選手は「監督から何かを言われることはない。自分が求められているモノが分からない」と悩んだ。また主力選手の1人は「もっとチームとしての形、決まりごとが欲しい」と嘆いた。
極めつけは中断期間中のトレーニングメニュー。9日間のオフを経て6月19日から全体練習を再開したが、雨が降ったら練習時間が短縮される事態が続いた。強度の強い練習はなく、相変わらず紅白戦ばかりに明け暮れた。当然、夏場で走り切る体力は蓄えられるわけがない。選手間では「こんなんで大丈夫ですかね?」と不安がる声ばかりが漏れていた。
この事態はフロントの見通しの甘さだろう。ブラジル代表監督の噂も出たことがある名伯楽は決して戦術家でもなければ、攻撃的サッカーを重視するわけでもない。そして若手を登用することはあっても、決して育成に秀でているというわけでもなかった。あくまで強いチームを率いるモチベーター型指揮官であり、リアリストである。
宮本新監督にまず求められるのは、これまで指揮していたU-23チームで見せていたような明確な規律と方針である。現実的にはJ1残留。そこを打ち出した上で、何をしなければいけないかをハッキリさせられるか。残り17試合。時間は少ないが、理論派指揮官として名高い宮本新監督の手腕には大きな期待をしたい。
取材・文●飯間 健