フィンランドのサウナ文化 前編
こんにちは、サウナイキタイ開発チームの@yukari37zです。サウナイキタイマガジンを読んでいただき、ありがとうございます。
今回の記事は、フィンランドのサウナ文化についてです。サウナ好きの方の中には、フィンランドサウナに興味を持たれている方も多いのではないでしょうか。フィンランドのサウナに関する記事を掲載しているウェブサイトの一つに、Saunologia.fiがあります。フィンランドでサウナを研究している方が運営しているウェブサイトで、サウナに関するすごくニッチなトピックから、ビギナー向けの記事まで面白いコンテンツがたくさんあるサイトです。
記事の多くはフィンランド語で書かれているのですが、つい最近、フィンランドのサウナ文化に関する英語の記事が掲載されました。その記事がとても面白かったので、運営者の方に記事を日本語に翻訳してサウナイキタイマガジンで掲載していいか伺ったところ、快く承諾してくださいました。こんなに面白い記事を自分で翻訳するというプレッシャーもありましたが、なるべく伝わりやすくなるよう翻訳しました。ぜひ読んでみてください。
この記事は、フィンランド人にとってサウナとは何なのか、どうやってサウナを楽しんでいるのか、サウナ室には何があるのかを紹介します。サウナの体験、サウナの文化、サウナが神聖な場所といわれる理由、そしてフィンランド人の生活におけるサウナの役割についての話です。
この”Finnish Sauna Essentials”のデジタル版記事は、フィンランドサウナのエッセンスについて紹介する記事シリーズの中の一つで、フィンランドサウナの特長に焦点を当てています。フィンランド人が何世紀にもわたり享受してきた健康と幸せの秘密を再現してみましょう。また、現代のフィンランドサウナの知恵を得ることで、その原則に沿いながら、自分に合ったサウナをデザインすることもできるでしょう。
この記事は、フィンランドサウナ研究の第一人者であり、フィンランドサウナについて数年間活発に研究活動を行い、幼年期からサウナ浴に親しんでいるLassi A Liikkanen博士により執筆されました。Lassi博士は、デジタルサービスデザインの仕事に従事しており、フィンランドのアールト大学で人間中心プロダクトデザインの助教授として教鞭をとっています。
フィンランドサウナの特長と原則
フィンランドサウナにはどんな特長があるのでしょう。フィンランドのサウナ推進組織は、サウナが提供する5つの特長を定義しています。その特長とは、五感で感じること、自分自身に意識を向けること、リラックスすること、身体を清潔にすること、心身を健康にすることです。実際には6つ目の特長もあるとされており、それは伝統に則った本物のフィンランドサウナであることです。しかし私は、フィンランドサウナを体験すれば本物の体験が得られると思うので、些細な伝統主義による特長は議論の対象外とします。
フィンランド人は、生きがいを感じるためにサウナを建て、楽しんでいます。サウナの本質的要素はサウナ室にあり、基本的な構成はとてもシンプルです。それは、サウナストーンとストーブで暖められた空間です。サウナに入る人が、天井近くの温度の高い位置に座れるようにするために、サウナベンチがあります。また、自然が好きなフィンランド人のために、室内に光を取り入れる窓があります。
フィンランドサウナの基本構成要素: サウナストーンのあるストーブ、ロウリュ、高い位置に座るためのベンチ
サウナが神聖な場所といわれる理由
フィンランドサウナに関する肯定的な文章の多くは、サウナを神聖な場所として説明しています。この考え方は、現代のサウナでも見られるのでしょうか。フィンランド人はサウナに入る時に、どのように入るかをおおよそ決めています。しかし、これは宗教的なものにより決まるのではなく、自分の好みや、周りのコミュニティでどんな風にサウナに入るかにより決まります。入り方に厳格なルールや儀式のようなものがあるのは、とてもまれです。
歴史を振り返ってサウナの役割を見てみると、最近のサウナ文化は、宗教的な意味というよりも実用的な意味があります。従来より、サウナにはただ清潔を心がけるためだけではなく、治療、食べ物や飲み物の用意といったような役割がありました。その一方で、19世紀後半から20世紀初頭にかけての伝承には、サウナでのふるまいについて書かれた物語があります。今日、その宗教的な機能としてのサウナは、他の宗教にとって代わられました。しかしそのなごりは、今でもフィンランド人の中に残っています。
例えば、2016年にサウナをよく使う人、400人に対してわたしが行った調査では、多くの人がサウナでスマートフォンやタブレットを使わないようにしていました。サウナにおける裸での偶然の出会いは、コミュニケーションを打ち解けたものにすると思います。サウナでなければ話せないようなことさえ、あるかもしれません。このことが、21世紀において、フィンランドサウナが神聖な場所であるといわれる理由だと思います。
明るいインテリアのサウナ
フィンランド人のサウナの使い方
世界には、様々な熱気浴の文化があります。熱気浴では、高温により発汗作用を促進します。蒸風呂や熱気浴は、北ヨーロッパの国々の歴史を超えた数千年の歴史があります。その中でも、サウナという言葉はフィンランド語からきています。サウナには動詞と名詞の両方の意味があり、サウナ室だけではなく、(サウナとしての)機能といった意味もあります。
フィンランドのサウナの慣習は、いろいろなサウナがあるのと同じように様々です。サウナに入るのは週に1、2回というフィンランド人がほとんどです。これはつまり、サウナに入る日を選んでいるということです。また、土曜日は1週間のうちで伝統的なサウナの日とされています。
サウナの入り方は、だいたいはよく似ていますが、同時に一言では言い表すことのできないものでもあります。細かいところは、サウナ施設によっても異なります。
フィンランドには200万個以上のプライベートサウナがあるので、自分でプライベートサウナを持ったり、集合住宅に併設されている共用のサウナ施設を予約して使うことは、確実に今日のサウナを確保するのに便利です。もしプライベートサウナに行くのであれば、タオルと飲み物さえ持っていけばなんとかなるでしょう。
クーシヤルヴィのスモークサウナ
公共サウナに行くのであれば、前もって少し準備が必要かもしれません。サウナ施設への入場券をオンラインで販売しているところもありますが、たいていは営業時間中に立ち寄るだけで十分です。大きなタオル、バスローブ、個人用のサウナシート、スリッパ、飲み物、シャンプー、コンディショナー、着替え、髪ブラシ、化粧品、サウナトリートメント、ヴィヒタを備え付けの施設もあります。サウナに入るには十分な設備がととのっているといえるでしょう。
公共サウナや海外のサウナに行くと、フィンランド人でも戸惑うことがあります。なぜなら、フィンランド人はプライベートサウナを使うのに慣れていて、そこでは自分の好きなようにサウナに入るからです。プライベートサウナでは自由にふるまうことができます。友達や親戚をプライベートサウナに招いたり、友達と公共サウナに行く時は、だいたい1、2時間くらいサウナで過ごします。しかし、時間に余裕を持ってサウナを予約しておくことが大切です。リラックスしてサウナを楽しむために、時間を気にしなくてよいのは重要です。
最近のフィンランドサウナ浴の研究によると、サウナに30分入ると長期的な健康上のメリットが見込まれるそうです。少なくとも自分の限界を知るまでは、一度に30分入るのではなく、10分のセットを3回にするほうがいいでしょう。
原文記事:https://saunologia.fi/in-english/finnish-sauna-essentials-part-1/
フィンランドのサウナ文化 前編はここまでです。
後編ではサウナの文化や、サウナの楽しみ方を解説します。
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