《静岡看護師遺棄事件》拉致実行犯の転落人生と『闇サイト』に食いつく輩たち
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主犯と思われる芥川豊史容疑者(39)が5月24日午後に書き込んだサイトの掲示板に、2人の男が食いついた。
被害者とは面識がない
明らかに怪しい求人、リスクの高い誘い文句。
ITジャーナリストの三上洋さんが、事情を解説する。
「応募してしまう人は、本当に金銭に困っているんです。きょう、あすに10万円、今週中に20万円が必要という切羽詰まった人が応募しちゃう。1日20万円とか50万円とか、まっとうな仕事だとは思ってないはずですから、ある程度の覚悟をして応募するはずです。今回の容疑者らも、事前にヤバい仕事をした経験があったのかもしれません」
静岡県浜松市の看護師、内山茉由子さん(29)が、同県藤枝市の山中で遺体で発見された事件。逮捕監禁容疑で逮捕された名古屋市天白区の無職・鈴木充容疑者(42)と住所不定無職の伊藤基樹容疑者(28)は、掲示板の書き込みに応募した輩だ。
「伊藤容疑者は6月8日夜に警視庁赤坂署で逮捕。鈴木容疑者は11日に、自ら愛知県警中村署に出頭した」(捜査関係者)
この2人が拉致監禁の実行犯だが、
「金儲けになる仕事があると話に乗ったが、怖くなって途中で逃げた。遺体の遺棄は知らない、報酬はもらっていない、などと供述しています。亡くなった内山さんとの面識はなかったようです」(全国紙社会部記者)
3人のうち、まず芥川容疑者と伊藤容疑者が横浜市内で落ち合い、その後、新幹線で移動。JR浜松駅で鈴木容疑者と合流したと見られる。3人が一緒に歩く姿が、浜松駅の防犯カメラに映っていた。
実行犯の2人は、5月26日午後6時ごろ、静岡県浜松市内のパチンコ店の駐車場で、パチンコ店の2階のスポーツジムから出てきて自分の車に乗り込もうとする内山さんを、そのまま拉致した。
内山さんを運ぶ実行犯2人は、どこかのタイミングで芥川容疑者と落ち合っているが、計画の恐ろしさにビビって逃げ出したとされる。
内山さんの親族からは、5月28日に行方不明の届け出が出されていた。
前出・捜査関係者の話だ。
「6月9日午後6時ごろ、捜索中の警察官が遺体を発見しました。11日に司法解剖をしましたが、死後2週間が経過していたため死因は不明です」
生活実態のあった実行犯の一人
捜査本部が行方を追っていた主犯格の情報は、6月18日に新潟県警からもたらされた。
「監禁容疑で逮捕状を取って追跡捜査をしていた男が、15日に新潟市内で死亡しているのを確認した。自殺だった」(前出・捜査関係者)
「芥川容疑者の本籍がこちらにあるだけで、生活実態はない。だから全然情報がない」
と嘆くのは民放社会部記者。
「以前は高知県に住み、通信機器販売業を営んでいたが、現在は東京が本拠地とみられている。詐欺未遂容疑など前科5犯という情報もあるが、事件の真相を含めて、何ひとつ明らかにせずに自殺した」(同前)
実行犯の1人、鈴木容疑者は、名古屋市内にしっかりとした生活実態があった。市営地下鉄鶴舞線原駅から徒歩5分に位置するマンション。
「ワンルーム、家賃は3万円くらい」(同じマンションの住人)。ひとり暮らしだった。出身は同県北設楽郡東栄町、人口約3000人の小さな町だ。
姉と弟の3人きょうだいで、複雑な家庭だったという。
同級生の父親が覚えていた。
「明るくていい子だった。うちの息子は小学5年のときに転校してきて、なかなか仲間に入れなかったんだが、充が気にかけて仲間に入れてくれた。よう面倒を見てくれる子だったよ。
体格も大きかったし、ガキ大将って感じだった。何しろ野球が好きだった。東栄町からプロ野球選手が出ていてね。あんな選手になるんだって話していた。推薦で高校にも進学し、甲子園に行ったら招待するからって言ってくれていたんだけど……」
肩をいからすように歩きいきがっていたが同時に、小心者であることを周囲に見抜かれていた中学時代。
プロへの夢ついえた後は転々と転がるような人生に。魚市場で働いていたり豊橋ではホストをしていたこともあったという。
鈴木容疑者を知る関係者は、
「ホスト時代には、警察ざたにもなって、何度か逮捕されたこともあったと聞いた。野球のスカウトみたいなことをやっていると聞いたことがある。いい高校のチームに行きたい親御さん相手に紹介手数料をもらっていてトラブルにもなっていた」
被害者女性の自宅は
鈴木容疑者の実父はひとり暮らしだが、脳梗塞を患い具合が悪く、親戚が面倒を見ているという。家の前で車の掃除をしている男性を直撃した。
「あんなことをする子じゃなかったのに……。俺は充の叔父だから、関係ねぇから。(父親の居場所は)知らん」
親類の女性は、
「私たちも心を痛めています。野球のスカウトなんかをしているのは聞いてたけど、全然会っていません。優しい子だったから利用されてしまったんだろうね。お金の相談は一切なかったですよ」
そう話した後は一切、口をつぐんでしまった。
被害者の内山さんの自宅は、雨戸が閉まり静まり返ったまま。近隣の女性住民は、
「事件以来、おうちには誰もいないようですね。たまに帰ってきていらっしゃるけど……。茉由子さんは会えばあいさつをしてくれる方。みんなで出かけたり、仲のいいご家族でした。こんなことがあって、本当に……怖い」
今回、悪と悪とを結びつけたのは、地域密着型掲示板『爆サイ』だった。
「『5ちゃんねる』『2ちゃんねる』に続き、日本で3番目に大きな掲示板です。県別、市別に分かれていて、風俗やキャバクラの掲示板には、夜のお仕事の求人募集もたくさんあります。一般向けの求人募集の掲示板もあります」
と前出・三上さん。
一般の求人に掲載されている情報は《パチンコ打ち子大募集》《農家でのお仕事》といった具体的なものから《その方に合ったお仕事、日払い10万以上持って帰れます》《稼ぎたい方のみご連絡ください》《裏案件にご興味・ご理解のある方、お問い合わせください》といったものが。そこで3人の悪が結びついた。
主犯格の芥川容疑者は、なぜ内山さんの拉致を指示したのか、面識はあったのか、目的は何だったのか。どこまで解明できるのか、警察の捜査力に期待するしかない。