左から、室井滋、飯田譲治 撮影/森田晃博

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「50代でも60代でも若いころのように楽しみたい、暴れたいって気持ちはあるよね。このドラマでは、中年になっても“ヒーローやヒロインになれるんだ!”ってことを何よりも表現したかった」

【写真】気合いじゅんぶんの室井と飯田

 そう話すのは、6月3日より放送がスタートするドラマ『アイアングランマ2』(NHK BSプレミアム)の監督を務める飯田譲治氏。飯田氏と30年来の友人である室井滋と大竹しのぶがダブル主演を務める。

 本作は、元スパイのおばちゃん2人が悪者たちとスリリングな対決を繰り広げた『アイアングランマ』の続編。

 中年女性が主役のアクションドラマはあまり見たことがないけれど──。

室井(以下、室)「日本って、年齢によって役割が決まっているようなフシがありますよね。本来、年齢に関係なく、アクションだってなんだって勝負できるっていうことが理想ですよね」

飯田(以下、飯)「あと、お年寄り向けの作品はわかりやすくしないと見てくれないなんてことは絶対ないと思う。元気で、知的な人が楽しめるものにしたいと思ったんだよね。

 この作品は、そういう意味では最初からしげ(室井)と大竹さんをイメージして、元気な感じで書きました」

 前作に引き続き、本作も本格的なアクションシーンがたっぷりのようだ。

室「前作の撮影から3年たっているってことは、つまりすでに3つも老けちゃったってことじゃないですか(笑)。だから撮影に入る前は、ちゃんとできるか少し不安はありましたね」

飯「じゃあ、これのためにやせたりしてくれたの?」

室「やせてはいないけど(笑)。でもプールに通って、水中で腹筋200回はしていましたよ」

飯「浮力があるから楽なんじゃないの?」

室「そんなことないわよ!」

飯「あ、そう……」

しげから「もっとアクションを増やせ」

室「でも意外とこれぐらいの運動は平気なんですよ、私。アクションのレッスンも、してみたら案外、身体が覚えていて。いざ撮影に入ってからは、そこで苦労することはあまりなかったですね」

飯「今回は、主役の2人の負担を減らしてあげようって思って、最初はアクションを少なくしていたんです。でもそうしたら、しげから物足りないからもっとアクションを増やせって言われて」

室「撮影前のレッスンでも、先生から“基本的なことはできていますから、そんなに練習もいらないです”って言われたんですね。せっかく気合入れているのに何だと〜! って思っちゃって。生意気にももっと増やしてって言わせてもらいました」

飯「結果、飛んだり跳ねたりっていう激しい動きは第1話からすごく増やしたよね」

室「第3話も、バカみたいに走りまくってます(笑)。でもなんかね、大竹さんは戦う相手が華奢な女性とかで、エイ! って感じでかわいく戦うのに、私は身体の大きい男性相手ばかりで。大竹さん、いいなぁって思いました」

飯「それはないだろ(笑)」

室「私は普段から“おっさんキャラ”だしね。大竹さんはホワンとしてらして、現場にもいつもきれいな私服で来ていらっしゃいましたし」

 キャラのまったく違う室井と大竹。そんな2人が撮影中、一緒に外食する機会があった。

室「その日はロケで大雪が降るし、弁当にも飽きてきたし、気分転換に『富士そば』か『日高屋』にでも行こうかなと思っていたんです。私、おっさんですから(笑)。そしたら、大竹さんが“えー、どこ行くの?”って」

 なんと大竹は、大手チェーンである富士そばも日高屋も知らなかったそう。

室「“どうしても行きたい”って言うから、富士そばか日高屋か迷ったあげく、日高屋にメイクさんとかスタッフさんも一緒に行ったんです」

飯「何、頼んだの?」

室「ラーメンとかギョーザとかチャーハンとか……。もういっぱい」

飯「注目されたのでは?」

店じゅうが2人に釘付け!?

室「そりゃ、私と大竹さんは撮影用のメイクをバッチリしているから変に目立って、もう日高屋じゅうの視線を感じましたよ!(笑)」

 よほど印象に残ったのか、大竹はその後、出演したトーク番組で初めて日高屋に行った話を披露していたという。

室「そのときスタジオの出演者たちに“え〜!”と言われてて。私はしょっちゅう日高屋に行くから、誰からも“え〜!”とか言われたことないです。やっぱり“おっさん”イメージなんだなと(笑)」

『アイアングランマ2』には50代、60代のいわゆる“中年”女性に向けたエールが詰まっている。

室「この年代ってまだまだ可能性があると思うんですよ。本当にやりたかったことが、逆に実現しやすい年齢なんじゃないかなと。つい最近も、素敵なジャズピアニストさんと出会う機会があって、習いたいって言ったら、いいですよって言ってくださって。

 近々さっそくレッスンに行く予定です。生涯、これだけはやりたいっていうことを諦めずにトライする人でありたいですし、年齢で諦めない女性はカッコいいと思います」

飯「ひとつの時代を築いてきた実力者ばかりがいる年代なのに、人生の脇役にされちゃっていることが多いと思っていて。もっとアクティブに、前に出てきてもいいと思うんだよね。“中年になってもまだまだ現役!”っていう内容のドラマ作りをこれからもしていきたいね」

 スタート前から続編の期待が高まってしまうが──。

飯「次はもっとスケールを大きくして映画でやりたいね」

室「パート3があったら、私はジャズバーに潜入してピアノを弾いているかもしれないですね。次に向けて、プールで腹筋300回できるようになろうと思います(笑)」

〈取材・文/灰岡美紗〉

〈PROFILE〉
室井 滋 むろい・しげる
女優。近著にエッセイ『おばさんの金棒』、絵本『いとしの毛玉ちゃん』。電子書籍本も多数。全国各地でしげちゃん一座絵本ライブを開催中。

飯田 譲治 いいだ・じょうじ
映画監督、脚本家、小説家。映画『らせん』『アナザヘヴン』などのほか、ドラマ『沙粧妙子 最後の事件』『ギフト』(ともにフジテレビ系)では脚本を担当。

〈番組情報〉
NHK プレミアムドラマ
『アイアングランマ2』(全6回)
2018年6月3日(日)夜10時スタート
かつて『ソルト&シュガー』というコードネームを持ち、特殊捜査官だった塩谷(大竹しのぶ)と佐藤(室井滋)。2人は再びコンビを組んで新たな戦いに挑む。