<日大アメフト問題>学生は「理事長の魂胆=大人たちの保身」を見抜いている
2018年度シーズン終了まで公式試合の出場停止処分が科せられた日大フェニックス。内田正人前監督、井上奨前コーチが永久追放になった一方、部員は今も、東京・中野区にある同部学生寮で、学生生活を送っている。
出入りする部員は一様に、「声明文に書いてあるとおりです。(何も)お答えできません」と口を閉ざすが、記者に怒鳴ったり、逃げたりはしない。
寮から自転車で外出する部員を記者が息を切らしながら走って追いかけると、「答えられません」とキチンと応答する。
「最後にもうひとつだけ確認させて」と呼びかけると自転車の速度を落として耳を傾けてくれた。大柄な選手にたじろぐこともあったが、「お疲れさまです」と、こちらを気遣うのを忘れない青年らだった。
アメフトができなくて苦しい
スーツ姿で、就職活動に直面している4年生の姿も見かけた。一般企業に就職する学生もいれば、社会人リーグ『Xリーグ』に所属する企業を目指す学生もいる。
「アメフト部じゃなくても、アメフト部の話を聞かれます。いい気分はしないですよね」
と就活中の同大4年生。
「入社してからも“あの日大ね”みたいな感じで見られるのはつらいですよね」
と同大関係者は同情する。
忸怩(じくじ)たる思いを胸に閉じ込め、目標のない練習に汗をかく選手。彼らの思いを同大2年の男子学生は、
「仲のいいアメフト部のやつは“チーム練習もできないし、アメフトができなくて苦しい。でも今は耐えるしかないのかな”って話していました」
別の3年の男子学生は、
「アメフト部の友人が“つらいな”ってぽつんともらしていて。こっちもつらすぎて、それ以上は聞けませんでした」
と、やりとりを明かす。
処分を下した関東学生アメリカンフットボール連盟は、条件つきで年内復帰も可能という温情をつけ加えた。
秋のリーグ戦に出場するタイムリミットは7月末。それまでに処分が解除され、選手登録をしなければ、リーグ戦に原則、参加できない。クライマックスは12月の甲子園ボウル。関東と関西のリーグ戦の王者がぶつかり合う夢舞台だが、出場停止の処分が解けなければ夢はついえる。
同大3年の男子学生は、
「勉強ばかりじゃなく、スポーツをやりたくて大学に通っている学生もいる。それができなくなるってことは、何のために大学に来たんだろうって思ってしまいますよね。原因を作ってしまった宮川君がいちばんつらいと思います」
と悲しげな表情を見せる。
謝罪会見で宮川泰介選手は「この先、アメリカンフットボールをやるつもりはありません」と明かしていたが、
「泰介は辞めてないですから」
と仲間の選手はきっぱり。
前出・2年の男子学生は、
「うやむやになるまで黙っていようという、(田中英寿)理事長の魂胆が見え見えです」
と大人たちの保身を見抜き、こう力強く訴えた。
「学校と監督とコーチが悪いわけですから(学生のことは)もう許してあげるべきですよ。あいつらにアメフトをやらせてあげてください!」