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彼氏は一回り以上年上の37歳だと思っていたら、なんと実年齢が50歳だった。結婚を考えていた相手が年齢も年収も、サバを読みすぎていたのが許せないーー。弁護士ドットコムの法律相談コーナーにこのような相談が寄せられました。

相談者は20代前半の女性。一回り上の37歳という年齢に多少の抵抗はあったものの、「家を買ってあげる。専業主婦でいい。結婚を前提に」と、交際を申し込まれたので、了承しました。ところが交際を始めて、彼が実は50歳だと判明。さらに「貯金も彼の年収の割には少なく専業主婦は厳しい状況でした」。

相談者は、相手が50歳で、経済力も乏しいことがわかっていれば「付き合うことも体の関係を持つこともありませんでした」と言います。このような場合、彼の行為は「結婚詐欺」であるとして、慰謝料を請求することはできるのでしょうか。小田紗織弁護士に聞きました。

●いわゆる「結婚詐欺」とは異なる

ーー相談者は相当にお怒りの様子です。

私の周りの女性に聞いてみましたが、「結婚詐欺だ!」「許せない!」という意見が多かったです。ただ、彼は本当に結婚する気があったのかもしれません。また、相談者は何か金銭を取られたわけでもないようです。

ーー相談者には強い結婚願望があり、「結婚できるなら」と相手との交際を始めたようです。そのため、「そんな条件なら交際しなかったのに」と、強い被害感情を抱いています。

弁護士としては、結婚話を持ち出して金銭を得るといった、いわゆる「結婚詐欺」とは異なると言わざるを得ません。

彼は本気で相談者と結婚し、家を買って、専業主婦になって欲しいと夢を抱いていた可能性もあります。もちろん彼は、自分の収入・預金から現実的な見積もりができておらず、認識の甘さはあったでしょう。

ただ法的な観点から言えば、相談者が被った損害のメインは、相談者が彼(との結婚)のために捧げた貞操と時間。法的には精神的苦痛・人格権ということになります。

●慰謝料請求が認められる条件

ーーでは、慰謝料は認められないでしょうか。

相談者の慰謝料請求が認められるかどうかは、(1)相談者の交際相手・結婚相手に求める条件・期待が法的な保護に値すべきレベルかどうか、(2)嘘の内容が社会通念上許される限度を超えたものかどうか、がポイントになってくるでしょう。

ーー(1)について、具体的にはどういう点を検討するのでしょうか。

相談者が、彼に対して、結婚を前提に交際する相手を探していること、その条件について、具体的に説明し、確認したかどうかによります。

相談者は彼に、年齢、収入、預貯金に関する条件を具体的に示していたのでしょうか。また彼は、その条件を満たすことを明確に約束していたでしょうか。

普通は、そこまで踏み込んだやりとりはしないかと思われます。相談者が彼の年齢、収入、預貯金等を正確に知らなかったとしても、「彼」を受け入れ、交際していたのであれば、理想と現実が違っていても、法的な保護に値するとまではいえません。

●自分を良く見せるための「多少の嘘は誰にでもあり得る」

ーー(2)については、どうでしょうか。

結論的には、彼の真意を証明できるか、で判断は異なります。

彼の年齢詐称の程度は、「社会通念上許される限度を超えた」と言えそうです。ただ、交際や結婚をしたい相手に自分を良く見せるため、多少の嘘をつくことは誰にでもあり得ます。

心から相談者を愛し、好かれたいがために、軽い気持ちで嘘をついてしまったのか。それとも、相談者の結婚願望につけ込み、若い女性と交際する欲求を満たそうとしただけなのか。後者であれば、より一層、社会通念上許される限度を超えたと評価できます。

●ハイスペ男性でも「思い描いたとおりの結婚生活は約束されない」

ーー現在、婚活中という方に何か助言があれば、教えてください。

そもそも、年収などの「結婚の条件」は、とても不安定です。

若くて経済力がある、いわゆるハイスペック男性と結婚しても、勤務先の倒産、トラブル、病気、死亡、DV、不倫により生活が激変することは現実にあります。誰もが当初に思い描いた通りの結婚生活が約束されているわけではありません。

相談者の理想通りの彼氏ではないから別れるとしても、慰謝料請求するよりも、そのエネルギーを新たな出会いに注ぐ方が賢明ではないでしょうか。

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(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
小田 紗織(おだ・さおり)弁護士
法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士を目指し活躍中。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.kobemarin.com/