猛禽類の「タカ」と言えば、日本ではまず「オオタカ(大鷹)」のことを指す。北米からユーラシア大陸まで幅広く生息し、日本では南西諸島を除くほぼ全域で見られるとされている。

かつては国内での生息数が激減。絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト「環境省レッドリスト」でも「絶滅危惧種」になっていたが、「希少野生動植物」に指定されてからは個体数が回復したとされ、現在では「準絶滅危惧種」だ。

獲物が豊富な里山や山岳地帯に生息する、はずなのだが、東京都23区内、それも住宅街の公園で目撃されているというのだ。「大きな別の鳥を見間違えているのでは?」と考えつつ、記者も確認に向かった。


エサは周辺にいるハト

オオタカの生息が脅かされることがないよう、場所は「23区西部の某公園」としておくが、近くに山や森林があるというわけでもない。オフィス街のど真ん中に比べれば、緑豊かとは言えるといったところだろう。近くに住む記者の知人に話したところ、「タカなんているわけない」と言われる程度には、タカが住んでいそうなイメージがない、完全に住宅街の真ん中だ。

オオタカの巣があるエリアは立ち入らないようにロープで制限されているものの、特にオオタカがいるなどとは明記されておらず、頭上をよく観察していなければわからない。公園の管理者に確認してみたものの、詳しい生息状況などは把握しておらず、

「オオタカ目当てのカメラマンなどがたくさん集まってしまったことがあり、オオタカや近隣住民の迷惑にならないよう立ち入り制限をしましたが、管理などをしているわけではなく、詳細は我々にもまったくわかりません」

とのことだった。

公園が存在する区にも確認をしてみたが、住民からの連絡でオオタカがいることは把握しているものの、オオタカに限定した生息調査などは行っていないという。

「数年おきに実施している区内の野生動物調査で、10年前からいくつかのエリアにオオタカがいることは確認しているのですが、ご指摘の公園の生息状況はわかっていません」

オオタカが生息していることは把握されているが、特にどこも調査などは行っていないようだ。だが、知る人ぞ知るというわけでもないようで、記者が現地に行った際は大きな望遠レンズを取り付けたカメラを持ってオオタカを待ち構える人や、双眼鏡でしげしげと観察している人など、かなりの人たちが集まっていた。

記者が確認した限りではオオタカは2羽。1羽は木の上からじっと周囲を見回しており、もう1羽はどこかから飛んできて、巣があると思われる木に戻っていた。


枝の上で一匹が周囲を見張っているような様子を見せていた(2018年3月24日撮影)

去年からオオタカを観察し続けているという男性は、「2017年の3〜4月ごろにはここにいたようだ」と話してくれた。

「ここにいる2羽はつがいのようで、去年は雛も生まれたみたいだけど、今は見かけない。無事に巣立ったのかどうかは確認できなかったですね。カラスと喧嘩している様子も見かけるから、なかなか大変な環境だと思います」

何を餌にしているのか気になるところだが、この男性によると鳩を狩るところを見かけるという。なるほど、ドバトであれば都内のいたるところで見かける。ハトからすると災難だが、オオタカにとっては食糧源となっているらしい。

別の男性によると、この公園から少し離れた別のエリアでも、数年前にオオタカが生息している姿が確認されていたという。

「7〜8年くらい前から、このあたりでオオタカの姿が見られるようになったんですよ。山に住んでいるものだと思っていたけど、タカも都市型になってきたのかもしれないですね」

区の話とも一致する目撃例だ。ちなみこの区内にはもっと大きな緑地や樹木がある場所も存在するのだが、なぜオオタカがここに来るのか、記者には見当もつかない。貴重な野生動物が確認できるようになったということは、都内の自然環境も大分豊かになりつつあるのか。

当然だが、仮にどこかでオオタカが生息している場所を見つけても、オオタカの生息を脅かすような行為は厳禁だ。シティーバード(?)としての生活を始めつつあるオオタカたちをそっと見守っていただきたい。