ローソンが販売する「Uchi Café SWEETS×GODIVAキャラメルショコラロールケーキ」(税込395円、10月31日発売)

スイーツ、ドリンク、アイス――。ここのところ、ゴディバの名前を冠した商品をよくコンビニで見掛ける。ゴディバといえば、高級チョコレートの代名詞。コンビニといえば、日常の象徴。対照的ともいえるこの2つの存在が今、こんなに結びついているのはなぜだろうか。

ゴディバが初めてコンビニで販売を開始したのは、2010年のバレンタインシーズン。以来、年々コンビニでの販売アイテムを増やし、2017年6月にはローソンで「Uchi Café SWEETS×GODIVAショコラロールケーキ」を筆頭に、7月には同コラボレーションの「ショコラプリン」、9月には、「ショコラタルト」「ガトーショコラ」と、立て続けに限定商品を販売した。


ジェローム・シュシャン/ゴディバ ジャパン社長。1961年パリ生まれ。LVMHグループ・ヘネシーのビジネス開発ディレクター、リヤドロジャパン代表取締役社長など、日本、アジアを中心とする国際市場で25年にわたりラグジュアリーブランド業務に従事し、2010年にゴディバ ジャパン代表取締役に就任

また、コンビニ限定サイズのアイスクリーム、チョコレートアイスバー、チルドカップドリンク(チョコレートドリンク)などを展開し、今やコンビニでオールシーズン、あらゆるゴディバのアイテムに出合えるといっても過言ではない。

どんな戦略があるのか、2010年からゴディバ ジャパンで社長を務めるジェローム・シュシャン氏に話を聞いた。ゴディバ初のコンビニエンスストア展開は2010年からなので、まさにシュシャン氏が社長に就任してすぐのタイミングとなる。

ゴディバはベルギーのブリュッセルで1926年に創業した老舗で、現在は世界100カ国以上で販売される世界の超有名高級チョコレートブランド。日本に上陸した1972年以来、高級チョコレートの代名詞として、真っ先に名前が挙がるほどの知名度がある。

高級イメージのゴディバのチョコレートを、コンビニで販売する決断は、社長として大きなチャレンジではなかっただろうか。

アスピレーショナルとアクセシブルの両立

「アスピレーショナル(あこがれ)とアクセシブル(行きやすい)は相反するものではありません。両立できるのです」。シュシャン氏は語る。

「2010年代に入り、時代の変化とともに日本人のライフスタイルが変わり、人々は気軽にいろいろな場所で小さな『ラグジュアリー体験』を求めるようになりました。ラグジュアリーはこれまでのチャネルだけで実現されるものではありません。仕事が終わった帰り、夜遅くても深夜でも、わざわざ遠くまで出掛けなくても、オフィスや家の近くでゴディバに出合えれば、幸せになっていただけるのです。私たちはお客さま目線でアクセシブルなラグジュアリーを提供しています」

ゴディバは日本で45年、直営の路面店舗や、百貨店、ショッピングセンター、高級ホテル内の店舗を中心に販売を続けてきた。その体制を変えることに対し、やはりブランドイメージを心配する声も社内にあったという。ただ、それは少数意見で、大多数が賛成意見だった。

過去にとらわれず、「今」の消費者の気持ちを優先した。結果、コンビニエンスストアでの商品展開は、大きな共感を呼び、2011年以降現在に至るまで、コンビニでの売り上げは年々アップし続けている。

コンビニ販売の影響で、既存店の客足が遠のくことはないのか。この疑問にシュシャン氏はこう答える。「相乗効果が得られています。コンビニでカップアイスを買ったのをきっかけに、ゴディバがアイスクリームを販売しているのを知り、百貨店やショッピングセンターの店舗にも足を運ぶようになったというお客さまの声があります。ゴディバに親しみを持ってくれる人が増えたのです」

既存店の2010〜2016年の売り上げ推移は、毎年平均17.6%アップしている。つまりコンビニ展開が既存ビジネスを毀損していないことになる。ゴディバの日本市場は右肩上がりに成長を続け、2017年には、ついに世界のゴディバの中で、日本は最大のマーケットとなった。ブランドイメージを損なわず、好調に推移する売り上げとユニークな戦略はグローバルに注目を集め、2017年1月、ハーバードビジネススクールが「ゴディバ・ジャパンケース」を研究し、授業に採用している。

高級感とクオリティは妥協しない


コンビニのバレンタインチョコレートにはロゴ入り紙袋がつく

ゴディバのコンビニ展開にあたり、シュシャン氏には絶対に譲らない強いこだわりもある。その象徴が、バレンタインチョコレートに別添えされる、ショップのロゴ入り紙袋だ。

2011年、セブン-イレブンでバレンタイン・ホワイトデー限定チョコレートを販売する際に、シュシャン氏は、ゴディバのロゴ入紙袋を購入者全員に渡すことを、絶対の条件にした。


ゴディバのアイスバーはロゴ入り。11月にも新商品がコンビニで発売予定

「ゴディバをギフトにするにはコンビニの袋ではなく、ロゴ入りの紙袋が不可欠」と考えたからだ。当時はコンビニのバレンタイン商品に、ブランドのロゴ入りの袋を別添えするのは異例だった。これを最初に実現させたのは、シュシャン氏である。

また、チョコレートアイスバーのバーに、ロゴの焼き印をつけたのもシュシャン氏のアイデアだ。「ロゴがあるのとないのとではまったく印象が変わります。この部分を撮影したSNS投稿もよく見られますよ」(シュシャン氏)


ゴディバ監修の「GODIVA ミルクチョコレート」は森永乳業から発売中 220円(税別)

ゴディバ監修のチルドカップ飲料「GODIVA ミルクチョコレート」は、ゴールドのパッケージで高級感を出した。ストローまでゴールドで、持ってみるとまばゆい。確かに特別感がある。

コンビニ内の同カテゴリ内で、最も高い価格設定もゴディバの特徴だ。「ゴディバのDNAであるクオリティ、レシピに妥協はしません。アクセシブルは価格ではなく、場所です。クオリティは、ラグジュアリーです」(シュシャン氏)。

コンビニでは限定商品しか売らない

ゴディバは、コンビニで商品を通年展開せず、つねに期間限定販売し、季節感やワクワク感を演出している。今年6月にローソンで販売された「Uchi Café SWEETS×GODIVAショコラロールケーキ」は、ローソンの看板スイーツとゴディバのコラボレーションが話題となり、3週間の予定が、2週間で販売終了となる反響だった。

「ゴディバさんに、何度も確認をいただきながら完成させた自信作です」と語るのは、ローソン広報室の谷恒和さん。「初日から売り切れる店が続出しました。SNSで入荷時間情報が拡散され、YouTubeで味を評価されたり、お客さまの間で情報が広がりました。第4弾は10月31日に発売です」

コンビニは、気楽でもある。ケーキ店では、1個だけ買うのは気が引けることもあったが、コンビニなら気兼ねなく1個だけ買えてうれしい、という声もあるという。


「ゴディバ ザ タブレット」は自分用ラグジュアリーを提案する新カテゴリー

2017年12月には、ゴディバは日本初のコンビニ限定チョコレートバーを販売する。スペインのデザイナーを起用したスタイリッシュなパッケージは、ビジネスマンがポケットに入れても様になりそうだ。

「論理は過去です。現在と未来は感覚でとらえるもの。1970年代のモデルは2000年代になって大きく変わりました。アクセシブルでありながらアスピレーショナル。私たちは、プライドが高くて冷たいラグジュアリーではありません。忙しいこの時代だからこそ、ゴディバはコンビニにもあるのです」(シュシャン氏)

コンビニに並ぶゴディバのチョコレートは、人々が小さな特別感を、場所や時間にとらわれずに手にしたい気持ちの反映であり、現代の日本人が求める新しい選択肢「アクセシブルなラグジュアリー」といえそうだ。