ソフトバンク・スアレス【写真:荒川祐史】

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開幕当初から怪我続きも、2位に大差をつけて圧倒的リーグ優勝

 2017年のパ・リーグ覇者が16日に決まった。敵地メットライフドームで2位西武との直接対決を制し、ソフトバンクが2年ぶり20度目(1リーグ制時代を含む)のリーグ優勝を果たした。

 8月上旬まで楽天を追う2位だったソフトバンクは、8月15日に首位を奪うと、そこから8連勝、間を空けて9連勝と2度の大型連勝を記録。失速した楽天とは真逆の快進撃で、みるみるうちにその差を広げていった。

 優勝した段階で2位西武に14.5ゲーム差と圧倒的な強さを誇ったが、実際にはチームの主力、中堅クラスの選手の不在があった。その戦いぶりは驚異的。和田、千賀、武田の先発投手3人を欠いたシーズン序盤を、石川、松本裕の台頭で乗り切ったように、怪我人の穴をその他の戦力でなんとか埋められるのが、ソフトバンクの強さだった。

 驚くのは1軍にいなかったメンバーたちの、錚々たる顔ぶれ。この破竹の快進撃を飾った終盤、リハビリ組やファームにいた主な選手として、以下の面々が挙げられる。

○投手:ロベルト・スアレス、攝津正、大隣憲司、田中正義、高橋純平、松坂大輔、

 投手陣で最も不在を懸念されていたのが、実は、このスアレスではないだろうか。昨季途中からセットアッパーに君臨し、最速162キロの豪速球を持つベネズエラ人右腕だ。今春のWBCにベネズエラ代表として出場し、この大会中に右肘を故障。4月にトミー・ジョン手術を受け、今季を棒に振ることになった。スアレス不在となったが、岩嵜が8回を任され、7回はシーズン序盤は森、中盤からは新戦力のモイネロがハマり、鉄壁のリリーフ陣を形成した。ここにスアレスがいたら(外国人枠の問題はあるが)と思うと、他球団はゾッとすることだろう。

 攝津、大隣のベテラン2人も、長らくファーム生活を送っていた。1軍では、攝津は5試合に先発して2敗、大隣も1試合に先発して1敗と結果を残せず。石川、松本裕の若手2人が結果を出したことで、なかなか1軍から声が掛からなくなった。即戦力として期待されたドラフト1位の田中は3月に右肩違和感を訴え、じっくりと治療とリハビリを行ったため、1軍はおろか2軍での登板もなかった。

2軍にいた野手陣も豪華顔ぶれ揃う

○野手:内川聖一、川崎宗則、長谷川勇也、吉村裕基、城所龍磨、真砂勇介

 野手では、何と言っても、4番の内川がいなかった。7月26日に「左手母指基節骨尺側基部の剥離骨折」が判明して離脱。内川のいなくなった4番には柳田が入り、一塁には主に明石が入った。明石が8月を87打数26安打の打率.294、9月を51打数14安打の打率.275と、まずまずの成績を出してカバー。確かに、内川不在の影響があったのか、打線は爆発力に乏しく接戦が続いたが、勝負どころできっちりと得点し、僅差での勝利を挙げてきた。

 今季開幕直後にカブスから電撃復帰した川崎も、両アキレス腱の痛みを訴えて離脱した。2013年最多安打の長谷川、2008年に34本塁打を放ち、近年は代打の切り札的存在だった吉村、昨季の交流戦MVPの城所などは、今季の大半をファームで暮らした。
 
 これだけのメンバーが2軍やリハビリ組にいながらの、ぶっちぎりの独走V。工藤公康監督は優勝を決めた際に「カバーしてくれる若い人が出てきたっていうのも1つあるんですけど、レギュラーが抜けたときにベンチにいる人たちがいい働きをしてくれたっていうのがね。戦力ダウンなんだけど、そこまで感じさせなかったというのが、必死にカバーしようとしてやってくれたのが、大きいんじゃないかなと思います」と語った。上林や甲斐、石川、松本裕らは、競争を勝ち抜いて1軍に上がってきた。2軍のこの分厚い顔ぶれが、ソフトバンクの充実の選手層の証でもあった。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)