去就が注目される長友。愛するクラブへの残留が第一希望だが……。(C)Getty Images

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 40度を超える日が少なくないなど、猛暑が続いているイタリア。ミランが世界トップクラスのCBレオナルド・ボヌッチをはじめ実力者を次々に獲得する“熱の入った”大刷新を行なっている一方で、対照的に小規模な補強に留まっているのが、ライバルのインテルだ。
 
 ここまで獲得した新戦力は、司令塔ボルハ・バレロ(←フィオレンティーナ)、MFマティアス・ベシーノ(←フィオレンティーナ)、CBミラン・シュクリニアル(←サンプドリア)、第2GKのダニエレ・パデッリ(←トリノ)、そして8月9日に入団した左SBダウベルト(←ニース)という5人。さらにドルトムントの小兵ドリブラー、エムレ・モルとの契約に近づいているものの、ここにきて重心は“売り”のほうにシフトしつつある。
 
 まず8月11日には、3シーズンに渡って献身的な守備でチームを支えたMFガリー・メデルをトルコ王者ベジクタシュへ売却。ステーファノ・ピオーリ前政権時代には、MFだけでなくCBとしても重用されたものの、よりパスワークを重視するルチアーノ・スパレッティ新監督の就任で構想外となっていた。
 
 また、昨夏に2950万ユーロ(約38億円)という大枚をはたいて獲得しながら、1試合も先発出場がなかった“ガビゴール”ことガブリエウは、レンタルでの放出が濃厚だ。受け入れ先の有力候補は、ポルトガルのスポルティング。インテルは年俸270万ユーロ(約3億5000万円)を半々で持つ条件で貸し出そうとしているが、スポルティングには負担が大きく、まだ交渉はまとまっていない。
 
 1年目は期待を大きく裏切ったブラジル代表FWだが、まだ見切りはつけず、武者修行に出して欧州のサッカーに順応させる算段だ。
 
 新戦力のシュクリニアルが早々にフィットし、ミランダの相棒に収まりそうなCBでは、ジェイソン・ムリージョの退団が確定的だ。15-16シーズンはそのミランダとのコンビで鉄壁な守備を築いたものの、昨シーズンは失点に繋がるミスが散見され、信頼を勝ち取ることができなかった。買い取り義務付きのレンタルで、バレンシアヘの移籍が目前に迫っている。
 長友佑都の立場も微妙な状況だ。一時は放出が濃厚とされていたが、昨シーズンに左SBの定位置を争ったクリスティアン・アンサルディが鼠径部の手術の影響でスロー調整が続いてこともあり、プレシーズンマッチはほとんどの試合で先発出場。スパレッティ監督も一定の評価を与えており、残留の可能性も高まっていた。
 
 だが、ダウベルトという強力なライバルの加入で、去就は再び不透明に。開幕前最後のテストマッチとなった8月12日のベティス戦では、ダウベルトが早速スタメン出場を果たし、後半途中からアンサルディがピッチに立った。胃腸炎のためベンチからも外れ、この最後のアピールの場を逃したのは、長友にとっては痛恨だった。
 
 現時点では、左SBがダウベルト、右SBがイタリア代表のダニーロ・ダンブロージオがレギュラー候補。いずれも左右兼用の長友、アンサルディ、ダビデ・サントンのうち、少なくとも1人はリストラの対象になるだろう。
 
 当然それは、好条件のオファーが届くかどうかでも変わってくる。いずれにせよ、ベティス戦後に指揮官が「ポジショニングのミスが2、3回あった」とコメントしたように、加入間もないダウベルトがまだまだフィットしていないのは事実。SBのサバイバル競争は、移籍市場が閉まる8月末ぎりぎりまで続くかもしれない。
 
 SB以外では、MFマルセロ・ブロゾビッチを売りに出しているほか、レンタルから復帰したCBアンドレア・ラノッキアとFWステバン・ヨベティッチについては、再び放出するのか、残留させるのかを指揮官が見極めている状況だ。
 
 また、ボルハとベシーノの加入で出番が大幅に減りそうなジョフレー・コンドグビアは、個人合意をしたバレンシアへの移籍を訴えて、8月11日の練習を無断欠席。まだ両クラブの開きはあるものの、金銭面で折り合いがつけば退団を許容する可能性はある。ただしその場合は、セントラルMFをもう1枚獲ることになるだろう。
 
 開幕まで1週間を切りながら、まだ陣容の固まっていないインテル。今後の移籍市場での動きに注目が集まる。

文:ワールドサッカーダイジェスト編集部