日本を待ち受ける“オリンピック後の地獄” 労働者を直撃する「2021年問題」とは
少子高齢化、人口減少など、日本が陥っている状況については、日本で暮らしていれば嫌というほど聞こえてくる。
しかし、そうした事象によって社会にどんな問題が起きるか知っているだろうか。
人が国家を構成する以上、その数が減ることの影響は国の隅々にまで及ぶ。そして減少が続けば続くほど、より深刻で原因が複合的な新たな問題が立ち上がるのは言うまでもない。
■「2018年問題」より深刻な事態が2021年にやってくる!
有名なところでは、来年起きるとされる「2018年問題」がある。これは、2018年を境に、18歳の人口が減少に転じ、学生を確保できずに経営難に陥る大学が相次ぐリスクを指す。
ちなみに、この18歳人口は1990年以降だと1992年をピークに減り続けてきた(ただし、2009年〜2017年はほぼ横ばい)が、大学進学率が伸びていた分、大学進学希望者の減少は抑えられ、大学側に大きな影響はなかった。
しかし、すでに52%(2016年)に達している大学進学率が今後さらに伸びるとは考えにくいため、今後の18歳人口の減少は、そのまま大学進学希望者の減少に結びつくと考えられている。その影響は国立大学にまで及ぶと見る向きもあるというから驚きだ。
ただし、『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』(河合雅司著、講談社刊)で取り上げられている、日本を待ち受ける苦しい未来に比べたら、2018年問題はまだ序の口かもしれない。
「オリンピック後は景気が悪化する」という説を信じるのであれば、東京オリンピックの翌年にあたる2021年には、日本の景気は冷え込んでいるかもしれない。そんな産業界に追い打ちをかける恐れがあるのが介護離職問題だ。
50代に突入する頃から、親の介護に直面する人はぐっと増えてくる。
これを裏付けるのが厚生労働省のデータだ。年齢階層別要介護認定者率は65〜69歳が3%、70〜74歳が6%、75〜79歳が14%、80〜84歳が29%、85〜89歳が50%というのだ。50代とは、自分の親が要介護認定を受ける年齢に入り始める頃だということである。(P48より引用)
ここまで読んで、すでに察しがついた人がいるかもしれない。
団塊世代に次いで、人口ボリュームが大きい団塊ジュニア世代が50代になり始めるのが、2021年なのだ。
となると、どんなことが起きるのだろうか。
もちろん、要介護者が増えることによる介護保険総額の増加や、介護施設整備の遅れなどはこれまでにも取り沙汰されてきたが、産業全体にとってもっとも危機的なのは、介護離職者の急増だ。
総務省が5年ごとに実施している「就業構造基本調査」によると、働きながら介護する人は、2012年時点で291万人(男性131万人・女性160万人)にのぼり、うち40代〜50代の働き盛りが167万人(男性69万人・女性98万人)である。国が「在宅介護」へのシフトを推進していること、そして介護施設・介護の人材不足を考えると、この数は間違いなく今後増えていく。
当然、介護のために離職したり、転職したりする人も増えるが、40代後半から50代という、組織のなかで重要なポジションを担う年齢層の人材が、会社から次々と抜けてしまうことで産業や経済にどんな影響が出るのか。それは決して微細なものでも、すぐに解決するものでもないだろう。
もちろん、政府も「介護離職ゼロ」を掲げ、制度改革に取り組んでいるが、財源の制約があり、どこまで実現できるかは未知数だ。オリンピック後の景気の冷え込みに社会保障費の急増、企業からの人材流出。その地獄の入り口が2021年かもしれないのである。
◇
未来のことを正確にいい当てることはできない。
人口減少と高齢化による国としての規模の縮小を、テクノロジーが補うことも、あるいは可能なのかもしれない。しかし、もしテクノロジーが社会の現状に追い付かなかった場合、何が待っているのか。
本書で明かされる日本の未来予想図は、誰にとっても他人事ではないのだ。
(山田洋介/新刊JP編集部)
【関連記事】
古代ローマ最強の弁論家「キケロー」に学ぶ、現代でも通用する「説得術」の極意
“生涯投資家”村上ファンドを率いた村上世彰が指摘する日本企業の問題
しかし、そうした事象によって社会にどんな問題が起きるか知っているだろうか。
人が国家を構成する以上、その数が減ることの影響は国の隅々にまで及ぶ。そして減少が続けば続くほど、より深刻で原因が複合的な新たな問題が立ち上がるのは言うまでもない。
■「2018年問題」より深刻な事態が2021年にやってくる!
ちなみに、この18歳人口は1990年以降だと1992年をピークに減り続けてきた(ただし、2009年〜2017年はほぼ横ばい)が、大学進学率が伸びていた分、大学進学希望者の減少は抑えられ、大学側に大きな影響はなかった。
しかし、すでに52%(2016年)に達している大学進学率が今後さらに伸びるとは考えにくいため、今後の18歳人口の減少は、そのまま大学進学希望者の減少に結びつくと考えられている。その影響は国立大学にまで及ぶと見る向きもあるというから驚きだ。
ただし、『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』(河合雅司著、講談社刊)で取り上げられている、日本を待ち受ける苦しい未来に比べたら、2018年問題はまだ序の口かもしれない。
「オリンピック後は景気が悪化する」という説を信じるのであれば、東京オリンピックの翌年にあたる2021年には、日本の景気は冷え込んでいるかもしれない。そんな産業界に追い打ちをかける恐れがあるのが介護離職問題だ。
50代に突入する頃から、親の介護に直面する人はぐっと増えてくる。
これを裏付けるのが厚生労働省のデータだ。年齢階層別要介護認定者率は65〜69歳が3%、70〜74歳が6%、75〜79歳が14%、80〜84歳が29%、85〜89歳が50%というのだ。50代とは、自分の親が要介護認定を受ける年齢に入り始める頃だということである。(P48より引用)
ここまで読んで、すでに察しがついた人がいるかもしれない。
団塊世代に次いで、人口ボリュームが大きい団塊ジュニア世代が50代になり始めるのが、2021年なのだ。
となると、どんなことが起きるのだろうか。
もちろん、要介護者が増えることによる介護保険総額の増加や、介護施設整備の遅れなどはこれまでにも取り沙汰されてきたが、産業全体にとってもっとも危機的なのは、介護離職者の急増だ。
総務省が5年ごとに実施している「就業構造基本調査」によると、働きながら介護する人は、2012年時点で291万人(男性131万人・女性160万人)にのぼり、うち40代〜50代の働き盛りが167万人(男性69万人・女性98万人)である。国が「在宅介護」へのシフトを推進していること、そして介護施設・介護の人材不足を考えると、この数は間違いなく今後増えていく。
当然、介護のために離職したり、転職したりする人も増えるが、40代後半から50代という、組織のなかで重要なポジションを担う年齢層の人材が、会社から次々と抜けてしまうことで産業や経済にどんな影響が出るのか。それは決して微細なものでも、すぐに解決するものでもないだろう。
もちろん、政府も「介護離職ゼロ」を掲げ、制度改革に取り組んでいるが、財源の制約があり、どこまで実現できるかは未知数だ。オリンピック後の景気の冷え込みに社会保障費の急増、企業からの人材流出。その地獄の入り口が2021年かもしれないのである。
◇
未来のことを正確にいい当てることはできない。
人口減少と高齢化による国としての規模の縮小を、テクノロジーが補うことも、あるいは可能なのかもしれない。しかし、もしテクノロジーが社会の現状に追い付かなかった場合、何が待っているのか。
本書で明かされる日本の未来予想図は、誰にとっても他人事ではないのだ。
(山田洋介/新刊JP編集部)
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