華陵高等学校(山口)

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集合写真(華陵)日本一愛される野球部へ

■春夏の甲子園経験あり 2008年に21世紀枠として春の選抜に出場し、学校の歴史上はじめて聖地の土を踏んだ山口県立華陵高等学校野球部は、2009年の夏に山口県を制し、2度目の甲子園の舞台に立った。そして現在2017年の華陵野球部は、昨秋に県ベスト4入り、中国大会でも健闘。まもなく迎える最後の夏に、ナインはどのような思いを持っているのだろうか。

 前チームは「甲子園2勝〜華陵の歴史を塗り替える〜」という目標を掲げていたが、今のチームは「全国制覇」とさらに目線を上げ、同時に「日本で一番愛される野球部」を目指しスタートしたと語るのは、杉本 敬吾主将。

■悔しい敗戦と基礎作り  さて秋には山口県ベスト4といきなりの好成績を残すと、中国大会に進出。新チームのスタートとして順調に思えたが、準々決勝で山口県の強豪・宇部鴻城に敗れた。この試合は選手たちにとって最も印象的な試合として刻まれたようで、杉本主将は「相手のミスもあり、自分たちの持ち味も出し、あと一歩のところまで詰め寄ることはできたのですが、最後は地力の差を見せつけられてしまいました」と振り返る。

「ベンチの雰囲気や思い切りの良さといった自分たちの持ち味は、それまでの試合の中では大きな武器として自信を持っていましたが、それだけでは甲子園レベルの相手に太刀打ちできないことを痛感して悔しく思うと同時に、冬場に基礎から鍛え直し、夏必ずリベンジしたいという気持ちになりました」と、強い思いを胸にオフシーズンに向かったナイン。

 基礎からの鍛え直しということで、オフのテーマは「体づくり」。1人1人が春までに何kg増やすかという目標値を設定し、食トレ合宿やウエイトトレ、練習中の補食で体重増加に取り組み、毎日体重を測定。選手たちは体つきや数値の変化、そしてプレーにおいても効果を実感しながら、杉本主将は「なかなか量を食べられない苦しさから、ある意味では練習よりキツかったですね」と思い出を振り返る。

■投打の注目選手 チームの注目選手は、長打力もある1番打者、まさに「切り込み隊長」の河野 健太郎選手。そして勝負強さが武器の淺田 一輝選手と岡田 陸選手が中軸に座る。彼らが打線の中心として攻撃を担えば、投手陣の軸は2年の小林 由聖選手。「制球力がよく、安定した投球が武器。昨秋の大会でも大車輪の活躍だった」と杉本主将も太鼓判だ。さらに、中島 卓也選手(日本ハムファイターズ)さながらのカットの達人、古森 喜良選手という特殊な技を持つプレイヤーもいる。

■常に実践を想定 これまでチームの重要テーマだった「練習から常に実戦を想定してプレーすること」を夏に向けてその意識をさらに高く持って取り組んでいるという選手たち。フリーバッティングでも、一人ひとりがケースを設定し、それを宣言して打席に入る。そして守備に就いている選手もケースを設定し、中継や連携を確認。プレーで気になったことがあれば、その時すぐ話し合うようにしているという徹底ぶりだ。

「今まで支えてくださった方々への感謝の気持ちを込めた全力プレーをします。そして自分たちにとっても、応援してくださる方々にとっても最高の夏にします。」と最後の夏に向けて抱負を語る杉本主将。秋の悔しさを晴らす戦いを、ぜひ見せてほしい。

守備練習中の話し合い(華陵)チームの意識が変わった6時間のボール回し

ここからは、チームの「切り込み隊長」、河野 健太郎(3年)と杉本 敬吾主将(3年)の二人にお話を伺います!

Q.夏へ向けての課題や強化したいところを教えてください。

河野:左ピッチャーの変化球をもっと確実に打てるようにならないといけないです。 昨秋の中国大会でも、宇部鴻城の左投手を自分が打てていればという想いがあります。冬の間取り組んできたことに、少しずつ手ごたえを感じています。杉本:打たせて取るピッチングが持ち味なので、どんな状況でも平常心でピッチングができるようにブルペンから意識して取り組んでいくことです。特に、ストレートが手元で動くのが自分の特徴なので、低めに丁寧に投げるコントロールを磨きたいです。

Q.ここまで振り返って、高校野球で一番の思い出を教えてください

河野:昨年の秋、県大会から中国大会へと勝ち進めたこと。またその大会を1試合1試合自分たちで楽しめたことです。杉本:昨年冬、ボール回しという定番の練習メニューで、設定したタイムを切ったら終了という方法でやっていたのですが、結局6時間ぐらいかかってしまったという非常に苦しい思い出があります。体力的にも精神的にもかなり追いつめられてしんどかったです。

 でも、その中で「どうすればもっと早く正確に回せるか」「1人が0.1秒早めるにはどうしたらいいか」「左利きが捕ってから投げやすいところはどこだ?」「こういう体勢のときは送球が逸れやすいからステップを丁寧にやろう」など、みんなで知恵を出し合いながら工夫を重ねることができたのは、今でも良い経験値として残っています。

 また、ボール回しを通じて、自分がボールに関わらない瞬間はないということ、1つのボールに対する全員の集中力が結果を左右するということ、傍観者がいてはいけないということ等、チーム全体の意識も変わったと思います。

Q. 応援する方々へ自分のここを見てほしいというのを教えてください!

河野:1番打者としてチームを勢いづけるバッティングです。杉本:チームに良い流れを持ってくるようなピッチングがしたいと思います!

Q.このチームの好きなところは、または他のチームに負けていないところはどんなところですか?

河野:打席に立つとベンチからの声援がすごく心強くて、まるでベンチが打たせてくれるかのようなところがすごく好きです。杉本:チームの雰囲気、ベンチのムードが良いところと、そこから生まれる爆発力が強みだと思います。

Q. この夏はこういう夏にしたい!という意気込みを教えてください

河野:支えてくださったすべての人を甲子園まで連れて行って全国制覇します!杉本:自分たちが自信を持って「やりきった」と言えるような準備をして、目標である全国制覇を達成します!

河野選手、杉本選手、ありがとうございました!

マネージャー特製おにぎり(華陵)「その他大勢」はチームにはいない!

  ここからは永井 勇介部長先生にお話を伺いました。

Q. 新チームが始まってからどんなチームを作り上げてきましたか?またこのチームの強みも教えてください。

  華陵高校野球部の伝統である「愛される野球部」を継承して、野球に限らずあらゆることに真摯に前向きに取り組める組織、個人を目指すことを第一目標としました。「チーム」や「野球部」、「華陵高校」という組織、集団の中には、必ず自分が果たすべき役割があります。「その他大勢」というポジションはありません。では、自分がこの組織で何をするべきなのかを考え、実践することが求められます。その過程でこそ、選手としても人間としても成長できると考えています。

 このことは野球から離れても大切なことであり、生涯を通じて持ち合わせておくべき感覚ではないでしょうか。このような “グラウンド外での人間的な成長がグラウンドでの選手としての成長につながる”という自覚を選手一人ひとりが持てるようになったことが、秋の中国大会出場(9年ぶり)、ベスト8進出という形で成果として現れたのだと思います。

 チームの運営は基本的に選手主体です。例えば日々の練習メニューやテーマは選手が立案し、指導者側との意思疎通をしながら決めていますし、試合でも1試合ごとにテーマを決め、結果よりも準備や取組に重点を置きます。ミーティングも選手主導で、選手同士で相互に指摘、評価し合うスタイルが定着しています。

 これまでの勝ちパターンを見ても、思い切りの良さ、試合の流れをつかんで勢いに乗ることが得意なチームと言えます。昨秋の大会でも、選手が結果にとらわれることなくのびのびと楽しみながらプレーした結果、勝ち進むことができました。夏の大会では、そのような「らしさ」を活かした戦い方ができるよう、最良の準備をして臨みたいですし、指導者である我々も、彼らの持ち味が出せるような雰囲気を作ってあげたいと思います。

Q. 夏に向けて3年生と部員たちにメッセージをお願いします!

 特別なことをしようと思うのではなく、これまで自分たちが取り組んできたこと、準備してきたことを残さず出し切ってほしいです。

 昨秋の成績は決して偶然ではなく、やるべきことに、やるべきときに、手を抜かず取り組んだ結果であり、そしてそういった取組を重ねてきたことこそが、このチームの最も強力な武器だと思います。これまでどおり、準備と過程を大切にするとともに、そうした取組を重ねていることに自信を持って臨んでもらいたいです。

永井先生、そして華陵野球部の皆様、ありがとうございました!

今年も大好評!【僕らの熱い夏 特設ページ】各チームのページ下部にあるフォトギャラリーもお見逃しなく!