警視庁の発表をもとに本誌作成。’16年の東京都における「架空請求詐欺」の年代別・男女別の認知件数を表す。若者からお年寄りまで男女問わず全世代で被害に遭っていることがわかる

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 パソコンやスマホの利用者が増えるにつれ、インターネットと紐づいた詐欺も裾野を広げている。例えば、使ってもいない有料サイトの利用料などを名目にお金を巻き上げる架空請求詐欺は、20代以下から80代以上まで、幅広い年代で被害が発生。家族みんな、被害に遭ってもおかしくないのが現状だ。

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 ITジャーナリストの三上洋さんは、「かつては被害者のメインは若者でしたが、中高年にも拡大。特に、初めてネットを使う、初めてスマホを持つというネット弱者が騙されやすい」と指摘する。偽のメールやウェブサイトで引っかけて、多額な料金の支払いを求めるのが主な手口という。

「ここ数年、コンビニなどで電子マネーを買わせるケースも多発しています。手渡しや銀行振り込みよりも、検挙される可能性が低いためです」(三上さん、以下同)

 電子マネーには、コンビニや量販店で販売されているカードタイプと、コンビニのマルチメディア端末で販売されているシートタイプとがあり、1500円から5万円分の使い切りのものが主流となっている。

「額面価格の範囲内で、商品の購入やサービス提供を受けることができますが、カードに記載された番号さえあれば、誰でも、どこからでも使用できます。そのため、犯人は巧みに番号を聞き出そうとしてきます」

ワンクリック詐欺の被害者が続出

「ワンクリック詐欺」の被害も後を絶たない。ウェブサイト上に記載されているURLをクリックすると、「ご入会ありがとうございました」などの画面が表示され、一方的に契約したことにされるという手口だ。

「以前はアダルトサイトで多かったのですが、最近は普通のサイトの広告や動画再生ボタンをクリックするといきなり……というパターンも増えてきています」

 手口は、なかなか巧妙。

「1回クリックしても反応しない。あれ? と思ってもう1度試しても何も起こらない。3回目で“契約ありがとうございました”と表示が出る。実は、画面の下のほうに目立たないような小さな字で、3回クリックしたら入会になる旨が規約として書いてあるんです」

 えっ! じゃあ、気づかなかったこちらに過失が?

「いくら規約に書いてあっても、誤解を与えるような契約は無効なので、基本的に無視していい。間違っても、焦って画面に出てきた“誤ってクリックしてしまった方はこちら”“キャンセルしたい場合はこちら”と書かれている電話番号にかけてはいけません。かけると“あなたの電話番号がブラックリストに載ってしまう”“訴訟を起こす”などと脅されます」

 詐欺師の目的は、電話をかけさせ、個人情報を奪ったり、お金を巻き上げたりすることにあるのだ。

「架空請求がメールなどで届く場合も同様です。放置して大丈夫。いずれメールは来なくなります」

被害者につけ込む「相談詐欺」

 失意の被害者につけ込んで、二重に騙す「相談詐欺」をはたらく輩(やから)もいる。

「詐欺に引っかかったと気づき、対処法や相談先をネットで検索すると、“請求トラブル解決します”などと謳(うた)う法律事務所や探偵事務所の広告が表示されます。この中に、悪徳業者が潜んでいるんです」

 そもそもこうした被害に「解決」なんてありえない。

「住所も名前もわからない詐欺師との交渉が成り立つわけもなく、したがって解決の見込みなどまずない。うっかり相談してしまうと、成果もないのに、相談料や調査料などの名のもとにお金をとられる二次被害に泣くハメになることも」

有名企業をかたる「偽メール詐欺」

 KDDIなどの大手キャリアやDMMなどの有名動画サイト、さらには公的機関をかたる偽メール詐欺も横行しているという。

「内容は緊急速報、宅配便や郵便局の配達通知など。例えば“荷物を預かっています。問い合わせはコチラ”なんて書かれていると思わず信じてしまいそうですが、そこに記載されているURLをクリックしては絶対にダメ。偽サイト上で個人情報を入力させられたり、最悪の場合はウイルス感染させられて、スマホやパソコン上から銀行口座へ振り込める『インターネットバンキング』伝いにお金を盗まれることもあります。記載されているURLではなく、企業本体のホームページからアクセスしてみることをおすすめします」

昨年から急増の「サポート詐欺」

 ネット弱者を狙い撃ちするかのように昨年から目立って増えているのが、パソコンなどの「サポート詐欺」。

「パソコンを使っていると突然、ビーッと警告音が鳴って、“ウインドウズセキュリティーシステムによって壊れていることがわかりました”というような画面が表示されます。そして、そこにサポートセンターの電話番号が出てきます」

 つながる先はもちろん、偽のサポートセンターだ。

「もっともらしくパソコンを遠隔操作し、年数万円ほどのサポート料金を請求されます。その過程で個人情報が相手に渡るリスクも……」

「ショッピング詐欺」もより巧妙に

 ネット通販で買い物をして、代金を入金したのに商品が届かない類の「ショッピング詐欺」も手口が巧妙化。今年4月以降、多発中なのが大手ネット通販『Amazon』での詐欺だ。

「Amazonには、Amazon本体が売っているものと、『マーケットプレイス』と呼ばれる第三者の企業や個人が出店しているものと2種類あるんです。危ないのは後者。詐欺師に企業や個人のアカウントが乗っ取られ、偽の出品がなされるのです。入金される銀行口座だけを詐欺師が用意したものに変更し、お金を盗み取ります」

 だが、これには救済策が。商品不着のとき、Amazonに申請すれば、30万円以内ならお金が戻ってくる。

 一方、激安販売などを謳うショッピングサイトで引っかかった場合、商品が届かないか、偽物が届くかでお金が戻る見込みはまずない。サイトの画面は大手サイトを模したものもあるから要注意だという。

「要は、ネットで安く買おうと思わないことです。新品は基本的には値段が横並び。異常な割引率は疑って」

 ほかに怪しいショッピングサイトを見抜く方法は、以下を参考にしてほしい。

【こんなショッピングサイトに要注意】
1 正規の新品価格に比べて明らかに安すぎる
2 会社情報に電話番号の記載がない
3 利用規約やメールの日本語に違和感がある
4 銀行振り込みでの支払いを求められる
5 振込先が企業名でなく個人名や外国人名

「アカウントが乗っ取られる原因として、個人情報やパスワードの管理が甘すぎる人が多いです。パスワードは10ケタ以上の英数字を組み合わせ、2か所以上で使い回さないこと。パソコンは有料のウイルス対策ソフトを入れると安心です」

 魑魅魍魎(ちみもうりょう)が潜むネット社会、どんなに自衛してもしすぎることはないのだ。

<教えてくれたひと>
三上洋さん◎ITジャーナリスト。セキュリティー(詐欺、ネット事件などへの安全対策)などを専門とし読売オンライン「サイバー護身術」での連載ほかテレビ出演多数