「日本人は未来に対する思考が停止している」 成功者が実践している「帝王學」の本質

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この世の成功者たちだけが知っている学問がある。
それは「帝王學」という名で知られている。

「帝王學」というと、名門の一族のみ継承される、人を支配するための「門外不出の教え」というイメージを持つだろう。
では、この学問を一般人が身につけることはできないのだろうか?

環境ジャーナリストとしても活動している信和義塾大學校塾長の中野博氏が執筆した『成功者はなぜ、帝王學を学ぶのか』(現代書林刊)は、実は「帝王學」のエッセンスを学べる一冊である。

なぜ中野氏は成功者たちのみが知る学問を熟知しているのか? そしてその中身とは一体なんなのか? お話をうかがった。

(新刊JP編集部)

■「日本人は未来に対する思考が停止している」

――まずは中野さんと「帝王學」の出会いからお話をうかがいたいです。

中野:「帝王學」のエッセンスと出会ったのは7年前です。私の出版記念パーティーに参加されていた方から、四書五経や易経などについて聞いたのがきっかけでした。

「帝王學」の基盤を成すものの一つがそうした中国思想です。「ぜひ触れてみて下さい」というアドバイスを受け、自分なりに勉強をはじめ、1年ほどさまざまな講座に足を運んで話を聞くなかで、これは人生のテーマになりそうだと直感しました。

――「帝王學」のどの部分にその直感を覚えたのでしょうか?

中野:当時から海外で仕事することが多く、特にアメリカにいる時間が多かったんですね。そこで見てきたことが「帝王學」と結びついたんです。

アメリカではAIを中心にしたビジネスが本格化していて、様々なビジネスがAIにとってかわるような状況にあります。そうなると遅かれ早かれ日本も呑み込まれるでしょう。また、中国を筆頭にアジア各国も日本を追い抜こう必死です。

そうなってしまってからでは遅いわけで、変化する世界に追従するのではなく、自分たちが未来を作るための種を撒かないといけない。

日本は世界で戦える武器を持っています。日本らしい戦い方、企業経営があるはずで、日本ブランドを活かした世界での戦い方を身につけるべきだと考えて、6年半前から「帝王學」の講座を主宰し、現在は、「帝王學実践講座」として開催しています。

――今回の書籍はそのセミナーを元にして作られた本なんですね。

中野:そうです。この本はQ&A形式で進んでいきます。新しく開催する講座もそう。問題を解決するために自分なりに考える。これは日本人が苦手としていることです。

――ここまでのお話で2つ質問があります。まずは、「日本らしい戦い方」のお話で、それはどのような戦い方なのでしょうか。

中野:実は日本らしさを全面に出した商品はアメリカでも広く受け入れられています。街を歩けばいたるところに寿司屋があります。また、うどんやラーメンなんかは繁盛店になっています。もちろん、向こうで受け入れられるよう、アレンジしないといけないものもありますけどね。

問題なのはこうしたビジネスを展開しているのが、日本人ではなく中国人や韓国人など外国人ということです。彼らが寿司屋をしたり、うどん屋を経営している。日本人は自分たちの文化に対して鈍感なんです。

アメリカで今、大ブレイクしているものの一つにマインドフルネスがあります。つまり、坐禅や瞑想です。AppleやGoogleといった世界最高峰の企業が取り入れていますが、そのきっかけはスティーブ・ジョブズが禅師の鈴木大拙に影響を受けたことでした。

西洋人はそのマインドフルネスを商品化していますが、これを目の当たりにして私は「もったいない」と思ったんです。

――基本的には自分たちにとって異質なものの方が、ビジネスにしやすい気がします。日常的に定着しているものが海外でお金に変わるというイメージはわきにくいのではないでしょうか。

中野:それはあると思いますね。値付けを見てみても、日本人ならラーメンは一杯600円前後くらいのイメージですが、海外だとかなり高いじゃないですか。こうした値付けは日本人にはできないですし、外国人がジャパンブランドを作ってくれているということにもつながります。

――もう一つの質問です。「帝王學」についてお聞きしたいのですが、中野さんの「帝王學」のイメージについて教えていただけますか?

中野:「帝王學」は人を救い、社会をより良くする学問です。皆がこの学問を学べば、日本は心までも美しい国になると思いますよ。

――「帝王學」というと、名門一族に受け継がれている門外不出の学問というイメージです。

中野:そうだと思います。「帝王學」は学問のベースである哲学です。抽象概念に対してどれだけ考えを張り巡らせて、未来をみつめるか。また、歴史学の側面もあり、過去に学び、未来を考えるという学問といえます。

未来を考えることに、はっきりとした答えはありません。自分自身に質問をしながら、自分で考えないといけないものです。この本ではそのための思考力を鍛える設問を用意しています。

アメリカから帰ると、日本人は未来に対する思考が停止しているように思えるんですね。そういった状況を変えるには、20代から30代の伸び代のある若い層に思考の癖を身につけてもらうことが一番早いんです。彼らはITにも馴染んでいるし、習慣と思考の癖を身につければ、極端な話、シリコンバレーにいる連中と同じレベルになれますよ。

(後編へ続く)

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