大宮アルディージャが、リーグ戦9試合目で初勝利をあげた。4月30日に行なわれた浦和レッズとの“さいたまダービー”で、1対0の勝利をつかんだ。

 NACK5スタジアム大宮を舞台とした一戦は、大宮のホームゲームである。ただ、ボールを握ったのは浦和なのだ。

 渋谷洋樹監督が率いる大宮は、いつもの4−4−2ではなく5−3−2のようなシステムで臨んだ。ボランチの金澤慎が2シャドーの一角をケアし、しばしば最終ラインと並ぶようなポジションをとった。付け加えれば、「3」の右サイドにはボランチを定位置とする茨田陽生を起用した。つまりは、守備に軸足を置いたゲームプランである。

 後半開始からは、「3の左」もボランチの選手となった。とにかく失点をしないことを念頭に置いた選手起用で、63分に茨田が先制ゴールをマークする。ゲームの最終盤にはFWを下げてCBを送り込み、守備を厚く手当てした。そうやってつかんだのが、今シーズンの公式戦初勝利だった。

 試合後の渋谷監督は、「レッズさんの攻撃力を考えたうえでの対応」と説明した。勝利をつかむための対処としては、きわめて現実的なものだった。

 大型連休に伴って、この時期はゲームが立て込む。課題を修正する時間がないままに次のゲームを迎え、黒星が並ぶことはどのチームも避けたい。ましてや大宮は、ここまで勝点1しかあげられずに最下位に甘んじている。前節のガンバ大阪戦で0対6の大敗を喫していたことも、渋谷監督の決断を後押ししたのかもしれない。

 シーズン開幕からおよそ2か月を経てつかんだ白星は、チームをプレッシャーから解放するはずだ。浮上へのきっかけとなりうる。指揮官が用意したゲームプランに、選手たちは最高レベルのハードワークで応えた。

 角度を変えて考えると、次の試合が難しくなったと考えることができる。

 浦和戦の戦略と人選を継続すれば、どんな相手と対戦しても大崩れしないだろう。堅実に勝点を拾っていける。

 一方で、キャンプから取り組んできたサッカーとはかけ離れてしまう。自分たちがボールを保持するサッカーで、大宮は17年シーズンに臨んできた。

 対戦相手に応じて戦い方を変えることは、必ずしも否定されるものではない。

 ただ、結果が伴ってこないと、立ち返る場所を見失うリスクをはらむ。「柔軟性」を大義とした戦いが、「軸ブレ」と受け止められかねないものだ。

 ルヴァンカップを挟んだ5月6日のリーグ戦で、大宮はコンサドーレ札幌とアウェイで戦う。4月26日のルヴァンカップでは、両チームともにリーグ戦からメンバーを変えて1対1で引き分けている。

 ここまで2勝3分4敗で15位の札幌は、最下位の大宮にとって勝利したい相手である。同時に、自分たちの良さを発揮したうえで勝ちたい相手とも言える。

 さて、渋谷監督はどのような決断を下すのか。この試合の戦略と結果は、大宮の今シーズンを左右するものになるかもしれない。