「仕事しろ」と言われ父親刺した41歳の息子 無職の中年めぐる殺傷事件相次ぐ
仕事しないと叱った父親(75)を包丁で刺して死亡させたとして、神奈川県藤沢市在住の無職の男(41)が県警に逮捕された。いま、無職の中年をめぐる殺傷事件が相次いでいる。
「日ごろから仕事をするよう言われて恨んでおり、いなくなればいいと思った」。新聞各紙によると、逮捕された容疑者は、県警の調べに対し、こう供述したという。
行政への引きこもり相談は40代が最多
男は、母親(77)も含めて3人暮らしで、2017年4月3日夕、居間でテレビを見ていた父親の背中を包丁で1回刺したとして、殺人未遂の疑いで翌4日に緊急逮捕された。このとき、母親は入浴中だった。
父親は、藤沢市内の病院に搬送されたが、死亡が確認された。藤沢北署では、殺人の疑いに切り替えて捜査している。自宅近くの警察署に自首した男は、包丁は2年ほど前に購入し、いずれ刺そうと思ったとも供述しているという。男は、生活保護を受けておらず、父親の年金などで暮らしていたらしい。
最近、職のない中年が親を刺すなどする悲惨な事件が、度々報じられている。
熊本市内では3月末、無職の男(37)が父親(68)を刺したとして殺人未遂の現行犯で逮捕された。逆に、親が刺すなどする事件も多く、秋田市内で4月5日、父親(70)が40代の息子を刺したとして同じ現行犯で逮捕されている。
今回逮捕された男については、就職活動もしない引きこもりかどうかは不明だが、40代以上で引きこもるケースは社会問題になっている。
「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」が17年1月22日に報告したところによると、行政への引きこもり相談は、40代が最も多かった。また、40代以上の61人の家族らに聞き取り調査を行った結果、引きこもりの平均は22年に及び、その半数が行政などの支援も途絶えていた。家庭内暴力も15人が挙げていた。
「資格や経験がないと、仕事の幅が狭まる」
引きこもりの人も含めて、40代の仕事探し状況は、いったいどうなっているのだろうか。
ハローワーク藤沢の業務次長は、J-CASTニュースの4月5日の取材に対し、次のように話す。
「仕事の相談に来られるのは、40代以上の人が3分の2を占めています。それ以下の人は、ネット上の求人情報などを活用されており、登録数は少ないですね。高齢になると、ハローワークを頼る傾向があるのだと思います。企業は求人で年齢指定できないことになっていますので、そのほとんどが『年齢不問』となっています。ですが、資格や経験を指定してきますので、そうしたものがないと、応募の枠は必然的に狭くなります」
引きこもりの人については、こう言う。
「長期の失業者は仕事を得るのが難しく、相談してきたり実際に就職できたりするのは非常にまれですね。外出していないと、生活のリズムができていないので、朝起きられないということにもなってきます」
藤沢市の地域包括ケアシステム推進室では、「親が行政などに相談してきたり、引きこもりの家族会に入ったりすれば、就職などの支援に結びつきます。しかし、そういうところにつながっていなければ、支援を届けるのが難しくなってしまうと思います」と話す。
今回の事件については、ニュースのコメント欄などで、「悲しいな氷河期世代」「40過ぎて職歴無しとかだったら、どうしようもない」といった声のほか、「この歳になって逆ギレとは幼稚すぎる」という指摘も出ている。