トートバッグに本を詰め込んで。ニューヨークの“伝説の書店”をレポート

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「書店の個性」というものを、これほど感じさせられた経験は今までにない。

3月15日から22日までアメリカのニューヨークへ旅行をしてきた。その前々日にアメリカ北東部を嵐が襲い、大雪に覆われたニューヨークだったが、滞在している期間は穏やかな春の日差しが降り注ぎ、積もった雪も日を追うごとに消えていった。

その旅行中、1日かけてニューヨーク(主にマンハッタン)の書店を数軒をまわった。たかが数軒なのかもしれないが、それだけでも感じられるものは多かったのでレポートをしたい。

今回は「ニューヨークの伝説の書店」――STRAND BOOKSTOREについて触れよう。

■本だらけ、雑貨だらけのニューヨーク伝説の書店「STRAND BOOKSTORE」

アメリカの書店のトートバッグはイカしている。本の話ではない。トートバッグだ。

ユニオンスクエアのすぐ近くにある、ニューヨークを代表する書店といえば「STRAND BOOKSTORE」である。



新品も古書、どちらも扱う店内はとにかく雑多という印象を受ける。地下1階から3階まで商品でギッシリ。もちろんメインは本である。





店の外ではワゴンセール。1冊1ドルとのこと。そのワゴンにもしっかりと「STRAND」のロゴがついている。



スタッフによるおススメ書籍の棚では、手書きのメッセージとともになんと書店員の顔写真も貼り付けている。



この「STRAND BOOKSTORE」で売っているものは本だけではない。それはバッグであったり、Tシャツであったり、雑貨であったりというものだ。マグネット、ポーチ、トートバッグ、缶バッジなどなど…。

「STRAND」という印象的なロゴを使っているものだけではなく、「F**K」という言葉が見えるものも多い。

雑貨を売っている本屋といえば、日本なら「ヴィレッジヴァンガード」を思い出すかもしれないが、そこと比較をするとSTRAND BOOKSTOREで扱っている雑貨の範囲は狭い。本と関係を感じさせるものが売られているのだ。





レコードの扱いもあった。中古である。音楽と本は合うのかも知れない。というのは前回にも書いたことだが、また別の機会に改めて書きたいテーマである。

■本と雑貨。「STRAND」というファッションがあらわれる空間

「ニューヨークの隠れた名物スポット」として知られるSTRAND BOOKSTOREは、1927年に設立された。現在は4フロアに250万冊が並んでいる。確かに奥に行けば行くほど本がズラリと並び、迷いそうになるほどであった。

余談だが、スティーリー・ダンの楽曲「What A Shame About Me」にも、その名が出てくる。

この店の雰囲気は、他の書店には存在しない絶対的なものである。どこかカウンター的な感じを漂わせつつ、本を読むことに対する敷居を下げる。STRANDのロゴ入りのトートバッグに本を詰め込みたくなる。それが一つのファッションになるのだ。

「18 miles of books」がこのSTRAND BOOK STOREのキャッチコピーである。もともとは「8miles of books」だったが、店の拡張により「18miles」になったという。その具体的な意味は調査中だが、「そのくらい本がある」という意味なのだろうか?



タイムズスクエアの前を通ると、STRAND BOOKSTOREのキオスクがお土産を売っていた。トートバッグにポストカードなど。観光客も興味津々である。

■本以外のものが売られる専門書店

ニューヨークの書店をまわってきて出てきた結論の一つとしては、本が文化の担い手である以上、書店が「本だけを売る空間」であるべき理由は全くないということである。

次回以降に紹介しようと考えている書店の中には専門書店もあるが、専門書店であればあるほど、専門にしている分野の商品を置く。

例えばSTRANDからほど近い場所にある「Namaste bookshop」は、インド系住民向けの書店なのだが、中ではお香やパワーストーンをはじめとして、仏教関係のものが多数置かれているのである。小さな店舗だが非常にインパクトがある空間が広がっていた。



多様性の街ともいえるニューヨークならではの光景なのかもしれない。
しかし、STRAND BOOKSTOREをはじめとした、本が中心となって、そこに集まる客のニーズを満たす本以外の商品が置かれる空間の作り方は、何か参考になる部分があるだろう。

(新刊JP編集部/金井元貴)

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