快速といえば普通列車より速いのが当たり前だが…(写真:IK / PIXTA)

快速は、各駅停車よりも速い。

鉄道ファンではなくとも、鉄道を利用する方なら誰でも知っている当たり前のことだ。

ところが、全国には普通よりも遅い快速や、途中の駅で普通に追いつかれてしまうという、快速の名前が台無しの列車が走っている。

そこで、時刻表で見つけた、快速という肩書きにもかかわらず普通に追いつかれたり、所要時間が普通よりかかったりする「残念快速」を紹介する。

なお、時刻は2017年1月現在のものである。


一度追い越した列車に追いつかれ……

首都圏を走るJR東日本の高崎線。ここに残念快速が走っている。上野19時23分発の快速「アーバン」前橋行きだ。土休日に運転されるこの快速は、鴻巣で前を走る普通高崎行きを追い越し、前橋の手前の高崎に20時57分に到着する。

が、高崎の出発時刻は21時15分。時間調整のため18分も停車する。その間に、高崎発前橋経由、桐生行きの普通が先に出発。さらに、鴻巣で追い越した普通に追いつかれてしまう。

この快速は熊谷から先は各駅に停車するので、高崎に到着した際「この列車は21時15分に発車します。前橋へお急ぎの方は、21時7分に発車する、桐生行きの列車にご乗車ください」と、快速であることを隠して、車内アナウンスをするのだろうが……普通列車に先をゆずり、さらに追い抜いたはずの普通列車に追いつかれる、高崎での18分間は快速としては屈辱の時間だ。


普通に追いつけず、後続にも追いつかれる


高崎方面から上野方面に向かう高崎線にも残念快速が走っている。前橋18時56分発の上野行きだ。平日は通勤快速、土休日は快速アーバンとして運転されるこの列車は、高崎に19時11分に到着する。

高崎を出発するのは19時34分。23分の停車中に19時16分(土休日は19時15分)発の、大宮まで各駅に停車する湘南新宿ラインの国府津行きに先を行かれ、この列車に追いつくことができない。さらに、前橋をこの快速の17分後に出発した普通列車が19時27分に到着。先ほど紹介した上野発前橋行きの快速同様、高崎駅で屈辱を味わうのだ。

前橋発の快速は、熊谷まで各駅に停車して、そこから行田や北本などを通過する。となると、高崎に到着した後の車内アナウンスはどうなるのであろうか。「この列車は快速です。赤羽までお急ぎの方は、各駅に停車する湘南新宿ラインの国府津行きにお乗り換えください」と言うと、利用者は混乱しそうだが……。


「残念」なのは理由がある

時刻表を見るかぎり、高崎線の残念快速は、下りの場合、高崎→桐生間の運転間隔が広がらないよう、高崎発桐生行きの普通列車を先行させていると思われる。

また、上りの場合も前橋18時56発の残念快速がないと、18時34分の列車のあとが19時13分と、前橋発の列車が39分も開いてしまうことから、間に入れたのだろう。ならば、快速を高崎発着にして、ほかの列車を前橋発着に変更した方がいいと思うのだが、そこは、車両の運用面での事情があるのだろう。

JR四国にも同じような残念快速がある。高松を18時1分に出る快速「サンポート」琴平行きだ。この快速は途中の鴨川で先を走る普通列車を追い越す。だが、多度津で10分停車する間に、19分前に鴨川で追い越した普通列車に追いつかれてしまうのだ。

こちらは、多度津-琴平間が単線区間のため、金蔵寺で反対方向の特急、善通寺で普通列車と行き違いをする関係で、多度津で時間調整。結果、普通列車に追いつかれてしまった、というダイヤのようだ。


主要都市間を直結!でも…


東北地方を走る残念快速は、青森県・青い森鉄道とJR東日本の大湊線を直通する、青森15時54分発の快速「しもきた」大湊行きだ。この列車は、途中駅の野辺地に16時32分に到着し、17時2分に出発する。この30分の停車の間に、青森を16時7分に出発した普通列車に追いつかれる。

時刻表によると、この残念快速は青森から野辺地までが快速「しもきた」で、野辺地から先が普通列車になるとのことなので、先ほど挙げた快速ほど残念ではない。だが、青森県の県庁所在地青森市と、下北半島最大の街むつ市、この2つの市を乗り換えなしで結ぶ1日1本の快速が、途中で普通列車に追いつかれてしまうというのは、なかなかの残念ぶりだ。

大湊線で列車の行き違いが出来るのは陸奥横浜だけ。臨時列車の「リゾートあすなろ下北4号」(大湊16時00分発・野辺地16時54分着)を運転する日の行き違いの関係で、野辺地に30分停車するようだ。ならば、青森を16時20分頃に出発してもいいと思うのだが……。


札幌近郊は残念快速の宝庫だった!

小樽付近を走るJR北海道の区間快速(写真:ニングル / PIXTA)

JR北海道は、札幌近郊に残念快速をたくさん発見。小樽を11時40分に出発する区間快速「いしかりライナー」江別行きは、途中駅の手稲を12時9分に発車し、12時19分に札幌に到着。ここで27分停車して、苗穂発12時49分、白石発12時53分、終着の江別に到着するのは13時10分だ。

この区間快速が札幌で長い間停車する間に、手稲を12時23分に出発する普通列車千歳行きに追い越される。千歳行きは白石12時49分発。手稲から白石へ向かう場合、12時9分の区間快速に乗るより、14分後に出発する普通列車に乗った方が4分早いのだ。

ほかにも、札幌で長時間停車中に普通列車に追い越される区間快速を6本も発見。JR北海道は残念快速の宝庫だった。

札幌近郊を走る列車は、新千歳空港と小樽を結ぶ快速「エアポート」も、多くの列車が札幌で6分停車するなど、札幌で長時間停車する列車が多い。札幌での利用者の乗降に時間がかかり、それを踏まえたダイヤを作った結果、このような列車が誕生したのだろう。


普通より遅い「所要時間が残念な快速」は


普通列車に追いつかれるという残念なことはないが、前後を走る普通列車より時間がかかるという残念なパターンもある。富山県のあいの風とやま鉄道の泊を9時24分に出発、新潟県のえちごトキめき鉄道の直江津に10時41分に到着する快速がこのパターンだ。

この快速は糸魚川で15分停車するため、泊から直江津までの所要時間が1時間17分となっている。この快速の前を走る普通列車の所要時間は1時間16分。後を走る普通列車は1時間11分と、いずれも快速より速い。泊を出る時間を遅くすると、糸魚川で東京行きの北陸新幹線に乗り継ぐ時間が少なくなることから、このようなダイヤになったのだろう。

JR四国で発見したのは、予讃線の観音寺を18時18分に出発する快速「サンポート」高松行き。本山と高瀬で列車交換のために数分停車、多度津で特急「南風24号・しまんと6号」に追い越されるため5分停車と、途中駅での停車時間が長いため、高松到着は19時35分となっている。この快速の24分後に観音寺を出る普通列車は、列車交換の時間などがスムーズなため、高松到着時刻は快速の16分後の19時51分。快速よりも所要時間が8分も短い。


「残念感」を味わうなら今のうち?

ほかにも、青森県・青い森鉄道には、途中の野辺地で10分停車するため、後続の普通列車より所要時間が1分多くかかる八戸5時43分発の快速青森行きや、西武鉄道の池袋線には、快速ではないが、日中の時間帯に普通列車より所要時間のかかる、池袋発飯能行きの残念準急が運転されている。

3月4日に行われるJRグループのダイヤ改正では、東京と千葉県の館山を結ぶ特別快速や、新潟と糸魚川を結ぶ快速の廃止が決定している。ここで挙げた残念快速たちも、もしかしたら、3月の改正でなくなってしまう可能性があるので、残念感を味わいたい方は、お早めに乗車を。


全国を走る「残念快速」は…



著者
渡辺 雅史 :時刻表探検家

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