植田圭輔が語る、俳優生活10年と新たな年の幕開け――原点回帰と迫りくる変化の波
年の瀬の12月中旬。この日、舞台『剣豪将軍義輝〜戦国に輝く清爽の星〜』(前編)が千秋楽を迎えたが、終演後、その余韻に浸る間もなく、植田圭輔はメイクもそのままに取材現場に駆けつけた。月イチ以上のペースで稽古と公演を繰り返し、2016年に出演した作品数は、舞台だけで14本! 目の奥に、先刻まで舞台上で戦国の世を生きていた興奮をほんの少し宿しつつ、「この状況が不思議と苦じゃないんですよ」と笑う。そして「ようやく1年が終わって、また1月が来て、リセットされるような気持ちですね」とも。植田圭輔の新たな1年が主演ミュージカル「しゃばけ」とともに幕を開ける!
撮影/祭貴義道 ヘアメイク/小田昌弘 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.
――ミュージカル「しゃばけ」の原作は、シリーズ累計で720万部を誇る、畠中 恵氏による江戸時代を舞台にしたファンタジー小説ですね。まず、ビジュアルに関してですが、月代(さかやき/額から頭の中ほどにかけて髪の毛を青く剃った部分)&ちょんまげに初めて挑戦されるとか?
そうなんです。先日、ビジュアル撮影があったんですけど、いかんせん初めての体験で(笑)。これは、最近僕が出演する作品を観ている方々にも新年早々、驚いてもらえるんじゃないかと思います!
――お写真で見る限り、かなりお似合いですね!
最初は、前髪が剃り上げられている状態の自分がまったく想像できなかったし、かつら合わせの段階でも、細かくは決まっていなかったんです。僕は、原作のイラストのビジュアルをできる限り踏襲したいと思っていたんですが、撮影現場ではスタッフの皆さんが「想像以上に似合う!」と。僕自身の感想も「イケるじゃん!」ですね(笑)。
――植田さんが演じるのは、江戸の大店・長崎屋のひとり息子の一太郎。通称“若だんな”。妖(あやかし)たちの助けと持ち前の頭の良さを武器に、難事件を解決していきます。
当時の感覚でいうと妖というのは、決して特別な存在じゃないんですよね。僕はホラー作品が怖くて苦手なんですけど(苦笑)、『しゃばけ』は優しい物語で、愛着を持っていた“もの”が妖になるという設定にも温かさを感じます。
――過去にはTVドラマ、そして舞台にもなっています。
僕も、俳優を始めたばかりの時期にTVドラマを視聴者として見てました。だから「あの『しゃばけ』を自分が!」という気持ちが強いです。しかもドラマで若だんなを演じてたのは、手越祐也さん(NEWS)ですからね。「負けないぞ!」という気持ちもあります。
――若だんなは、体が弱いこともあって、周囲からは甘やかされて育ったお坊ちゃんですね。「長崎屋が一太郎を甘やかすこと、大福餅の上に砂糖をてんこ盛りにして、その上から黒蜜をかけたみたいだ」と言われるほどですが…。
ここ最近、役柄として凛とした男や、ツンでデレな強めの性格を演じることが多かったんです。それが今回、デビュー当時から幾度となく演じてきた、弱々しいタイプの男ということで、自分の中では原点回帰のような感覚がありますね。
――普段の植田さん自身と比べると…。
正反対なんです! 僕は基本的に気が強くて負けず嫌いで、しゃべりもおっとりというよりは、ガンガンいくタイプですから(笑)。
――単なる舞台化ではなくミュージカルというところが、想像がつかない部分でもあり、楽しみでもあります。
「これをどうやってミュージカルに?」って思いますよね(笑)。でも、これまで僕が参加してきた作品は「これをどう舞台化するの?」「ミュージカルでどう表現するの?」って言われるものもありましたが、そういう作品は、より現場が一致団結し、お客さまとも一体化して、面白いものになっていったという経験が多いんですよ。今回もそれを目指したいです!
――すでに音楽も聴かれていらっしゃるんですよね?
すごく優しいメロディで、新年1発目に五感で楽しんでいただくのにふさわしいと思います。ミュージカルだからこそ、歌もお芝居の一部だということをしっかり意識して、歌詞に芝居を乗せていけたらと思っています。
――1月19日の本作の開幕が、2017年の初舞台となりますね。
そうですね。ようやく年が明けて…また1月に戻った! っていう感覚というか(笑)。
――この1〜2年ほど、稽古をして、本番に臨んで、そのあいだに台本が届いて、また稽古が始まって…という目まぐるしい日々の連続かと思います。
よく「身体が心配です」という言葉もいただくんですが、好きなことを仕事にさせていただいてることもあって、不思議と苦じゃないんですよね。これもよく、声を大にして言っていることですが、僕自身「これは絶対無理だ」と思うことはしないようにしてますし。そこで無理して迷惑をかけてはいけないのでね。
――すさまじいハイペースであることは間違いないですが、ご自身ではコントロールできていると?
お客さまに「あの人が稽古のスケジュールを取れなかったせいで、作品全体のクオリティが下がってる」なんて絶対に思われたくないですし。そのギリギリのラインのジャッジは、ずっと二人三脚で歩んできたマネージャーさんと一緒にしっかり考えてます。むしろ、逆境に燃えるタイプなので(笑)。
――これだけ常に求められる俳優になったことについては、ご自身ではどんなふうに捉えてますか?
「何も感じてない」と言うと語弊がありますが…でも、自分が心がけてきたことは、デビューして10年、芯は何も変わってないと思います。良くも悪くも、環境は変わっていくものだし、そこに順応していかなくちゃいけないとは常々思ってますが、その中でまず、何より変わらないのは、いつも舞台を観に来てくださる方々への想いですね。
――ファンの存在があってこそ。
本当にとても大切な存在です。ずっと応援してくださっている方たち、最近僕のことを知り、劇場に足を運んでくださるようになった方たち。いま自分が充実した俳優生活を送れているのは、そういうみなさんの存在があるから。言葉にすると軽いですが、本当に“感謝”という言葉しか浮かんでこないです。
――芝居において、この10年で成長や変化を感じる部分は?
自分の演技自体は作品ごとにいろいろ変わってきた部分はあるでしょうが、作品に対する姿勢という点に関しては、これもずっと変えてこなかったというのが、ひとつの自信になっていると思います。
――変わらずに持ち続けてきたものというのを、具体的に教えていただけますか?
いまでも自分の中に刻まれているのが、最初に出演した舞台で、演技中に脱水症状で一瞬意識を失ってしまったという経験です。
――俳優をやる上での“原体験”になっている?
高校生のときに、ジュノン・スーパーボーイ・コンテストを経てこの世界に入って、何もわからぬままに舞台に立って、決してナメていたわけではないけど、舞台作品に対する意識は低かったと思います。覚悟とか想いを背負うことなく、ただ舞台に立っていたんですよね。
――それが、初めての舞台で鼻をへし折られた?
作品を全うできず、周りに迷惑をかけたことに対して「こんな気持ちじゃダメだ!」って思ったし、その半面、心から「楽しい!」って思えることをやっと見つけたって思いもありました。
――自分のすべてをぶつけられる対象を見つけたんですね?
それまで、ホントに大きな夢も持ってない人間だったんですけど、そのとき「これしかない!」って直感的に思いました。だからこそ、作品に臨むときは決して努力は惜しまない――できないなり、わからないなりに、気持ちだけは誰にも負けないつもりでやってやる! そう思ったし、それはいまでも変わらない部分ですね。
撮影/祭貴義道 ヘアメイク/小田昌弘 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.
月代(さかやき)&ちょんまげに初挑戦!
――ミュージカル「しゃばけ」の原作は、シリーズ累計で720万部を誇る、畠中 恵氏による江戸時代を舞台にしたファンタジー小説ですね。まず、ビジュアルに関してですが、月代(さかやき/額から頭の中ほどにかけて髪の毛を青く剃った部分)&ちょんまげに初めて挑戦されるとか?
そうなんです。先日、ビジュアル撮影があったんですけど、いかんせん初めての体験で(笑)。これは、最近僕が出演する作品を観ている方々にも新年早々、驚いてもらえるんじゃないかと思います!
【#Mしゃばけ】
— CLIE (@clie_seisaku) 2016年12月14日
■一太郎:植田圭輔■
廻船問屋兼薬種問屋、長崎屋の一人息子。心優しく、大変利発。
しかし、ちょっと外に出ただけでコホンと咳をするほど病身で、
仁吉と佐助の二人の手代は、何より若だんなの健康を気にかけている。
だが、若だんなは二人の目を盗んで長崎屋を抜け出し… pic.twitter.com/8sKoYyb4oG
――お写真で見る限り、かなりお似合いですね!
最初は、前髪が剃り上げられている状態の自分がまったく想像できなかったし、かつら合わせの段階でも、細かくは決まっていなかったんです。僕は、原作のイラストのビジュアルをできる限り踏襲したいと思っていたんですが、撮影現場ではスタッフの皆さんが「想像以上に似合う!」と。僕自身の感想も「イケるじゃん!」ですね(笑)。
――植田さんが演じるのは、江戸の大店・長崎屋のひとり息子の一太郎。通称“若だんな”。妖(あやかし)たちの助けと持ち前の頭の良さを武器に、難事件を解決していきます。
当時の感覚でいうと妖というのは、決して特別な存在じゃないんですよね。僕はホラー作品が怖くて苦手なんですけど(苦笑)、『しゃばけ』は優しい物語で、愛着を持っていた“もの”が妖になるという設定にも温かさを感じます。
――過去にはTVドラマ、そして舞台にもなっています。
僕も、俳優を始めたばかりの時期にTVドラマを視聴者として見てました。だから「あの『しゃばけ』を自分が!」という気持ちが強いです。しかもドラマで若だんなを演じてたのは、手越祐也さん(NEWS)ですからね。「負けないぞ!」という気持ちもあります。
――若だんなは、体が弱いこともあって、周囲からは甘やかされて育ったお坊ちゃんですね。「長崎屋が一太郎を甘やかすこと、大福餅の上に砂糖をてんこ盛りにして、その上から黒蜜をかけたみたいだ」と言われるほどですが…。
ここ最近、役柄として凛とした男や、ツンでデレな強めの性格を演じることが多かったんです。それが今回、デビュー当時から幾度となく演じてきた、弱々しいタイプの男ということで、自分の中では原点回帰のような感覚がありますね。
――普段の植田さん自身と比べると…。
正反対なんです! 僕は基本的に気が強くて負けず嫌いで、しゃべりもおっとりというよりは、ガンガンいくタイプですから(笑)。
――単なる舞台化ではなくミュージカルというところが、想像がつかない部分でもあり、楽しみでもあります。
「これをどうやってミュージカルに?」って思いますよね(笑)。でも、これまで僕が参加してきた作品は「これをどう舞台化するの?」「ミュージカルでどう表現するの?」って言われるものもありましたが、そういう作品は、より現場が一致団結し、お客さまとも一体化して、面白いものになっていったという経験が多いんですよ。今回もそれを目指したいです!
――すでに音楽も聴かれていらっしゃるんですよね?
すごく優しいメロディで、新年1発目に五感で楽しんでいただくのにふさわしいと思います。ミュージカルだからこそ、歌もお芝居の一部だということをしっかり意識して、歌詞に芝居を乗せていけたらと思っています。
デビューして10年――変わったことと変わらないこと
――1月19日の本作の開幕が、2017年の初舞台となりますね。
そうですね。ようやく年が明けて…また1月に戻った! っていう感覚というか(笑)。
――この1〜2年ほど、稽古をして、本番に臨んで、そのあいだに台本が届いて、また稽古が始まって…という目まぐるしい日々の連続かと思います。
よく「身体が心配です」という言葉もいただくんですが、好きなことを仕事にさせていただいてることもあって、不思議と苦じゃないんですよね。これもよく、声を大にして言っていることですが、僕自身「これは絶対無理だ」と思うことはしないようにしてますし。そこで無理して迷惑をかけてはいけないのでね。
――すさまじいハイペースであることは間違いないですが、ご自身ではコントロールできていると?
お客さまに「あの人が稽古のスケジュールを取れなかったせいで、作品全体のクオリティが下がってる」なんて絶対に思われたくないですし。そのギリギリのラインのジャッジは、ずっと二人三脚で歩んできたマネージャーさんと一緒にしっかり考えてます。むしろ、逆境に燃えるタイプなので(笑)。
――これだけ常に求められる俳優になったことについては、ご自身ではどんなふうに捉えてますか?
「何も感じてない」と言うと語弊がありますが…でも、自分が心がけてきたことは、デビューして10年、芯は何も変わってないと思います。良くも悪くも、環境は変わっていくものだし、そこに順応していかなくちゃいけないとは常々思ってますが、その中でまず、何より変わらないのは、いつも舞台を観に来てくださる方々への想いですね。
――ファンの存在があってこそ。
本当にとても大切な存在です。ずっと応援してくださっている方たち、最近僕のことを知り、劇場に足を運んでくださるようになった方たち。いま自分が充実した俳優生活を送れているのは、そういうみなさんの存在があるから。言葉にすると軽いですが、本当に“感謝”という言葉しか浮かんでこないです。
――芝居において、この10年で成長や変化を感じる部分は?
自分の演技自体は作品ごとにいろいろ変わってきた部分はあるでしょうが、作品に対する姿勢という点に関しては、これもずっと変えてこなかったというのが、ひとつの自信になっていると思います。
――変わらずに持ち続けてきたものというのを、具体的に教えていただけますか?
いまでも自分の中に刻まれているのが、最初に出演した舞台で、演技中に脱水症状で一瞬意識を失ってしまったという経験です。
――俳優をやる上での“原体験”になっている?
高校生のときに、ジュノン・スーパーボーイ・コンテストを経てこの世界に入って、何もわからぬままに舞台に立って、決してナメていたわけではないけど、舞台作品に対する意識は低かったと思います。覚悟とか想いを背負うことなく、ただ舞台に立っていたんですよね。
――それが、初めての舞台で鼻をへし折られた?
作品を全うできず、周りに迷惑をかけたことに対して「こんな気持ちじゃダメだ!」って思ったし、その半面、心から「楽しい!」って思えることをやっと見つけたって思いもありました。
――自分のすべてをぶつけられる対象を見つけたんですね?
それまで、ホントに大きな夢も持ってない人間だったんですけど、そのとき「これしかない!」って直感的に思いました。だからこそ、作品に臨むときは決して努力は惜しまない――できないなり、わからないなりに、気持ちだけは誰にも負けないつもりでやってやる! そう思ったし、それはいまでも変わらない部分ですね。