「拘束の原因」ISキーホルダーの素性 解放の常岡氏が会見で説明
イラク北部のモスル近郊で現地当局に拘束されていたフリージャーナリストの常岡浩介さん(47)が2016年11月10日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で会見した。
拘束の原因となったのは、過激派組織「イスラム国」(IS)のロゴ入りのキーホルダーだったと説明。これが当局の保安検査で発見されてISの関係者と疑われ、拘束された。常岡さんは、「余りにも間抜けなことで、余りにも迷惑をかけてしまった」などと陳謝する一方、「出来れば現場に復帰したいと願っている」と意欲を見せた。
治安当局の取り調べは「総じて和やかに」
常岡さんはISの拠点、モスルを奪還しようとするクルド自治当局の取材をしようとモスル北部に入っていたが、10月27日から11月7日にかけて当局に拘束された。現地当局のバルザーニ大統領の記者会見を取材しようとしたところ、セキュリティーチェックで問題のキーホルダーが見つかったためだ。常岡さんはIS関係者だと疑われて直後に手錠をかけられ、中心都市のエルビルまで連行されて治安機関「アサイシュ」の取り調べを受けたという。
2日間にわたって行われた取り調べでは、雰囲気が厳しかったのは最初の方だけで、常岡氏さんが過去にISの司令官とコンタクトした際の様子を細かく話すなどして、総じて和やかな雰囲気で進んだという。治安機関としては、常岡さんをある程度重要な情報源だと受け止めていた可能性もありそうだ。
土産物屋で適当に作った?「いまだに確認できていない」
問題となったキーホルダーは、常岡さんが過去にISを取材した際の帰路で
「トルコに入国するタイミングで、ロシア国籍のダゲスタン人の義勇兵と同じバスに乗せられ、彼が別れ際に『あげるよ』と言ってくれたもの」
で、これが果たして「『メイド・イン・イスラム国』なのか」が気になり、「だとすれば資料として重要なのではないか」として、持ち歩いていたという。常岡氏がキーホルダーをテレビ番組で紹介したり、各国での取材でキーホルダーについて尋ねて回ったりする中で、「イスタンブールの土産物屋で売ってたよ」という声もあったが、結局は
「まったくISと関係なく、ISのファンのような人たちのために、土産物屋で適当に作ったものかも知れない。いまだに確認できていない」
と、いまだに「正体不明」のまま。キーホルダーの「現物」も当局に押収されたままだ。
常岡氏は自らの拘束について、
「モスル奪還作戦の真っ最中、しかも大統領会見のセキュリティーチェックで、そのキーホルダーが普通にポケットに入った状態のバッグを、そのままポンと出しちゃったというのは、全く自分の間抜けさ以外の何者でもない。本当に反省している」
と陳謝。当局との折衝にあたった外務省への感謝の言葉も述べた。
クルド自治当局としては、常岡さんがISの関係者だという容疑をめぐる捜査は継続中で、常岡さんを「強制退去処分」にしたという形になっている。捜査で「シロ」という結論が出れば再入域が可能になるといい、常岡さんは
「出来れば現場に復帰したいと願っている」
と話していた。
常岡さん自身はイスラム教徒だが、ISには批判的だ。現地メディア「ルダウ」が、常岡さんがISの通訳を行い、ISから勲章を受けたと報じたことについても、改めて事実関係を否定した。