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●「Pepper for biz 2.0」の多彩な活用事例を紹介
10月4日から7日にかけて幕張メッセで開催された「CEATEC JAPAN 2016」において、ソフトバンク 法人事業戦略本部 首席エヴァンジェリスト 中山五輪男氏は「事例徹底研究!PepperとIBM Watsonの効果的活用法」と題した講演を行った。

冒頭ではソフトバンクの取り組みとして、買収を行ったARMについて語られ、スマートフォンをはじめ、自動車など社会で使われているさまざまなものにARMの技術が組み込まれていることを紹介。今後大きな伸びが期待されるものであることを述べ「AI、IoT、ロボット」という3分野にソフトバンクが今後注力して行くことを説明した。

その中でAIとロボットの分野に属する製品であるPepperの紹介が、この講演の本題だ。前半では企業向けPepperである「Pepper for biz」の現状について、多彩な機能や導入事例について語られた。

すでに多くの企業で導入されているPepperだが、基本機能やさまざまなサービスのアップデートが行われている。新しいPepperとして「Pepper for biz 2.0」というコンセプトを掲げているという。

アップデート内容としては、業務ロボアプリの拡充が行われ、小売・飲食業のサポート、企業や店舗の受付・案内業務のサポート、介護・高齢者向け施設でのサポートなどさまざまなシーンで活躍できる機能が充実したことが紹介された。

店頭での集客や顧客対応のサポートに活用している事例として、ミネラルウォーターの販売を行うウォーターダイレクトの事例と、日産自動車の女性向けに特化したショップの事例が紹介された。また自社用のソリューションを開発した事例としては、プロトコーポレーションの中古車査定「DataLine査定」が紹介された。Pepperと対話する形で自動車の基礎データを回答すると簡単な査定が行われるという機能だ。

ウォーターダイレクトと日産自動車の事例では、Pepperの持つ機能を利用して楽しさの演出や自社サービスの紹介などを行い、短時間で飽きてしまいがちな子供の対応をPepperに任せることで大人としっかり話す時間を確保する、聞き流されてしまいがちな説明をしっかり聞いてもらうというような使い方がされていた。プロトコーポレーションの場合は、Pepperならば警戒心を抱かせずに査定という営業活動の第一歩に踏み込めることを利用しているという。

こうした店頭営業活動などにPepperを利用するにあたって、再来訪者を見分けて応対をカスタマイズするような用途は考えられるが、Pepperは標準で30人までしか顔の記憶識別ができない。これを補助するためにクラウドと連携させて最大1000人の識別を可能にする「SynApps」というソリューションが紹介された。

●Watsonを活用してソフトバンクは「コスト半減・生産性倍」を目指す
Pepperに搭載されている人工知能として「Watson」の紹介された。現在は第3次人工知能ブームだといわれおりWatsonも注目されているが、IBMはWatsonを人工知能とは呼んでいない。人と同じように学び、成長するものとしてコグニティブコンピューティングと呼んでいる。Watsonは人の言葉を認知することが特に得意なシステムだ。

その活用イメージとして、コールセンターでの対応サポート、コンシェルジュ業務の支援、ECサイトでの購買活動支援、熟練者の着眼点や判断基準を取り込んで業務マニュアルとあわせて利用する業務支援、大量テキストをベースにした文書解読支援、顧客ニーズに合う人材を探すマッチングといったものが紹介された。

具体的な事例として、ソフトバンク自身の2つの事例が紹介された。ソフトバンクは現在「Harf & Twice」という目標を掲げている。これは業務工数やコストを半減させながら、生産性や創造性は倍増させようという狙いだ。努力だけでは達成しづらいこの狙いを構築するために利用されているのが、「Softbank Brain」と名付けて開発されているWatsonを活用するシステムだ。

その機能のうち、1つは社員向けの支援を行う「社員サポートセンター」での利用だ。元々社内の問題解決や問い合わせ負担を軽減するために、すべてをワンストップ対応する場として作られた社員サポートセンターだが、利用者が多く負担が増大していた。これをスマートフォンを経由してWatsonを利用することでFAQ的な役割を果たさせ、Watsonが回答できないものだけを担当窓口に割り振るというフローに変更することで、人が対応する件数は90%減少するという。

もう1つの機能は、法人営業への利用だ。こちらは社内のあらゆるシステムと連携して提案をサポートするものとして開発されている。その第一弾が7月から利用が開始された「提案アドバイザー」と「Pepperアドバイザー」だ。「提案アドバイザー」は顧客企業や顧客の状況などを指定して適する提案内容やアプローチ方法などを提案する。「Pepperアドバイザー」はPepperに関する活用情報の提供や提案支援を行うことに特化した機能だ。これを利用することで、経験の浅い営業担当者でも高度な提案が行えるのはもちろん、社内の情報を瞬時に引き出せることによって商談中に新しい商材について質問された時なども即座に対応可能になるという。

両機能ともを中山氏は手持ちのiPhoneから利用するデモンストレーションで紹介。非常に軽快にさまざまな情報が取り出せることや、曖昧な質問から対応策が提案されることなど、Watsonの力が見えるデモンストレーションとなった。

●ロボットが知能に加えて感情を持つ時代へ
次世代のPepperとして、情報・知識・学習を受け持つ人工知能であるWatsonに、ソフトバンクのグループ会社であるCocoro SBの開発する感性・感情・感覚を受け持つ「人工感性知能」を組み合わせたものの開発が進んでいることも紹介された。人間の感情をマッピングしたものをもとに、嬉しい・楽しい・悲しい・悔しいといったポジティブ/ネガティブな感情をロボットが持つようになるという。実験中の事例として「ゲームに負けることを初期は悔しがるが、負け続けるうちに周囲の人が笑うことを理解し、負けたけれど楽しかったと認識する」というようなものも紹介された。

こうした感情認識エンジンはPepperに組み込まれるだけでなく、車やバイクに搭載されるようになるという。ホンダとカワサキとの間で業務提携が行われ、将来的に車が感情もつ製品が登場するだろうとも語られた。

「車やオートバイ、家なども感情を持つことだろう。いろんなものが感情を持つおもしろい世界がやってくる。そのおもしろい世界を人工知能でソフトバンクは作ろうとしている。いろいろなロボットが感情を持つ世界を作ろうとしている」と中山氏はソフトバンクの目指すところを語って講演をしめくくった。

(エースラッシュ)