つくば秀英の好投手・長井良太、延長10回表の勝ち越し打に涙を呑む!

 試合前、スターティングメンバーが発表されて常磐大高打線が9番田崎 瀬南以外、全員が1、2年で占められているのを見てつくば秀英が勝ったと思った。しかし、シートノックが始まって、いやいやわからないぞと考え直した。常磐大高のボール回し、ゴロ処理の動きが非常によかったのだ。

 つくば秀英の先発はストレートが150キロに迫るドラフト候補、長井 良太(3年)。7月8日の初戦、古河二戦では146キロを計測しているので調子は悪くないはずだが、今日は1回から首を傾げた。上半身主導のフォームはステップ幅の狭さが主な原因だが、私の予想よりも狭かった。

 この日のストレートの最速は144キロ。初戦より2キロ遅く、スライダーのコントロールも中盤まで不安定だった。こういう全体的な完成度のなさを見て、2年生7人、1年生1人の常磐大高打線は付け入るスキがあると思ったのだろう。積極的な走塁でこの剛腕を揺さぶりにかかった。

 1回表は1番田崎 誠也(2年)と竹川 大稀(1年)が二盗を企図(竹川が成功)、5回は再び田崎誠が走り成功、6回は石川大悟が三盗を企図、これが捕手の悪送球を誘って生還。10回には無死一、三塁の場面で一塁走者の益子佳大(2年)が走って、二塁方向の打球と交錯するような格好になってこれがセカンドのエラーを誘い、決勝点になった

 一塁に走者を背負ったときのクイックは1.06〜1.12と十分な速さだが、早く投げることに気が行って、ボールに力がなくなる。難攻不落と思った長井のわずかなスキを突いて勝機を見出した常磐大高の作戦勝ちと言っていいだろう。

 常磐大高各打者の中では2番の1年生、竹川がよかった。長井相手に5打数3安打は見事の一言。1回の内野安打のときの一塁到達は4.22秒と速く、その直後の二盗に要したタイムは3.45秒。十分な速さだが、走る前に再三「走るぞ、走るぞ」とバッテリーを揺さぶる偽走を仕掛け、4球目に走ってキャッチャーの悪送球を誘った。3回のレフト前ヒットはキャッチャー寄りで捉えたボールを押し込んでレフト前に運んだ一打で、技術の高さが際立った。

 2回戦で散った剛腕・長井は上半身主導のフォームもあり後半のスタミナ切れが目についた。2点を失った6回はボール球が先行。5回まで73球できたのがこのイニングは31球投げ、2失点。長井の疲れを誘おうとした常磐大高の待球作戦だが、決勝点を奪った10回は一転して好球必打に転じ、2番竹川が初球打ちでレフト前ヒット、3番益子が1ボールからバント安打、4番石川が初球打ちで二塁エラーという形で実を結んだ。このメリハリある攻撃が長井攻略につながった。

(文=小関 順二)

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