早稲田実業vs九州学院vs桐光学園
清宮幸太郎(早稲田実業)
夏の大会もあと1か月を切った。早稲田実業は九州学院と桐光学園と対戦するという、豪華なカードである。早稲田実業は1回表、4点を取られる苦しい立ち上がり。だが、1回裏、5番工藤の3ラン、3回裏には清宮 幸太郎の適時二塁打で2点を返すなどですぐに逆転。だが九州学院も1点を返し、5対4と1点差に迫られるが、しかしこれに黙っていないのが清宮 幸太郎だ。6回裏、逆転となる2ランホームラン。ライナー性でネットを直撃する豪快な2ランだった。
これで高校通算48本塁打目となった。やはり打球1つ1つが鋭い。また芯で捉えるコンタクト能力は改めてずば抜けていると実感する。 清宮は第1打席はインローの変化球を空振り三振に終わったが、第2打席以降は、中越え適時二塁打、右前安打、右越え本塁打と計4打数3安打4打点の大当たりであった。清宮の打撃を振り返ると、どのコースにもしっかりと打ち返せる。先週の佐倉との練習試合でも外角低めのゾーンを打ち返して左中間を破る二塁打を放ったように対応力は格段に良くなっている。高確率でコンタクトできているのは足の上げ方を変えた。そのきっかけは動画サイトで、自身の打撃フォームを何度も見直した。「自分が打っている時と打てていない時と比べると結構バラバラだったので一定の打ち方ができるように心がけました」と語るように足の上げ方はこの春からややすり足気味になった。これでボールが見やすくなったことで、どのコースにもコンタクトできるようになった。まだ調子の波はあるようだが、それでもしっかりと捉えることができているのはさすがといえる。本塁打を見ても、打ち損じをしないという点では同学年の打者と比べてもずば抜けている。
またこの試合では、1回裏に工藤が3ランをはなったように、清宮の後を打つ打者が結果を出した。工藤は昨秋から勝負強い打撃ができる選手だったが、だんだん長打力は増してきており、怖い打者だろう。第2試合は九州学院vs桐光学園の一戦。桐光学園は、9回裏まで4対1でリードしていたが、主砲の村上 宗隆の本塁打から2番手の大河原が崩れ、九州学院が逆転サヨナラ勝ち。
村上はこの試合で大きな犠飛や痛烈な右前安打を放っており、打者としてのモノはやはり桁が違う。攻守の総合力は確かなものがある選手。勝負ところでの一打であったり、そして捕手なので、投手を盛り立てて相手の主軸打者をしっかりと抑える。はしってきた走者を刺すなど、一歩先を行くディフェンス。リードをしていきたい。
第3試合の早稲田実業vs桐光学園の一戦の注目は清宮と桐光学園のサブマリン・中川 颯の対決である。公式戦ではなかなか実現しない対決に、ギャラリーも盛り上がっていた。第1打席、ストレートを捉え、あっという間に左中間を破る適時二塁打で先制。さらに3回裏の第2打席にも滞空時間の長い犠飛を打ち上げ、同点に追いついた。中川はサブマリンのため球速は110キロだ前後なのだが、それでも伸び上がるような軌道は打ち難い。それでもその軌道に合わせてしっかりとショットする清宮のコンタクト能力はずば抜けている。そして見せ場となったのは7回裏だ。
3対3の同点で、第4打席に入った清宮。投手はエースの中川である。中川はインコース低めへストレートを投じた。清宮はこれを救い上げて、ライトスタンドへ飛び込むホームランで勝ち越しに成功。これが通算49号本塁打となった。中川が投じたストレートは厳しい球種だった。清宮がこのコースを打てているのは、ベースからかなり離れて立っているため、インコースが窮屈にならないというのもあるが、左腕を上手く畳んでインサイドアウトで振り抜けるところだ。すくい上げるスイング軌道をする選手は結構ミスショットすることが多い。それを一撃必殺で仕留める清宮はやはり別格。インパクトの瞬間までヘッドが走った高速スイングで滞空時間の長いフライを打ち上げるところはまるで筒香 嘉智を見ているようであった。
この勝ち越し点を早稲田実業バッテリーが守り抜いて、4対3で春の神奈川大会ベスト8の桐光学園に勝利。2試合とも逆転勝利。金子 銀佑主将も、「最近の練習試合では逆転して勝利することが多く、自信になっています」と語るように、春の時と比べるとチームとして粘り強さが出ている。主砲の清宮は本塁打が注目されるが、あくまで「打点の延長」と語るように勝負所で1本を打てるかにこだわっている。
今日は2試合で6打数5安打7打点と驚異的な勝負強さを見せた清宮。見ていて隙が全く無い。このまま調子を上げていけば、去年とは違い、初戦から豪打連発が期待できるのではないだろうか。清宮の長打力、勝負強さを最大限に生かすためには、やはり前を打つ打者の存在。そして清宮を勝負せざるを得ない4番、5番打者の存在が重要になるだろう。今日の2試合見る限り、しっかりと機能している。
夏の大会へ向けて順調に仕上がっている早稲田実業打線。やはりこの夏も脅威の存在になりそうだ。
(文=河嶋 宗一)