意外と知らない「忍者」の素顔
鍛え上げた己の肉体と門外不出の秘術を駆使して敵陣の奥深くまで潜入し、戦局をひとりで動かしてしまう忍者は、男の子の永遠の憧れ。ちなみに忍者が誕生したのは飛鳥時代。戦国時代になると諸国の大名にとって、なくてはならない存在となり、以降数々の伝説を生んできました。今回はそんな「忍者」の歴史と魅力を、TOKYO FMの番組の中で忍者に詳しい方々に教えてもらいました。
（TOKYO FM「ピートのふしぎなガレージ」6月4日放送より）
◆「ラグビーの五郎丸選手は実は忍者!?」
〜元観光庁長官／日本忍者協議会副会長 溝畑宏さん
忍者と言えば伊賀、甲賀、「真田丸」で話題の上田、戸隠、小田原、嬉野などが有名ですが、実はお城のあるところにはどこにでもいました。平民に混ざって情報を集めたり、機密情報を盗んだり、殿様の命令で諜報活動をする人はどの国にも必ず存在していたんです。
そんな役割を担う忍者は運動神経が良いことが必須条件です。さらに情報を分析する頭の良さも求められます。入手した情報は素早く殿様に伝えなければいけませんし、義理人情や礼節を重んじて、無駄口も叩かない。そんな職人気質も重要でした。
実は戦国時代まで、敵国に謀略を仕掛ける忍者は悪党的な役回りだったんです。それが江戸時代になると、平和を守る諜報員になっていきます。だから忍者は海外で「クールジャパンの象徴」として愛されているんです。野球のイチローなんてまさにそんな忍者のイメージですよね。
2010年に上海万博とパリのジャパンエキスポで「クールジャパン」のブースを覗いたら、忍者の人気が圧倒的でした。マンガ「NARUTO」は世界的に人気ですし、東南アジアではアニメ「忍者ハットリくん」が僕らの想像以上に浸透しています。日本の自治体がプロモーションをしようと思ったら、集客力が一番高いのは忍者でしょう。
ちなみに2月22日は「ニンニンニン」で忍者の日。僕らが知っているだけでも全国200ヵ所で忍者のイベントが開催されています。その日以外でも全国各地の忍者屋敷では「壁の隠し扉」や「忍者の実演」などを楽しめます。そういう情報がなかなかまとまっていなかったので、僕らは日本忍者協議会を作ってポータルサイトを立ち上げました。
そういえばラグビー選手は忍者にすごくよく似ています。忍耐、献身、礼節、俊敏な動き、さらに五郎丸選手のあの独特のポーズもすごく忍者っぽいので、彼に忍者大使になってもらいました。彼にも協力してもらって、日本が世界に誇れる素晴らしい文化「忍者」を、2020年の東京五輪に向けてどんどん発信していきたいと思います。
◆「道場で忍術をお教えします！」
〜武蔵一族 大番頭 習志野青龍窟さん
「時代アカデミー道場」は忍術を教わったり、侍の文化体験ができる施設です。もちろん手裏剣術も教えていますが、手裏剣術＝忍術ではありません。実は手裏剣は忍者だけが使った武器ではなく、昔の戦う人はみんな隠し武器を持っていました。そのひとつが手裏剣だったんです。
手裏剣は主に逃げるときに敵を驚かせるために使われました。ですから手裏剣だけで敵を倒すのは難しいでしょう。そもそも忍者はそんなに大量の手裏剣を持ち歩きません。せいぜい1枚で、持っていないことも多かったようです。それでも忍者といえば手裏剣というイメージは海外を中心に根強いですね。英語では手裏剣を「ニンジャ・スター」と呼びます。
煙で身を隠す術も、映画のままではありませんが、近い形はありました。忍者は火薬に詳しいので、室内で火薬を使って煙を立ちこめさせて、その隙に逃げるんです。それから気配を消すのが忍術では大事で、月明かりを顔で反射しないよう、腕で隠すのがコツ。そうすると暗がりで見つかりません。これを「観音隠れ」と言います。
分身の術は腹話術に近い術だったと考えられます。相手に姿が見えないようにしながらあたかも会話をしているように複数人の声を出せば、敵はこちらの人数を見誤るでしょう。また足跡をたくさん残せば大勢の人がいるように錯覚させられます。そんな術が分身の術だったのではないでしょうか。
水中に身を隠す「水遁の術」は匂いを消すのが本来の目的。戦国時代なら死体のふりをするという意味もありました。夜を待って、こっそり堀を越え、敵の兵糧庫に火を付けたという記録も残っています。遁術の遁は遁走の遁なので、逃げるとか身を隠すという意味です。
こんな忍術を教えている道場ですが、実はいらっしゃる方の99％が海外の方です。手裏剣、吹き矢、刀の使い方、壁際を歩く方法、足音を消す歩き方、気配を察知するトレーニングなどを体験していただけます。
◆「忍術書に書き記された忍術とは」
〜三重大学人文学部教授 山田雄司さん
もともと忍者は重要な情報を口伝で親から子へ伝えていました。しかし17世紀の後半になると忍者の仕事が減り、口伝では伝わらなくなってしまいます。そこで紙に書いて残そうと考えるようになり、忍術書が作られました。
多くの場合、忍者は忍者の家に生まれて小さい頃から修行させられてなるものでした。ただ、中には忍術をやりたくて弟子入りした人もいました。ただし正式な忍びとして藩に雇われることはないので、あちこちで忍術を披露したりしながら生計を立てていたようです。
もともと忍者は「忍び」と呼ばれていました。それが「忍者」と音読みで呼ばれるようになったのは昭和30年代です。手裏剣を投げたり、黒装束で走り回るという忍者のイメージは、映画の影響が大きかったのではないでしょうか。昼間に黒装束を着ていたら目立ってしまいますから、実際の忍者は昼間は普通の服を着ていました。
天井裏や床下に忍び込む仕事も本当にあったようです。床下で咳が出そうになったときは、土を少し掘ってそこに筒を差し込み、その中に咳をすれば音が漏れないと文献に書かれています。しゃっくりを止めるには手のひらに犬という3回書くんだそうです。男なら左手に、女だったら右手に書くそうで、ウチの娘にやらせてみたら半分くらいは止まりました。
松本城の「芥川家文書」には「忍者が大きな凧に乗って空を飛び、上から火を落として城を燃やした」と書かれています。本当かどうかはさておき、そんな伝説が平安時代にあったようです。それが江戸時代になると凧に火を降らせる装置を搭載するようになります。これも甲賀流の芥川家忍術のひとつです。
「人から話を聞き出す術」も重要な忍術のひとつ。昔はお寺や神社に情報が集まっていたので、お坊さんと仲良くなって、お酒を飲んだりしながら情報を得ようとしていたようです。こんな忍術の文献はどこまでが本当でどこまでが嘘なのかわからない部分がありますが、人々にそう思わせること自体が忍術なのかもしれません。
TOKYO FMの「ピートのふしぎなガレージ」は、《サーフィン》《俳句》《ラジコン》《釣り》《バーベキュー》などなど、さまざまな趣味と娯楽の奥深い世界をご紹介している番組。案内役は、街のはずれの洋館に住む宇宙人（！）のエヌ博士。彼のガレージをたまたま訪れた今どきの若者・新一クンと、その飼い猫のピートを時空を超える「便利カー」に乗せて、専門家による最新情報や、歴史に残るシーンを紹介します。
あなたの知的好奇心をくすぐる「ピートのふしぎなガレージ」。6月11日（土）の放送のテーマは《自動販売機》。お聴き逃しなく！
【あわせて読みたい】
★「あいつは本当に鼻毛だなあ」ってどういう意味？（2016／6／10） http://tfm-plus.gsj.mobi/news/NgqGtCSMaF.html
★「私は男性の“このひと言”に傷つきました……」女性編（2016／6／9） http://tfm-plus.gsj.mobi/news/kvlc9Fim1Z.html
★「ピクニック」はもともと屋内のアソビだった!?（2016／6／4） http://tfm-plus.gsj.mobi/news/pmPb6FKI0a.html
＜番組概要＞
番組名：「ピートのふしぎなガレージ」
放送エリア：TOKYO FMをはじめとする、JFN全国37局ネット
放送日時：TOKYO FMは毎週土曜17：00〜17：50（JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください）
番組Webサイト：http://www.tfm.co.jp/garage
（TOKYO FM「ピートのふしぎなガレージ」6月4日放送より）
意外と知らない「忍者」の素顔
◆「ラグビーの五郎丸選手は実は忍者!?」
〜元観光庁長官／日本忍者協議会副会長 溝畑宏さん
忍者と言えば伊賀、甲賀、「真田丸」で話題の上田、戸隠、小田原、嬉野などが有名ですが、実はお城のあるところにはどこにでもいました。平民に混ざって情報を集めたり、機密情報を盗んだり、殿様の命令で諜報活動をする人はどの国にも必ず存在していたんです。
そんな役割を担う忍者は運動神経が良いことが必須条件です。さらに情報を分析する頭の良さも求められます。入手した情報は素早く殿様に伝えなければいけませんし、義理人情や礼節を重んじて、無駄口も叩かない。そんな職人気質も重要でした。
実は戦国時代まで、敵国に謀略を仕掛ける忍者は悪党的な役回りだったんです。それが江戸時代になると、平和を守る諜報員になっていきます。だから忍者は海外で「クールジャパンの象徴」として愛されているんです。野球のイチローなんてまさにそんな忍者のイメージですよね。
2010年に上海万博とパリのジャパンエキスポで「クールジャパン」のブースを覗いたら、忍者の人気が圧倒的でした。マンガ「NARUTO」は世界的に人気ですし、東南アジアではアニメ「忍者ハットリくん」が僕らの想像以上に浸透しています。日本の自治体がプロモーションをしようと思ったら、集客力が一番高いのは忍者でしょう。
ちなみに2月22日は「ニンニンニン」で忍者の日。僕らが知っているだけでも全国200ヵ所で忍者のイベントが開催されています。その日以外でも全国各地の忍者屋敷では「壁の隠し扉」や「忍者の実演」などを楽しめます。そういう情報がなかなかまとまっていなかったので、僕らは日本忍者協議会を作ってポータルサイトを立ち上げました。
そういえばラグビー選手は忍者にすごくよく似ています。忍耐、献身、礼節、俊敏な動き、さらに五郎丸選手のあの独特のポーズもすごく忍者っぽいので、彼に忍者大使になってもらいました。彼にも協力してもらって、日本が世界に誇れる素晴らしい文化「忍者」を、2020年の東京五輪に向けてどんどん発信していきたいと思います。
◆「道場で忍術をお教えします！」
〜武蔵一族 大番頭 習志野青龍窟さん
「時代アカデミー道場」は忍術を教わったり、侍の文化体験ができる施設です。もちろん手裏剣術も教えていますが、手裏剣術＝忍術ではありません。実は手裏剣は忍者だけが使った武器ではなく、昔の戦う人はみんな隠し武器を持っていました。そのひとつが手裏剣だったんです。
手裏剣は主に逃げるときに敵を驚かせるために使われました。ですから手裏剣だけで敵を倒すのは難しいでしょう。そもそも忍者はそんなに大量の手裏剣を持ち歩きません。せいぜい1枚で、持っていないことも多かったようです。それでも忍者といえば手裏剣というイメージは海外を中心に根強いですね。英語では手裏剣を「ニンジャ・スター」と呼びます。
煙で身を隠す術も、映画のままではありませんが、近い形はありました。忍者は火薬に詳しいので、室内で火薬を使って煙を立ちこめさせて、その隙に逃げるんです。それから気配を消すのが忍術では大事で、月明かりを顔で反射しないよう、腕で隠すのがコツ。そうすると暗がりで見つかりません。これを「観音隠れ」と言います。
分身の術は腹話術に近い術だったと考えられます。相手に姿が見えないようにしながらあたかも会話をしているように複数人の声を出せば、敵はこちらの人数を見誤るでしょう。また足跡をたくさん残せば大勢の人がいるように錯覚させられます。そんな術が分身の術だったのではないでしょうか。
水中に身を隠す「水遁の術」は匂いを消すのが本来の目的。戦国時代なら死体のふりをするという意味もありました。夜を待って、こっそり堀を越え、敵の兵糧庫に火を付けたという記録も残っています。遁術の遁は遁走の遁なので、逃げるとか身を隠すという意味です。
こんな忍術を教えている道場ですが、実はいらっしゃる方の99％が海外の方です。手裏剣、吹き矢、刀の使い方、壁際を歩く方法、足音を消す歩き方、気配を察知するトレーニングなどを体験していただけます。
◆「忍術書に書き記された忍術とは」
〜三重大学人文学部教授 山田雄司さん
もともと忍者は重要な情報を口伝で親から子へ伝えていました。しかし17世紀の後半になると忍者の仕事が減り、口伝では伝わらなくなってしまいます。そこで紙に書いて残そうと考えるようになり、忍術書が作られました。
多くの場合、忍者は忍者の家に生まれて小さい頃から修行させられてなるものでした。ただ、中には忍術をやりたくて弟子入りした人もいました。ただし正式な忍びとして藩に雇われることはないので、あちこちで忍術を披露したりしながら生計を立てていたようです。
もともと忍者は「忍び」と呼ばれていました。それが「忍者」と音読みで呼ばれるようになったのは昭和30年代です。手裏剣を投げたり、黒装束で走り回るという忍者のイメージは、映画の影響が大きかったのではないでしょうか。昼間に黒装束を着ていたら目立ってしまいますから、実際の忍者は昼間は普通の服を着ていました。
天井裏や床下に忍び込む仕事も本当にあったようです。床下で咳が出そうになったときは、土を少し掘ってそこに筒を差し込み、その中に咳をすれば音が漏れないと文献に書かれています。しゃっくりを止めるには手のひらに犬という3回書くんだそうです。男なら左手に、女だったら右手に書くそうで、ウチの娘にやらせてみたら半分くらいは止まりました。
松本城の「芥川家文書」には「忍者が大きな凧に乗って空を飛び、上から火を落として城を燃やした」と書かれています。本当かどうかはさておき、そんな伝説が平安時代にあったようです。それが江戸時代になると凧に火を降らせる装置を搭載するようになります。これも甲賀流の芥川家忍術のひとつです。
「人から話を聞き出す術」も重要な忍術のひとつ。昔はお寺や神社に情報が集まっていたので、お坊さんと仲良くなって、お酒を飲んだりしながら情報を得ようとしていたようです。こんな忍術の文献はどこまでが本当でどこまでが嘘なのかわからない部分がありますが、人々にそう思わせること自体が忍術なのかもしれません。
TOKYO FMの「ピートのふしぎなガレージ」は、《サーフィン》《俳句》《ラジコン》《釣り》《バーベキュー》などなど、さまざまな趣味と娯楽の奥深い世界をご紹介している番組。案内役は、街のはずれの洋館に住む宇宙人（！）のエヌ博士。彼のガレージをたまたま訪れた今どきの若者・新一クンと、その飼い猫のピートを時空を超える「便利カー」に乗せて、専門家による最新情報や、歴史に残るシーンを紹介します。
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＜番組概要＞
番組名：「ピートのふしぎなガレージ」
放送エリア：TOKYO FMをはじめとする、JFN全国37局ネット
放送日時：TOKYO FMは毎週土曜17：00〜17：50（JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください）
番組Webサイト：http://www.tfm.co.jp/garage
