東海大山形vs明桜
有方(東海大山形)
最初は明桜ペースで試合は進んでいたが、お互いの打者が持ち味を発揮する打撃戦となる。まず先制したのは明桜。一死二塁から小川洋(2年)の適時二塁打で1点を先制すると、5番前田幹人(3年)の左中間を破る適時二塁打で2点を先制した。そして1回裏に1点を返され、2回表には打者一巡の攻めで、一気に5点を奪い、試合を優位付けたかと思えた。
だが3回裏、東海大山形は一死二、三塁から4番有方琢眞(3年)が右中間を破る適時三塁打を放ち、2点を返すと、4回裏には打者10人、6安打の猛攻で、一挙5点を入れて逆転に成功する。
だが5回表、明桜は1番東内凜(3年)の適時打で同点に追いついたが、再び東海大山形が2番森田啓介(3年)の適時打、有方の適時打、5番藤井拓生(3年)の適時打で一気に11対9と逆転に成功。
5回まで11対9と凄まじい攻防となった。明桜も6回表に内野ゴロの間に1点を返すと、さらに8回表には6番松本力也(1年)が左中間を破る適時二塁打で11対10と1点差に迫る。試合はいよいよ9回表、東海大山形は背番号1の有方がマウンドに登る。
有方は182センチ79キロと恵まれた体格から振り下ろす常時140キロ前後(最速142キロ)のストレートとキレのあるスライダーが光る好右腕。投球フォームを見ても、コンパクトなテークバックからフィニッシュに入るまでが実にスムーズで潜在能力の高さが光るが、明桜打線が有方を捉え、一死二、三塁から代打・岩城圭悟(2年)が左中間を破る適時二塁打で逆転に成功。その後も、打者12人の攻めで、一挙8点を奪う猛攻で、18対11と試合をひっくり返した。
明桜は東海大山形の反撃を1点に抑え、見事に乱打戦を制し、ベスト8へ駒を進めた。
東内(明桜)
試合を振り返ると、明桜は5打数3安打4打点の1番東内凜の活躍が光った。177センチ79キロとアスリート体型の大型外野手で、打者としてのポテンシャルは非常に高い。どの方向にも長打が打てて、ツボにはまればスタンドインも期待出来る右打ちの外野手で、明桜はどの選手も強い打球を打てていたが、その中でも東内の打撃の確実性、守備力の高さ、走塁能力の高さはずば抜けていて、総合力では一番の選手だろう。
もともとそれほど体は大きくなかったようだが、1日に2700グラムの食事を摂るということを徹底し、現在の体型となったようだ。チームとして心掛けていることは強く振ること。東内は強く振ろうと意識しすぎて、それが力みとなってなかなか思うような打撃ができなかったが、最近になり、力まなくても自然と強く振れる感覚を掴んでいったようだ。また先制打を打った小川、勝ち越し打を打った岩城を始め、活躍する2年生が多いのも魅力。打の明桜として今後も注目される存在になることは間違いない。
敗れた東海大山形は、投手力と守備力に課題を残したが、打撃力は非常に高いものがあった。5打数3安打4打点を記録した有方。1番で、5打数3安打2打点と東海大山形河合海斗だろう。有方も、スクエアスタンスで構え、ゆったりと左足を上げてから、踏み込んでからの強烈なスイングが光る右打ちの強打者。投打ともに身体能力の高さが光るが、どちらに自信があるかと言えば打撃。140キロ台を投げる地肩の強さを持った選手であり、さらに脚力もある。走攻守三拍子揃った大型外野手として夏の注目野手に挙がりそうだ。
河合は昨年12月に山形県選抜に出場した巧打堅守の遊撃手。逆方向へ強い打球を打つことを強みに、さらにフットワークが軽快な守備が光る選手。木製バットを打っていた山形県選抜の時から攻守のセンスの高さは光っていたが、やはり筋の良さは確かなものがある。見ていてしっかりと物事はこなすタイプなので、走塁、打撃、守備ともにさらに一段階上のプレーを求めていきたい選手だった。
(文=河嶋 宗一)