都立城東高等学校 関根 智輝投手「都立の星と呼ばれるまでになったクレバーな思考」

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 1999年、2001年に甲子園出場を果たした都立城東。この春は都大会ベスト8入りし、15年ぶりの甲子園出場の可能性もあると言われるようになったが、そこにはエース関根 智輝の存在があった。最速145キロのストレートとキレ味鋭い変化球を武器とする本格派右腕である関根は、今年のチームがスタートしてから二季連続でベスト8進出を果たす原動力となった。

 何故関根はここまでの投手となったのか、その要因を探ると、「クレバーな思考」が根底にあることが分かった。

関根の成長をもたらした栄養管理

関根 智輝投手(都立城東高等学校)

 昨年11月、チームの取材で都立城東を訪れた際、今年にかける意気込みとして「鈴木 優さん(都立雪谷−オリックス)のような投手になりたい。そして150キロを目指します!」と語ってくれた関根。

 都立校からプロ入りした鈴木のような投手になることを目指した関根は、この春、投打に渡って大黒柱として活躍した。都立富士森戦(試合レポート)では8回10奪三振で1失点完投勝利を収め、3回戦の立教池袋戦では、6.1回を投げて6安打1失点に抑え、奪三振数は11。打撃でも3打数3安打4打点の活躍を見せた。そして4回戦の創価戦では、2対1で投げ切って勝利し、準々決勝進出に貢献した。この快投の裏にはどんな努力があったのか。

「ウエイトトレーニングや走り込みも大きかったですけど、一番は栄養管理ですね。量も多くしましたが、バランス良く食べることを意識しました」

 オフに栄養講習を受ける機会があり、バランス良く食べることの重要性を実感したという。講習会後、関根は野菜、乳製品などバランス良く食べることを意識するようになった。食事面は、やらされているか、それでも自ら意識して取り組むかで、全く違う。この取り組みの結果、関根は昨秋の181センチ80キロから今では182センチ86キロにサイズアップ。腰回り、お尻の大きさが一段と変わっていた。

 体が大きくなるとバランスを崩しやすいのだが、関根の場合はバランスが崩れることなく、しっかりと調整を行って春の大会に臨むことができた。

 球速は、一部では最速145キロを計測したストレートは一段と威力が増し、捕手の中島は「秋とは全然違いますね。春では重みが出てきて空振りが奪えるストレートになりました」と女房役も手応えを感じている。さらに縦横のスライダー、フォークのキレも秋から良くなり、ベスト8への原動力となった。

 関根の投球を振り返るとコントロールが非常に良い。1試合四死球は2、3個程度。四球から崩れた試合というのはほとんどない。関根がコントロールに自信を持ったのは中学生の頃からで、小学生の頃から投手をやっていた関根は、当時は四球を多く出していたが、中学生になってからは四球を出すことはほとんどなくなったのだという。なぜコントロールが良くなったのだろうか。その理由は普段のシャドーピッチングにあった。

「ヒップファーストで投げることを意識して、常にバランスを取って投げることを意識しています」

 普段のキャッチボールや遠投では、シュート回転する癖があるので、真っすぐ良いボールがいくように丁寧にキャッチボールを行っている。特別なことをしているわけではない。ただ正しい動作で投げることをを日々追及していることが、コントロールの良いフォームで投げられることにつながっている。

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関根 智輝投手(都立城東高等学校)

 春は準々決勝の関東一戦で敗れた。準々決勝は引き分け試合とその後の再試合でそれぞれ4失点、8失点しており、関根にしてはやや多い失点となっている。関東一打線の印象について関根は次のように語った。「他のチームと比べてコースを突いてもくらいついてきて、甘い球を見逃さない。さらに普通なら振って来る変化球を関東一はしっかりと見逃してくる。嫌な打線だと思いました。ボール球を振らせるような配球をしないと厳しいと思いました」

 このようにしっかりと振り返りを行っていた関根。夏へ向けて取り組んでいることは、変化球を手元で変化できるようにすることだという。変化量が大きくても、変化が早ければ見極められてしまうので、なるべくストレートと同じ腕の振りで投げ、打者の手元で変化できるように心がけている。この取り組みは順調に進んでおり、沼南との練習試合では17奪三振と快投した。

 ストレートは140キロ〜143キロを計測し、140キロ台は20球も計測していた。そして打者の手元で鋭く切れるスライダーも決まった。それはまるで打者の手元で消えるような軌道だった。捕手の中島誠丈は、「だんだん変化球の精度も高くなって打者の手元でコントロールできています。そこは、さすが神経が細やかな関根ですね。本当に良くなってきています」と変化球の精度の高さを評価していた。

 それでも関根は満足する様子はない。「自分が投げる変化球は変化量が多いので、曲がりはじめが早いとすぐに見極められる。だから変化が小さい変化球を覚えられればと思うのですが、それでは間に合わない。なので、今、投げているカーブを上手く使えればと思います」

 新しい球種ではなく、現在、使っている球種を上手く使っていくという。有効だと考えているのがカーブだが、そう考えたのは、春先の練習試合でのこと。相手は強打がウリのチームだったが、カーブを投じると全くタイミングが合わなかったのだ。今年はカーブを上手く使って勝てる投手が多いが、関根も今の投球に緩急を交えた投球ができれば有効と見ている。

 また、練習試合で17三振を奪ったことについては「思った以上に取れていますけど、球数が多くなってしまいます。今後、完投することが多くなるので少なくしていきたいです」と語る関根。三振が多く取れることに越したことはないが、打たせて取る投球ができれば球数は少なくなる。話を聞いていると考えて投球をしているのが分かり、ここまでの体力面の成長、投球術の成長を見ると、レベルアップするにはどんな努力をすればよいのか、しっかりと考えながら取り組んでいることが分かる。

 15年ぶりの甲子園出場、今年はそれが実現するかもしれない。その期待を持って、練習試合では都立城東のファンが連日詰めかけ、特にエースの関根に対しては期待の眼差しが注がれている。そのことを、関根自身も自覚している。

「絶対に甲子園に行きたいです」

 大会まで残り1か月。これからもクレバーな思考で、厳しい東東京を勝ち上がるために、万全の準備を期して勝負の夏に臨んでいく。

(取材・文=河嶋 宗一)

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