クルマのユーザーにとって、燃費はおサイフに直結する身近な問題(写真出典:antikainen/123RF)。

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クルマを選ぶとき、大きなポイントになる燃費。しかし実際に走らせてみると、カタログどおりの結果にはならないものです。なぜ、そのようなことになるのでしょうか。また、それに近づけるためにはどうしたらよいのでしょうか。

日進月歩のカタログ燃費、しかしその実態は?

 2016年の春、クルマ関連のニュースでホットな話題のひとつになった燃費の問題。そのユーザーにとって「燃費」は身近なものですから、話題の当事者でなくとも関心のある人はきっと多いことでしょう。

 クルマにおける「燃費性能」とは、ひとりのユーザーのランニングコストを左右するだけではありません。視野を広くすれば、どれだけの石油資源を利用し、そして排気ガスによって環境へどれだけ影響を与えるのか、という一面があります。つまり「燃費の悪いクルマ」は「資源をたくさん消費し、大気をより汚染する」という考え方です。

 そのため日欧米では年々「燃費規制」という形で、燃費性能の高い自動車を普及させようとする動きが活発になっており、自動車メーカーはこれに対応すべく躍起になっています。

 また、日本では燃費のよいクルマに対する優遇税制があり、ユーザーの燃費性能への関心が高まっていることも、自動車メーカーがその向上に力を入れる理由でしょう。

 そうしたこともあり、この5年ほどで日本車の燃費性能は驚くほど高まりました。最新のトヨタ「プリウス」では大台を越えた40.8km/lを達成、軽自動車でも30km/lを越える車種が次々と誕生し、少し前までは“冗談”であったフルマラソン(42.195km)の数字も見えてきました。10年前は、予想もできなかったことです。

 しかし実際の路上において、カタログにあるような30km/lや40km/lという燃費を体験した人は、ごく少数派でしょう。ほとんどの人は「カタログの数字ほど、実際の燃費はよくない」と思っているはず。国土交通省の統計によると、自家用の乗用ハイブリッド車におけるガソリン1リットルあたりの実際の平均走行距離は約15.9kmです(国土交通省「自動車燃料消費量調査 年報 平成26年分 第1表 燃料別・車種別 総括表」より算出。特定の車種における数値ではない)。

 ではなぜ、カタログと実際の燃費の数字は異なるのでしょうか。

カタログ燃費と実燃費で差がつく理由、分かりますか?

 クルマの燃費性能を数字で示すのは、そもそも難しいことです。

 まずクルマは、どのような道を走るのかが決まっていません。まっすぐ平坦な道でブレーキを踏むこともなければ、もちろん、燃費は良いですよね。しかし実際の道路では、曲がり角があり、信号で止まり、坂を上ったり下ったりと、常に一定に走らせるわけにはいきません。そして、曲がり角や信号ばかりのルートで加速と減速を繰り返せば、当然、燃費は悪化します。

 さらにドライバーの個性もあります。急いで加速する人もいれば、ゆったりと加速する人もいます。もちろん、加減速の差が大きいほど燃費にはよくありません。また、乗っている人や荷物の重さも影響します。

 加えて、使い方も人それぞれ。エンジンはある程度、暖まらないと本来の性能が発揮できませんから、乗り始めからしばらくのあいだは燃費が悪いのです。そして渋滞も燃費には不利。たとえば「近所のスーパーまで渋滞のなか買い物に行く」といった状況は、燃費的には最悪になります。逆に、高速道路での巡航といったケースは、燃費的に有利になります。

 ひとくちに「燃費」といっても、実際の路上では状況がさまざまであるため、その時々により計算される数字はバラバラになってしまいます。そうしたなかで、一定の条件下における数字として燃費を示そうとするものが、カタログの燃費性能なのです。

 こうした事情もあり、カタログの燃費性能は大昔から「実燃費と違う」と言われ続けてきました。大昔のカタログには、「一定の速度で、まっすぐで平らな道を走行する際の燃費性能」が載せられており、ライバル車との比較には参考になりますが、実燃費との乖離は当然のように大きなものでした。

 そこで「モード燃費」という考え方が導入されます。加速したり、減速したり、一時停止するなどの状況を定めた条件下で燃費をテストしようという方法です。

 しかし、これでも実燃費とは合致しませんでした。それはそうでしょう。「モード燃費」といえども最高の数字を出したいのが自動車メーカーの本音であり、最高に条件の良いところで、最高に運転の上手な人が出した数字を使うからです。

 であれば、もっとリアルに近づけようということで、モード燃費は「10モード」「10・15モード」を経て、現在の「JC08モード」へと進化してきました。より実態にあわせた厳しい内容へと更新されてきたのです。昔と比べれば、徐々にではありますが、実燃費に近づいてきた。それが「カタログ燃費」の歴史です。

燃費向上のため、ユーザーがいますぐできることは?

 燃費がカタログの数字に届かない理由を説明しましたが、それでも「できればカタログの数字に近づけたい」という思いは、誰もが抱くのではないでしょうか。そこで、燃費向上のためにユーザーができることを考えてみましょう。

 とはいっても、クルマの使い方そのものを変えることは難しいですよね。クルマを使って近所の買い物に行くことが燃費に悪いからといって、毎日の買い物をやめるわけにはいきません。ですが、そうしたときにもちょっとしたことで燃費を改善することは可能です。

 ひとつはアイドリング・ストップ。路肩や駐車場で人を待っているようなときは、エンジンをストップしましょう。暖気運転も最近のクルマであれば必要ありません。ただし、アイドリング・ストップ機能がついていないクルマの場合、信号待ちでのエンジン停止は危険なので行わないようにしてください。

 運転技術としては、無駄な加速をしないことが重要です。先に見える信号が赤なのに、無駄にアクセルを踏まないようにしましょう。もちろん速度の上げ方も重要です。無駄に急いで加速したり、逆に加速するのに時間をかけすぎることも燃費にはよくありません。周囲の流れに合わせた適度な加速を心がけてください。

 また、クルマの重量が軽いほど燃費は向上しますので、不要な荷物をクルマから下ろすようにしましょう。クルマの軽量化ということでホイールを軽いものにする場合は、ついでに最新のエコタイヤへ換装することもおすすめします。タイヤが燃費に与える影響は意外に大きく、トーヨータイヤの試算によれば、ガソリン単価140円/l、年間走行距離1万2000km、燃費10.0km/lという条件下で、一般タイヤ(ころがり抵抗係数10.5)から低燃費タイヤ(ころがり抵抗係数6.5)に履き替えた場合、ガソリン代にして年間およそ6166円の節約になるとのこと。

 メンテナンスも重要でしょう。クルマが完調なのは大前提。定期的なメンテナンスを行ってください。

 クルマの燃費を良くするということは、おサイフにも環境にも優しいということです。これを意識して無駄な急加速が減れば路上の安全性も高まり、まさに良いことずくめ。燃費に関心があるのならば、ぜひとも愛車の燃費向上を目指してみませんか。