みんなで賑やかに花見をするのも良いですが、一人、桜の下で思いにふけるのも、また一興ですよね。そんなときに、簡単に読める小説や詩があったら、もっと気分も盛り上がると思いませんか? 今回は、満開の桜の下で読みたい3冊の本をご紹介します。


本とともに桜の下で思いにふけるのも一興です



今年も桜が美しく咲きました。
皆さんは誰と、どんなふうにお花見をしますか?
仲間と楽しく過ごすのももちろんいいのですが、ときには一人、満開の桜の木の下で本を読んでみるのもいいかもしれません。
そんな、桜の下で読みたい文学をご紹介します。

まず、ひとつ目は坂口安吾の「桜の森の満開の下」。
傑作と言われる短編小説で、彼の代表作でもあります。
桜の森がある山に住み始めた山賊と、妖しく美しい女性との幻想的な怪奇物語。
桜も女性も、美しいものは残酷であり、でもその魅惑には逆らえない……。
桜の下で読めば、咲き誇る花の表情がちょっと違って見えるはず。
坂口安吾ワールド全開の妖艶な世界観を楽しむことができます。

次にご紹介するのは梶井基次郎の「櫻の樹の下には」。
短編小説とも、散文詩であるとも言われるこの作品は、読み始めれば10分程度で読み終えてしまうもの。
「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」という言葉で始まり、この文章がもとで都市伝説が生まれたとも言われています。
桜の花がこんなに美しいことに、理由がないはずがない。
日本人が持ち続けているあまりに美しいものへの恐れの気持ちが表現された名作となっています。

最後にご紹介するのは、詩人・萩原朔太郎の「憂鬱なる花見」。
桜の匂いが遠くからして、浮かれた声を横に聞きながら、主人公の心はその美しさに生気を奪われるように憂鬱になっていく。
明治という激動の時代が終わり新しい時代への期待と不安が入り混じる、そんな春。
時代を見守ってきた桜とともに、憂いながらも未来に思いを馳せる時間を過ごせます。

こうしてみると、日本人にとって桜は美しいだけの存在ではないことがわかります。
物事は表裏一体であること。始まりがあれば終わりがあること。
いったん立ち止まって、何かを考えてみる……そんな一人のお花見も、たまにはいいのかもしれません。

文/岡本清香

TOKYO FM「シンクロのシティ」にて毎日お送りしているコーナー「トウキョウハナコマチ」。江戸から現代まで、東京の土地の歴史にまつわる数々のエピソードをご紹介しています。今回の読み物は「満開の桜の下で読みたい文学」として、3月31日に放送しました。

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