企業が売ろうとしても売れない時代、高級ブランドの戦略に学ぶ 【矢島雅弘の「本が好きっ!」】

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実は僕は小難しい言葉が並ぶビジネス書が好きではありません。単純に「読みづらいから」という理由なんですが、『売らずに売る技術 高級ブランドに学ぶ安売りせずに売る秘密』(集英社刊)を開いたときに、最初に「うーん、困った!」と思ってしまいました。そこには「ラグジュアリーブランド」「エクスクルーシブなイメージを大切にしていたハイファッションの業界」などの言葉がありました。

どうしてルー語のような、分かりにくい表現を使うのだろう。そう著者の小山田裕哉さんに聞いてみたら、PR業界のことを知ってほしくて、わざとこのように一般の人が聞き慣れない言葉をそのまま使ったのだそうです。

僕がパーソナリティーを務めているインターネットラジオ番組「矢島雅弘の『本が好きっ!』」、第3回のゲストは小山田裕哉さん。僕と同世代のフリーライターで、もともとは映画業界の出身だそうです。この『売らずに売る技術 高級ブランドに学ぶ安売りせずに売る秘密』の元となる記事を、『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』のWeb版に連載していて、それを書籍化しました。



さて、冒頭に思わず舌を噛んでしまいそうな言葉を並べてみましたが、まったく難しい本ではありません。むしろ現状の高級ブランドを取り扱う企業のマーケティングの方法が、非常に理解しやすく書かれています。

「新刊ラジオ」を聴かれている方はご存知かと思いますが、僕も商売人の息子。どのように商品をお客様に売り込むかということについては、これまで幾度も頭をひねってきました。しかし、今起きていることは、これまでのPRの仕方が通用しなくなっていることです。小山田さんの言葉を使うならば「企業が一方的に売ろうとして売るのが難しくなった」というわけです。

皆さんもソーシャルメディアで情報を得ているのではないでしょうか。僕も外食するときには、「食べログ」などでユーザーの声を見て、「ここは外れがなさそうだ」と判断していきますが、もう企業側は一方的に自社のポジティブな印象を植え付けていくことができなくなったんですね。そして、それって、まだ若い小山田さんだからこそ、気づけたことがたくさんあったのではないかと思いました。



では、企業はどうすればよいのか。こちらについても小山田さんに語っていただいたのですが、一つ、印象的な事例をご紹介しましょう。

バーバリーはラグジュアリーブランドにおけるソーシャルメディア活用の先駆け的な存在で、2000年代半ばから「若返り」という方針のもとに、TwitterやYouTubeといったデジタルチャンネルを使って、若い世代の消費者と直接コミュニケーションを取り始めました。そのときにバーバリーが意識したことは、消費者目線だったそうです。

ですが、それでは逆に消費者になめられてしまうのではないでしょうか。この続きは小山田さんのお話をぜひ聴いてください。この本は高級ブランドを主にピックアップしていますが、一般企業の人もブランディングを学ぶことができると思います。

これは面白いと思ったエピソードなんですが、小山田さんは、この本を読んだ行きつけのバーのマスターに、「高級ブランドのことがよくわかったよ!」と言ってもらえたそうです。僕も誰にでも分かるような解説を心がけていますが、もっと上手く伝えられるように頑張っていきます。

(文/ブックナビゲーター・矢島雅弘)

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【矢島雅弘の「本が好きっ!」】
ブックナビゲーター・矢島雅弘による書評ラジオ。毎回、話題の本の著者が登場して、本について掘り下げるインタビューを届ける。
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