20代で10億の資産築いた経営者は「騙されエピソード」もスゴイ
騙されまいと思って気を付けていても、人はどうしても騙されてしまうもの。特に0から会社を立ち上げ、自分の手で市場を切り拓いてきた経営者は会社を大きくする過程で、何度も騙され失敗をしている。
中学生で起業し、紆余曲折ありながらも会社を拡大。29歳になった現在は、ストラクチャードファイナンスや企業グループ内の再編サービスを提供するティガラグループを率いている正田圭さんは、自身の著書『15歳で起業したぼくが社長になって学んだこと』(CCCメディアハウス/刊)の中で、「経営とは何たるか」を説明しながら、起業という道を選んだがゆえの困難と、20代の間に10億円の資産を築いた自らの半生を明かす。
■経営者を騙す人物のやり口がスゴイ!
この本は、正田さんが半生を語る「独白」の部分と、経営のエッセンスをまとめた「コラム」部分を交互になって進んでいく。「コラム」が普遍性を帯びているのに対して、「独白」は思わず声をあげてしまうほどのエピソードが満載だ。
その中でも特に目を引くのが、とある老紳士に騙されたときの話である。すでに起業をして会社を経営していたものの、まだ高校を卒業したての正田さんはその人物に踊らされてしまうのだ。
では、正田さんを見事に嵌めた詐欺師のやり口は一体どんなものだったのだろうか。
1、有名人との交流をアピール
正田さんと営業部長が老紳士から誘われ、パーティーに参加する。そこには、芸能人やスポーツ選手、格闘家などの著名人たちも大勢おり、老紳士の交流の幅の広さを見せつけるようだった。
その会場で、老紳士は当時絶大な人気を誇っていた若手格闘家を呼び捨てにして、実に親しげに激励したのだ。格闘家も「ありがとうございます!」と答え、正田さんはまんまと「この老紳士は本当に凄い人なんだ」と信じ込んでしまった。
2、常に景気の良い話をする
もともとは、営業部長の紹介で老紳士と出会った正田さん。そのときから「とにかく羽振りがいい」と聞かされており、実際に出会ってからも高級な飲食店に連れて行ってくれたり、誕生日に豪華なプレゼントをいただいたりして、常に景気の良さを醸し出していたという。もちろん話も景気の良い話ばかり。
正田さんたちはまだ東京に出てきてばかりの頃。少しずつ売り上げは立っていったものの、まだ会社としては小さな規模だった。「知り合いになっておくことは自分のビジネスにとってもプラスになりそうだった」とは本書の中の正田さんの弁だが、東京で頼れる人を必要としていたのだろうか。
3、自分と同じ名前のものを利用する
ある日、正田さんと営業部長をランチに誘った老紳士は、そのお店が入っている、自分と同じ名前のビルの前で、「オレの持ってるビルの1つなんだよ」と豪語する。
店に入り、席に着くと、老紳士はその料理店のシェフを呼び付けて「どうだ、おまえ、最近がんばってるか?」と激励。シェフも「はい、おかげさまでどうにか」と頭を下げて答える。さらに老紳士はトイレが汚いと小言を言い出す。
正田さんはそんな老紳士の振る舞いを見て「もしかしたら会長はこのレストランのオーナーなのかも」と思い込み、より信頼を傾けていくのだった。
4、身内に芸能人がいるアピールをする
(1)にも通じるが、この老紳士は著名人とのつながりの深さを思わせる言動を巧みに使っている。代官山付近を一緒にドライブしていたとき、高級そうなマンションの前で「このマンションもオレのでさ、娘が今ここの一番上の階に住んでんだよ」と自慢げに語ったそうだ。
娘は老紳士のネタの一つだが、実際に芸能人としても活躍していた。だからこそ、老紳士の景気の良さの信憑性を与える一つの道具となったのだ。
5、時に助けてくれることがある
ここまで読んできたならもう分かるだろう。老紳士は正田さんを信じ込ませ、心をがっちりつかんでいたのだ。そのやり口は、非常に巧妙で、恐ろしさを感じる。
ある時、正田さんにある財団への出資の話が持ちかけられるが、その話を老紳士にすると、「自分も(投資の)説明会に行く」と言い張り、実際に参加する。そして「あのじじい(出資の話を持ちかけてきた人物)は詐欺師だ」と正田さんを叱った。
その財団はその後存在がなくなり、詐欺だったと分かるのだが、こうした「アドバイス」を通して「この人には見る目がある」という自分のブランディングを築き上げていったのだ。
■お金を渡してからでは遅い
老紳士が変わり始めたのは、ビジネスの話をされて、彼に1000万円ほど預けることにしてからだった。
彼はブラックタイガーの養殖ビジネスへの出資、シンガポールに新設されるカジノへの出資、近々上場される予定の未公開株の購入など、次々に胡散臭い儲け話を正田さんに持ってくるようになった。正田さんたちはこのとき老紳士を信じきっており、正田さん以下、会社の従業員たちもこぞってお金を出していたのだ。
ところが、そこから頻繁にかかってきていた老紳士からの電話は途絶えてしまう。そして、いつまで経っても連絡はこない。ようやく真実を正田さんたちが知ったのは、彼と知り合って3ヶ月が過ぎた頃だった。
■騙された経験を「高い授業料」に転化できるか
老紳士の正体は一体なんだったのか? 顛末の全貌はぜひこの本を読んでいただくとして、正田さんは個人的に2000万円以上のお金を老紳士に預けていた。しかし、自分たちを騙したことに対して詰めてもさらに騙そうとする老紳士や、それにまた引っかかってしまう正田さんたちの姿を、誰が滑稽といえるだろうか。このエピソードはビジネスの汚い部分をしっかりと描ききっていて、「こういう人っているよな」と思わず納得してしまうはずだ。
こうした経験は普通なら黒歴史にしてしまうだろう。しかし、高い授業料を払って社会を学んだと考えてその後に生かしたり、正田さんのように振り返りながら、やり口を多くの人に伝えたりするのも必要なことだ。
経営者の自伝は、普通の人はなかなか味わえない驚きのエピソードがたくさんでてくるが、『15歳で起業したぼくが社長になって学んだこと』もその例に漏れず、読み応えのある一冊となっている。
(新刊JP編集部)
中学生で起業し、紆余曲折ありながらも会社を拡大。29歳になった現在は、ストラクチャードファイナンスや企業グループ内の再編サービスを提供するティガラグループを率いている正田圭さんは、自身の著書『15歳で起業したぼくが社長になって学んだこと』(CCCメディアハウス/刊)の中で、「経営とは何たるか」を説明しながら、起業という道を選んだがゆえの困難と、20代の間に10億円の資産を築いた自らの半生を明かす。
この本は、正田さんが半生を語る「独白」の部分と、経営のエッセンスをまとめた「コラム」部分を交互になって進んでいく。「コラム」が普遍性を帯びているのに対して、「独白」は思わず声をあげてしまうほどのエピソードが満載だ。
その中でも特に目を引くのが、とある老紳士に騙されたときの話である。すでに起業をして会社を経営していたものの、まだ高校を卒業したての正田さんはその人物に踊らされてしまうのだ。
では、正田さんを見事に嵌めた詐欺師のやり口は一体どんなものだったのだろうか。
1、有名人との交流をアピール
正田さんと営業部長が老紳士から誘われ、パーティーに参加する。そこには、芸能人やスポーツ選手、格闘家などの著名人たちも大勢おり、老紳士の交流の幅の広さを見せつけるようだった。
その会場で、老紳士は当時絶大な人気を誇っていた若手格闘家を呼び捨てにして、実に親しげに激励したのだ。格闘家も「ありがとうございます!」と答え、正田さんはまんまと「この老紳士は本当に凄い人なんだ」と信じ込んでしまった。
2、常に景気の良い話をする
もともとは、営業部長の紹介で老紳士と出会った正田さん。そのときから「とにかく羽振りがいい」と聞かされており、実際に出会ってからも高級な飲食店に連れて行ってくれたり、誕生日に豪華なプレゼントをいただいたりして、常に景気の良さを醸し出していたという。もちろん話も景気の良い話ばかり。
正田さんたちはまだ東京に出てきてばかりの頃。少しずつ売り上げは立っていったものの、まだ会社としては小さな規模だった。「知り合いになっておくことは自分のビジネスにとってもプラスになりそうだった」とは本書の中の正田さんの弁だが、東京で頼れる人を必要としていたのだろうか。
3、自分と同じ名前のものを利用する
ある日、正田さんと営業部長をランチに誘った老紳士は、そのお店が入っている、自分と同じ名前のビルの前で、「オレの持ってるビルの1つなんだよ」と豪語する。
店に入り、席に着くと、老紳士はその料理店のシェフを呼び付けて「どうだ、おまえ、最近がんばってるか?」と激励。シェフも「はい、おかげさまでどうにか」と頭を下げて答える。さらに老紳士はトイレが汚いと小言を言い出す。
正田さんはそんな老紳士の振る舞いを見て「もしかしたら会長はこのレストランのオーナーなのかも」と思い込み、より信頼を傾けていくのだった。
4、身内に芸能人がいるアピールをする
(1)にも通じるが、この老紳士は著名人とのつながりの深さを思わせる言動を巧みに使っている。代官山付近を一緒にドライブしていたとき、高級そうなマンションの前で「このマンションもオレのでさ、娘が今ここの一番上の階に住んでんだよ」と自慢げに語ったそうだ。
娘は老紳士のネタの一つだが、実際に芸能人としても活躍していた。だからこそ、老紳士の景気の良さの信憑性を与える一つの道具となったのだ。
5、時に助けてくれることがある
ここまで読んできたならもう分かるだろう。老紳士は正田さんを信じ込ませ、心をがっちりつかんでいたのだ。そのやり口は、非常に巧妙で、恐ろしさを感じる。
ある時、正田さんにある財団への出資の話が持ちかけられるが、その話を老紳士にすると、「自分も(投資の)説明会に行く」と言い張り、実際に参加する。そして「あのじじい(出資の話を持ちかけてきた人物)は詐欺師だ」と正田さんを叱った。
その財団はその後存在がなくなり、詐欺だったと分かるのだが、こうした「アドバイス」を通して「この人には見る目がある」という自分のブランディングを築き上げていったのだ。
■お金を渡してからでは遅い
老紳士が変わり始めたのは、ビジネスの話をされて、彼に1000万円ほど預けることにしてからだった。
彼はブラックタイガーの養殖ビジネスへの出資、シンガポールに新設されるカジノへの出資、近々上場される予定の未公開株の購入など、次々に胡散臭い儲け話を正田さんに持ってくるようになった。正田さんたちはこのとき老紳士を信じきっており、正田さん以下、会社の従業員たちもこぞってお金を出していたのだ。
ところが、そこから頻繁にかかってきていた老紳士からの電話は途絶えてしまう。そして、いつまで経っても連絡はこない。ようやく真実を正田さんたちが知ったのは、彼と知り合って3ヶ月が過ぎた頃だった。
■騙された経験を「高い授業料」に転化できるか
老紳士の正体は一体なんだったのか? 顛末の全貌はぜひこの本を読んでいただくとして、正田さんは個人的に2000万円以上のお金を老紳士に預けていた。しかし、自分たちを騙したことに対して詰めてもさらに騙そうとする老紳士や、それにまた引っかかってしまう正田さんたちの姿を、誰が滑稽といえるだろうか。このエピソードはビジネスの汚い部分をしっかりと描ききっていて、「こういう人っているよな」と思わず納得してしまうはずだ。
こうした経験は普通なら黒歴史にしてしまうだろう。しかし、高い授業料を払って社会を学んだと考えてその後に生かしたり、正田さんのように振り返りながら、やり口を多くの人に伝えたりするのも必要なことだ。
経営者の自伝は、普通の人はなかなか味わえない驚きのエピソードがたくさんでてくるが、『15歳で起業したぼくが社長になって学んだこと』もその例に漏れず、読み応えのある一冊となっている。
(新刊JP編集部)