「業績不振をスタッフのせいにするな!」コンサルタントが魂の提言

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 大卒の新卒就業者の3割が「3年以内に辞める」という状況が長らく続いている。企業にしてみれば、莫大な採用コストをかけた挙げ句、そのコストを回収する前に逃げられてはたまったものではない。

 だが、すぐに辞めてしまう若者が全面的に悪いと結論づけるのは早い。「ブラック企業」いう言葉はすっかりなじみ深いものになったが、やはり若者が早く辞めてしまう背景には、それなりの理由があるもの。そのままにしておけば、スタッフの離職に歯止めがきかなくなり、経営そのものに悪影響を及ぼしてしまう可能性もある。

 スタッフに「ここで働き続けたい」と思ってもらい、人材の流出を食い止めるために、経営者は何をすべきか。この点について詳しい『今すぐできる! 今すぐ変わる! 「ほめ育」マネジメント』(PHP研究所刊)の著者、原邦雄さんにお話を聞いた。

――本書の1ページ目に「今すぐ、スタッフをほめるのを止めてください。あなたの“ほめ方”では、スタッフのやる気も、業績も上がりません」と書かれていたのが印象的でした。原さんが考える「ダメなほめ方」とはどのようなものなのでしょうか。

原:よくあるのが、ほめる基準もないまま、安易にほめてしまうケースです。たとえば、上司が「とりあえず」部下をほめようとして、「○○くん、そのネクタイ、センスがいいね!」とほめる。でもこれでは、ほめられた部下にしてみると、「自分はなぜほめられたのか」がよく分かりません。ほめられた理由が分からなければ、「またほめてもらえるように、同じ行動をとろう!」とは思えない。つまり、次につながっていきません。
それどころか、上司がほめる目的や基準を持たないまま何となくほめたり、逆に叱ったりしてしまうと、混乱してしまうでしょう。こうなってしまうと、組織は崩壊の一途を辿るだけです。

――ほめるにあたっては、目的や基準を持つことが重要なのですね。

原:その通りです。勘違いしないでいただきたいのは、ただ「ほめればいい」というものではないということです。
ほめる目的は「経営理念の浸透と売上目標の実現」です。その目的にそぐわない「ほめ方」は無意味です。このポイントを押さえることで、売上アップにつながる行動とはどのようなものなのかについて、上司と部下の間に共通認識が生まれます。
このような形で「ほめ育」を実践すれば、必ず結果も出てきますし、結果が出れば現場スタッフはやる気を出し、成長していきます。

――「ほめ育」を導入すると、どれくらいで成果が出るものなのでしょうか。

原:およそ90日から100日くらいですね。目に見えて成果が出始めます。現場スタッフの笑顔が増えますし、売上もどんどん上がっていきます。

――そういった変化が起きるなかで、上司側も変わっていくのですか?

原:変わっていきます。実は、ほめ育には「上司自身を育成する」という側面もあるんです。たとえば、上司が部下の長所を引き出すための方法として、「部下の真の価値を知るための5つの質問」というものがあります。これは、上司が部下に対して、ミッション、意思、夢、志、強い動機は何かを問うものです。
もちろん、これらの質問は部下がそれまで気づけずにいた長所を見つけることを最大の目的にしています。でも、こういう質問をするためには、上司側もあらかじめ自分のなかで「自分のミッションは何か」「自分の志は何なのか」といった「答え」を持っていなければなりません。つまり、上司は部下に問いかけるために、前もって自問自答をせざるを得ない。その結果、自分の思いや考えが言葉になります。言葉になれば、自ずとその理想に追いつくよう、上司の行動も変化していくものです。

――最後になりますが、読者の皆様へメッセージをお願いします。

原: 冒頭で「変わるべきなのに、変われずにいる上司」を悪者のように言いましたが、ある意味で、彼らは被害者でもあります。今、世のマネジメント層の多くは、50代、60代が中心ですが、この世代は企業戦士として、家庭も顧みずにひたすら頑張ることを強いられてきた人たちです。
自分の思いや考えなんて主張する機会もなかったでしょうし、ましてや、ほめてもらえることもなかったでしょう。実は彼らほど「ほめられたがっている」人たちもいないのです。その意味では、まずは上司が部下をほめるということを実践していただきたいと思いつつも、ほめてもらった部下は上司に対して感謝の気持ちを表してもらいたいとも思っています。
この本をきっかけにして、リーダーも、現場のベテランスタッフも新入社員も、互いに感謝の気持ちを伝えあい、仲良く、そして一枚岩になって頑張れるような状況が生まれてきたらうれしいですね。

(了)