イトーヨーカドー。スーパーだけでなく、コンビニの「セブン‐イレブン」など事業は多岐にわたるが、その創業の地が東京・千住(せんじゅ)にあることは、あまり知られていない。

そんな「1号店」が閉鎖されると報じられた。気になって足を運んでみると、千住とイトーヨーカドーの「深いつながり」が見えてきた。



70年以上の歴史がある

イトーヨーカドーの母体は、1920年に創業した「羊華堂洋品店」。当初は浅草にあったが、戦後に千住へ移転した。その後、現在のような業態になったことから、イトーヨーカドーは千住を「創業の地」としている。1号店は2009年に「イトーヨーカドー」から、ディスカウントストア「ザ・プライス」へ業態転換されたが、長きにわたって地域の生活を支えてきた。



そんな1号店が17年2月までに閉鎖されるという。報道によると、数年後に別業態で再オープンするそうだが、70年にわたり「千住の顔」だった同店は、ひとまず役割を終えることになる。


ザ・プライス千住店

北千住駅から5分ほど。結構歩いたなぁと思っていると、ザ・プライスがあらわれた。ビル上部には「イトーヨーカドー」の文字が、さんぜんと輝いている。ここがヨーカドーの原点なのだ。



壁面には額入りの「開店のご挨拶」。2009年に掲げられたのだろうか、それまで60余年の歴史を写真とともに紹介している。なお閉店のあいさつ文は、まだ出ていないようだ。

「引き続き、創業の地の千住を大切にしてまいりますので、今後とも宜しくお願い致します」(開店のご挨拶より)

壁には「ご挨拶」

ザ・プライスを見終えて、近辺を散歩していると、公園へたどり着いた。よし、ひと休みでもしようか――えぇっ、イトー児童遊園! しかもカタカナなの???



説明書きによると、この地にはイトーヨーカドー創立者の伊藤ゆき氏と、その息子・譲氏の夫人である伊藤せき氏が、1959〜82年に住んでいた。のちに、せき氏から足立区へ寄贈され、88年に児童遊園として整備されたそうだ。

「千住は、イトーヨーカドーグループ発祥の地であり、地域の皆様への感謝の気持ちをこめて、伊藤せきさんから足立区に寄贈されたものです」(説明書きより)

ご近所さんに声をかけられた


走りやすそうな園内

珍しそうに写真を撮っていると、マダムから声をかけられた。「なに撮ってるの?」。聞けばご近所さんだという。「このミカンの木は、門の前にあったそのままなのよ」。へぇ。


ミカンの木

園内には、明治期に日本がワシントンへ贈った桜から、一部を採取して植えつけた「里帰り桜」もあった。品種はソメイヨシノだ。


里帰り桜

マダムは1号店閉店の報を、その日の新聞で知った。「おどろいちゃった」。庶民の胃袋を満たすだけでなく、憩いの広場まで提供したイトーヨーカドー。たとえ千住から店舗が消えても、この児童遊園に「イトー」の名は受け継がれるだろう。


「子供像」の台座に説明が書かれていた