島根県の出雲大社境内内にある「庁の舎」の解体がほぼ決定している――そんなFacebookの投稿がシェアされ、SNSを中心に反響が広がった。また、「庁の舎」設計者に関係が深い早稲田大学の学生が保全を訴える署名運動をネット上で立ち上げ、3月上旬時点で600人以上から賛同を集めている。

出雲大社「庁の舎」の取り壊しが内定?(画像は神門通りの大鳥居。senngokujidai4434さん撮影。flickrより)

維持管理面での問題が以前より存在

「庁の舎」の価値を訴え、保全運動を呼び掛けているのは、建築士の足立正智さん。建築士のグループ向けにFacebookに投稿した。

「庁の舎」は1963年に作られた建物で、後に大阪万博のエキスポタワー、沖縄海洋博のアクアポリスなどを設計する菊竹清訓氏によるものだ。元の庁の舎が1953年に焼失したため、防火性能が高く、災害にも強い鉄筋コンクリート構造になっている。歴史の深い出雲大社という場所で、コンクリートという現代的な素材を使い、調和させたことで人気が高かった。

また、菊竹氏は早稲田大学出身で、戸山キャンパス図書館建設にも携わっている。そうした背景から、早稲田大学の学生を中心とした保全運動も立ち上がっている。

しかし、実用面での不具合も無視できない。発端となったFacebookの投稿でも、

「全般的に 意匠と構造技術が高い次元で統合されており、建築の専門家からの評価は極めて高いが、その一方で維持管理面では建設当時から慢性的な雨漏りに悩まされてきたことも指摘しておかねばならない。建設後、エントランス及び中2階の儀式室の内装改変やプレハブ便所の増築、平成の大遷宮に伴う仮拝殿の接続などの改変が行われている」

と指摘されていた。芸術性と実用性のバランスをどうとるかが、議論の中心になっていくだろう。

ツイッターでも、

などの意見が寄せられた。

庁の舎の取り壊しに関して取材を申し込んだところ、出雲大社の担当者は、

「現在公式に発表されている以上の情報はお出しできません」

と答えた。