「鳥肌が立つ」を感動表現で使うのは大問題?−間違って使われがちな言葉たち
とても感動したときに「鳥肌が立った!」と興奮気味に話している人がいます。スポーツ番組等の解説でもたまに耳にしますが、ある意味これは、「とても素晴らしい」という意味で「ヤバい」という言い方をするより大問題だったのです。
そのヤバさは、なんと、就職試験の面接で使って不採用になった人もいるほどなのです!
鳥肌という言葉は、「寒さや恐怖、不快感により皮膚の毛穴が縮まって、鳥の毛をむしったあとのようにぶつぶつが出る現象」をいいます。つまり、「鳥肌が立つほど恐ろしかった」とか「恐怖のあまり鳥肌が立った」というのが本来の使い方です。
現実的に本当に感動から鳥肌が立つようなことがあったとしても、もとは "羽根をむしられた鳥の肌"からきている言葉ですから、人としての感覚・感性が疑われてもいたしかたないわけです。
「ヤバい」を使うのはヤバいと心得ている人は多いと思いますが、「鳥肌が立つ」はそうではないから「ヤバい」よりヤバいわけです。
ところでみなさんは、「おもむろに」「枯れ木も山のにぎわい」「小春日和」「天に唾(つば)する」という慣用句をどう理解していますか?
じつはこれらは、文化庁において「国語に関する世論調査」が行なわれているものです。平成26年度の調査結果は次のとおりでした。どちらの意味だと思うか?という問いに対しての回答で、太字のほうが正しい意味になります。
●「おもむろに」とは?
ゆっくりとであると回答した人 ―44.5%正解不意にであると回答した人 ―40.8%※以下、下線部省略
●「枯れ木も山のにぎわい」
つまらないものでも無いよりはまし ―37.6%正解人が集まればにぎやかになる ―47.2%●「小春日和」
初冬の頃の、穏やかで暖かな天気 ―51.7%正解春先の頃の、穏やかで暖かな天気 ―41.7%●「天に唾(つば)する」
自分より上位に立つような存在を、冒し汚すような行為をすること ―22.0%人に害を与えようとして、結局自分に返ってくるような行為をすること ―63.5%正解なんと、「枯れ木も山のにぎわい」にいたっては、本来とは違う意味に捉えている人の方が多かったのです!
また、次の内容をあらわす言葉の認識(どちらの言い方だと思うか?)については、以下の結果に。
●「企業が学生を早い時期に採用すること」
青田買い ―47.4%正解青田刈り ―31.9%●「夢中になって見境がなくなること」
熱にうなされる ―27.1%熱にうかされる ―57.2%正解●「いよいよ、ますます」
いやがおうにも ―42.2%いやがうえにも ―34.9%正解●「心配や不安を感じ,表情に出すこと」
眉をひそめる ―44.5%正解眉をしかめる― 44.5%「眉をひそめる」が、本来の言い方ではない「眉をしかめる」と同率でした。「いやがうえにも」にいたっては、本来の言い方ではない「いやがおうにも」以下という衝撃の結果に。
さて、あなたはいかがでしたか?何気に使ってしまっていた言葉もあったのではないでしょうか?
ん?何気に、は、何気なく、でした・・・
文・鈴木ゆかり
※参考
文化庁 平成26年度「国語に関する世論調査」の結果の概要http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/pdf/h26_chosa_kekka.pdf 「大辞林 第三版」(松村明・編/三省堂)