加速する“2007年問題”
外資系ホテルの第1陣として、米ヒルトン・ホテルズ・コーポレーションが東急電鉄と提携し、東京都千代田区永田町に「東京ヒルトンホテル」(現キャピトル東急ホテル)を開業した1963年から40年余り。ヒルトングループの米社と英社がタッグを組み、世界の主要都市や観光地で展開する最高級ブランド「コンラッド」が1日、東京都港区の汐留地区に“日本初上陸”を果たした。40年ぶりの“黒船来航” に、東京都心でのホテル戦争は激化する様相だ。
「コンラッド東京」は、森トラストと住友不動産が手掛けたインテリジェントビルの最上部8フロアに、スイートルーム68室を含む290室を擁する。8メートルの吹き抜けのレセプションカウンターを抜けると、浜離宮の庭園を贅沢に活用した景色の良いバーラウンジが客を迎える。
客室はスタンダードルームでも48平方メートルと広く、ベットルームとバスルームのしきりに透明なガラスを使用している開放感ある造り。宿泊代は最低約6万円程度に設定しており、都内では競合の米ハイアットが展開する「パークハイアット東京」(新宿、178室)や「グランドハイアット東京」(六本木、390室)と並ぶ最高水準の価格設定だ。
東京では、21世紀に入り、都心で数多くのオフィスビルが開業し、供給過剰で賃料が下がる「2003年問題」が起き、各ディベロッパーが競争力を高めようと高級ホテルを積極的に誘致。東京駅前の「フォーシーズンズホテル丸の内東京」(02年開業、57室)や、「ロイヤルパーク汐留タワー」(汐留に03年開業、490室)、「ストリングスホテル東京」(品川に03年開業、206室)など、ビルの最上部に客室を限定し、幅広い空間と夜景で豪華さを演出する「スモールラグジュアリー」と呼ばれる形態で乱立し始めた。六本木のグランドハイアット東京は、高級戦略が功を奏し、前年度の稼働率は94.5%と極めて高い水準で“一人勝ち”している。
だが、東京都心のシティーホテルで過剰供給が起こり、客室が余るいわゆる「2007年問題」が、現実味を増してきた。今年12月には日本橋に「マンダリンオリエンタル東京」(179室)、06年春には六本木の防衛庁跡に「ザ・リッツ・カールトン東京」(250室)、同年夏は日比谷に「ザ・ペニンシュラ東京」(315室)と5ツ星クラスの外資系高級ホテルが続々と参入する。
一方、日本の老舗ホテルも積み上げてきたブランド力を生かし、更なる高級感を演出する投資努力に余念がない。プリンスホテルは今年4月、総工費約300億円をかけ、グループの最高級施設に位置づける「東京プリンスホテル・パークタワー」(地上33階建、客室数673室)を開業し、外資系への攻勢を強めた。証券取引法違反の罪で起訴された前コクド会長の堤義明氏が手塩にかけた“グループ最後の大型事業”として注目されたが、稼働率が5割程度と振るわず、苦戦を強いられている。05年3月期決算によると、多額の特別損失を計上して54億円の最終赤字となるなど、足腰も弱い。
ヒルトングループ肝煎りの「コンラッド」の東京進出に対し、明治時代創業で日本を代表するあるホテルでは「丸の内の金融関係者が多くご利用されており、地域も客層も違うので競合しない」と話し、外資系高級ホテル乱立の影響はまだ見られないという。
しかし、外資系は攻勢をゆるめなさそうだ。1日に催された「コンラッド東京」のオープニングイベントで、ヤン・モンケディーク総支配人は「新たな発想を求める人、ひらめきを周囲に与える人に利用してもらいたい」と述べ、同ホテル路線を「インスピレーション(ひらめき)・クラス」と奇抜な形容で言い表した。「2007年問題」を引き起こしかねない外資系の大量参入は、日本のホテル文化にどのような影響をもたらすだろうか。【了】
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東京では、21世紀に入り、都心で数多くのオフィスビルが開業し、供給過剰で賃料が下がる「2003年問題」が起き、各ディベロッパーが競争力を高めようと高級ホテルを積極的に誘致。東京駅前の「フォーシーズンズホテル丸の内東京」(02年開業、57室)や、「ロイヤルパーク汐留タワー」(汐留に03年開業、490室)、「ストリングスホテル東京」(品川に03年開業、206室)など、ビルの最上部に客室を限定し、幅広い空間と夜景で豪華さを演出する「スモールラグジュアリー」と呼ばれる形態で乱立し始めた。六本木のグランドハイアット東京は、高級戦略が功を奏し、前年度の稼働率は94.5%と極めて高い水準で“一人勝ち”している。
だが、東京都心のシティーホテルで過剰供給が起こり、客室が余るいわゆる「2007年問題」が、現実味を増してきた。今年12月には日本橋に「マンダリンオリエンタル東京」(179室)、06年春には六本木の防衛庁跡に「ザ・リッツ・カールトン東京」(250室)、同年夏は日比谷に「ザ・ペニンシュラ東京」(315室)と5ツ星クラスの外資系高級ホテルが続々と参入する。
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しかし、外資系は攻勢をゆるめなさそうだ。1日に催された「コンラッド東京」のオープニングイベントで、ヤン・モンケディーク総支配人は「新たな発想を求める人、ひらめきを周囲に与える人に利用してもらいたい」と述べ、同ホテル路線を「インスピレーション(ひらめき)・クラス」と奇抜な形容で言い表した。「2007年問題」を引き起こしかねない外資系の大量参入は、日本のホテル文化にどのような影響をもたらすだろうか。【了】
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