植田真梨恵
2008年のインディーズデビューから実に6年半、昨年8月にシングル『彼に守ってほしい10のこと』でメジャーデビューを果たしたシンガーソングライター、植田真梨恵。インディーズ時代に発表された作品はいずれも名盤揃いで、荒削りながらも当時から比類なき才能の片鱗を感じさせた。今年2月25日にメジャーファーストアルバム『はなしはそれからだ』をリリースした彼女に、活動の場を移したことによる変化、見据える視線の先にあるものについてなど話を聞いた。

――初回盤のDVDにはインディーズ時代のPVも収録されていますが、一番古い『未完成品』(2010年)は、ファッションで言えば、モノトーン系だったり、スタッズを付けてたり、今よりロックというか、パンクな印象がありますが、当時から現在に至るまで、音楽の傾向にも変化はありましたか?

植田:音楽に関しては、聴くものとか、中に入れてるものとかは、そんなに変わってないんですよ。単純に、自分自身が身にまとう物とか、わざわざ無いものを出さなくてもいいかな?みたいな感覚にはすごくなって。人と接していくことでモヤッとすることとか、なにくそ!って思うような部分が自分自身、減ったので。わざわざトゲトゲしなくても、いいようになったのかな?とは思っていますね。



――人間的な成長といいますか、何か変わるきっかけがあったんですか?

植田:『センチメンタルなリズム』(2012年)というアルバムをリリースした後ぐらいから、悶々としたものが晴れ始めて。「こういうものをやりたい」という所が一通り、一回出し切れたので。リリース出来たことで、それ以降は、そんなに鬱屈したものは無くなったような気がしていますね。

――『センチメンタリズム』の歌詞に「“会いたい。”ばっかりのラヴソングが 宗教のようにはびこる世の中で」という歌詞がありますが、インディーズ時代の自分が置かれた状況と、メジャーに溢れる流行りの歌との間に距離を感じたことはありますか?

植田:その歌詞は当時も、未だにピックアップされて言われることが多いんですけど、その後に続く歌詞は「感傷的な僕の歌も もうおおかた同じようなものだね」で、結局同じようなものだと歌っているんです。“会いたい。”という想いには特に異論は無くて、私も同じように抱えているし(笑)。当時から全く変わらないんですけど、単純に似たようなモノが増えまくってしまうことに退屈な感覚を持っていたんだと思います。



――センチメンタル、感傷的という広義では確かに同じようなものかもしれないですけど、表現のアプローチが違うというか。例えば、世の中で切ない片想いの曲が流行っているからといって、自分もそこに便乗したいとは思わないですよね。

植田:全くないですね。むしろ今、音楽をやる上で、世の中に足りていないというか、私は「もっとこういうものを聴きたい」と思っているものを、いち音楽を作る者として、ちゃんとリリースしていきたいなと思っているし。その上で、トゲトゲに尖ったものよりかは、なるべくストレートに刺さるようなものを作りたいなと思っていますね。

――『心と体』(2013年)がインディーズ最後の作品になりますが、その後メジャーデビューされて、以前との違いを感じますか?

植田:曲を作っていくという気持ちの上では、かなり変わりました。『心と体』までは「わかって わかって」という歌詞だったり、自分一人が抱えている想いをひたすら再現しようと、狭い所から歌っている感覚だったんです。でも、折角わざわざメジャーに移籍するので、「どうしてそうしたいのか?」「何をやっていくのか?」と考えた時に、今までみたいに鬱々した気持ちをただ形にして届けるのであれば、インディーズでやっていればいいかなと思ったんです。メジャーでやるなら、もっと聴いた時にちゃんとパワーに繋がるような、少しでも前向きなものが後味として残るような音楽を作らないと、意味が無いなと思って。私自身も今、そういう曲を聴きたいなと思って作っている部分が大きいです。