W杯出場権獲得が確実に決まるであろう、と誰もが思っていたW杯予選対ヨルダン戦は、1─2で敗れた。ショッキングな負けとして受け止められているけど、この敗戦の意味を改めて考えなければならないと思っている。
 
日本は前半終了間際のコーナーキックから先制点を許した。すぐに前半終了の笛が吹かれたけど、選手たちも監督も、明らかに動揺の色が見て取れた。前回の対戦で6─0で勝った相手に、引き分け以上で出場権獲得が決まるという状況で迎えた試合に対して、まさか先制されるとは思ってもみなかったのだろう。先制された場合はどうする、というミーティングもなかったんじゃないか、とさえ思ってしまうよ。
 
おそらく前半を0─0で折り返していれば、結果は違ったものになっただろうし、それくらいこの失点は大きく、同時に日本の脆さを象徴するゴールだった。なぜなら22日のテストマッチ、対カナダ戦でも同じようにコーナーキックでやられているからね。その時点で明らかな課題として挙がっていたはずだけど、油断なのか、相手を舐めていたのか、まったく修正されずにあのシーンを迎えてしまったところに問題がある。つまり偶然の負けではないんだ。
 
メディアもファンも、日本がまるでアジアの横綱であるかのように振舞っている。けれど冷静に考えてみれば、イラクにホームで苦戦し、オマーンには辛勝、アジアカップの優勝も首の皮一枚でつないできたものだった。それがこのヨルダン戦は負けの方に転んでしまっただけのことで、日本の実力としてはこんなものなんだ。そういう試合で勝負を分けてきたのは運とメンタルであり、本田と長友の不在の影響は、そうした部分に表れているのではないかな。
 
追いかける展開の中で、ザッケローニの代表監督としての経験のなさも見えた。チームは生き物だ。それなのに、盲目的にメンバーを固定してきた問題が結果となって表れてしまった。前田の調子が良い時もあれば悪い時もある。今の前田は? 決して調子は良くないよね。なぜ、Jリーグで調子の良い選手を入れないのか。不測の事態に対応できるかどうかは、そういうところから始まっている気がするよ。
 
試合後、選手たちは口々に「次で必ず決める」と言った。次も選ばれると誰が決めた? 代表というのはもっとシビアな世界だ。日本は決してアジアの横綱ではないし、メンバー選考の椅子は固定式ではない。敵は自分たちの中にあるんじゃないかな。負けたのは悔しいけれど、この敗戦を機に、もう一度自分たちの足元を見つめなおすべきだね。