和久井です。

ここまで傷害発生から始まり、トレーニング、超回復、オーバートレーニングのメカニズムについて考えてきました。

今回は、トレーニングプログラムを作成する上でも大切な、サッカーのシーズンについてオフシーズンを中心に見ていきましょう。

今回もサッカーに関連した傷害や病因などの研究を目的とした、FIFAが設立した医学評価研究センターの調査結果を参考にします。(要約)

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チームのトレーニング期間を分けて計画する。この概念は、暦年、シーズン、週または日に適用でき、その期間中のトレーニング量、トレーニング強度、技術トレーニングの内容に基づいて作成される。1年間のトレーニングは通常4期に分けることができる。

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第1期は、前年のシーズン終了時から、「積極的休息」と呼ばれる期間である。この重要な期間には、選手は運動を続けるが、サッカーとは無関係の運動(例えば、サイクリング、水泳、ハイキング)を行う。

第一に、運動は選手のフィットネスレベルを適度に維持するのに役立つ。第二に、これはサッカーから離れて心理的・情緒的休息をとる期間である。

第2期は「準備期」と呼ばれ、選手がフィットネスを徐々に構築する段階である。運動量は多いが強度の低いトレーニング(ジョギングなど)が重視される。フィットネスが徐々に向上するにしたがって、走る距離が短くなり、走るスピードは上がる。

第3期の「移行期」は、有酸素運動の多い準備期と初回トレーニングキャンプとの間の期間である。この期間中は、トレーニング量を減らすとともに、強度を高める

移行期の初期にはファートレック走(簡単に言えば異なった地形で、様々なバリエーションの短距離を継続的に走る練習です。)が適しているであろう。それからインターバルの長くおいたランニングに移行し、やがてインターバルを短縮・強化していく。

チームが集合する前の最後の数週間には、ペースの速い(しかし全力疾走ではない)反復走を多数回行う。例えば、インターバルトレーニングの典型的な運動:休息比1:3の方式にのっとり、15秒の90メートル走を45秒の休息をはさんで行う。この走行距離は男性成人選手向けである。女子選手のみならず若年選手の場合も必要に応じて短縮する。概念としては、速いペースで15秒間走るということである。最初はこれを10〜20回行い、それから毎週5〜10回増やしていく。合計数は選手とチームの年齢と期待するプレーに基づいて決まるであろう。16歳以下のチームでは、この反復走の回数は20〜25回となるであろうが、レベルの高い成人選手では40回にもなるであろう。

最後の「競技期」は、試合を綿密に模した運動でコーチが選手を試合レベルのフィットネスに高め、技術、戦術、フィットネスが重視される期間である。ランニングの総量は準備期より少なくなるが、強度は試合に必要な強度に近づく。

トレーニング開始時には、筋肉痛や筋硬結などのため、パフォーマンスがわずかに低下する、(「警告期」)。次に、身体が新たな要求に適応し始める(「抵抗期」)。そして、フィットネスが維持されるようにトレーニングを調整する(「競技期」)。

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トレーニング刺激を増強し続けているのにパフォーマンスが低下した場合は、脱トレーニング
状態に陥っている可能性がある(疲労期またはオーバートレーニング期)。しかし、パフォー
マンスがプラトー(停滞期)に達した場合は、トレーニング量と強度をいったん下げてから、再び上昇さ
せ始めること(移行期・準備期)により、やがてパフォーマンスをレベルアップすることがで
きる(より高い新たな競技期)。

サッカーはシーズンスポーツである。すなわち、準備期(プレシーズンすなわち準備/移行期)、競技期(インシーズン)、回復期(オフシーズンすなわち積極的休息)がある。プレシーズンとインシーズンのトレーニングはコーチの領分であるが、オフシーズン中はコーチが組み立てたフィットネスプログラムを選手が実行する責任を負う。選手がオフシーズン中に行うことは、次のシーズンに影響を及ぼす。

ほとんどの選手はコーチの監視下でないと自分のフィットネスを維持する方法がわからない。1年間のトレーニングプログラムを正しく計画するには、トレーニングの期分けの概念をある程度理解する必要がある。

サッカー以外の持久力トレーニング(サイクリング、インラインスケート、クロスカントリースキー、水泳など)もちろん、持久力トレーニングを行っても、最大酸素摂取量の遺伝的要素の方が大きな影響を及ぼすことに変わりはない。しかし、このトレーニングの影響を軽視してはならない。このような運動は、フィットネスレベルの向上に役立つのみならず、選手をランニングとプレーへの「依存症」から気分転換させる。

サッカー以外のボールスポーツ(バドミントン、テニス、スカッシュ、5人制サッカーなど)を遊びで行うことにより、敏捷性を維持するとともにフィットネスレベルを向上させることができる。重要なことは、このようなトレーニング活動を競技としてでなく、レクリエーションとして行うことである

オフシーズン

カロリー摂取

オフシーズン中にトレーニング量が減少した(1週あたりの日数や1日あたりの分数として)場合、運動として消費されるカロリー数も減少する。したがって、トレーニング量を減らしている期間中にも体重を維持するため、食事摂取量を減らすというのは正しい考え方である。

パフォーマンスを向上させるために体重を落とす必要がある場合もある。しかし、この判断は、体重減少が望ましいかどうかに関する適切なアドバイスを受けずに行ってはならず、栄養および体重減少の目標に関するアドバイスも受けなければならない。体重を落とすことを決断した場合、体重を落とす時期はインシーズンではなくオフシーズンとすること。シーズン中に体重を落とそうとすることは、パフォーマンスの低下と怪我の可能性が大きくなる。体重を落とすならばオフシーズンまで待つ方がはるかに得策である。

筋力トレーニング

筋力はフィットネスの要素の1つであり、ほとんどの選手は筋力が向上すればスポーツ能力を向上させることができる。しかし、筋力トレーニングによって達成できることもあるが、達成できないこともある。例えば、筋力が向上すれば、身体的負荷に対する抵抗力が高まり、怪我をしにくくなる。しかし、筋力トレーニングには、ゴールキックの距離を伸ばしたり、シュートの威力を増したりする効果はあまりない。

筋力とパワーを向上させるのに最適な時期はオフシーズンである。この点について、コーチは選手の筋力を全体的に強化させる運動を識別すべきであり、下肢を鍛えればシュート能力が高まるだろうとの考えに基づいて選手の下肢ばかりに注目してはならない(シュートが上達するには、グラウンドでシュート練習をしなければならない)。シーズンが始まると、筋力強化という目標は、筋力維持という目標に道を譲る。

休息

サッカー界では、ユース選手・プロ選手ともに1年あたりの出場試合数が多すぎるということが真剣に懸念されている。学校チームの試合、クラブチームの試合、インシーズン・オフシーズンのトーナメントの試合を合わせると、選手が休息をとれるのは怪我をした時だけという状態に至る場合もある。

プロ選手の場合、パフォーマンス不良と傷害につながる疲労を予防するため、1年あたりの試合数を60試合以下に制限すべきとの意見がある。計画的に休息期間をとり、その後に翌シーズンに向けたフィットネス再建を計画する必要がある。休息は重要であるから、運動はするがサッカーはしないという期間をある程度設けるべきである。休息は翌シーズンのエネルギーを準備する「電池の再充電」のために重要である。サッカーから遠ざかる期間は重要であるが、休息時間は休止時間ということではなく、運動しないという意味ではない。

フィットネスはトレーニング強度を低下させた場合に最も急速に低下する。シーズン初期の試合を、調整不良や技術の鈍った状態で迎えたいと思う選手はいない。選手はフィールドに出てプレーを始めたいと思っている。怪我のせいで出場できない期間ほどイライラする時ではない。しかし、ほとんどの怪我はフィールドに戻る前にある程度の運動をすることによって予防することができる。

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シーズン終了時から、第1期「積極的休息」→第2期「準備期」→第3期「移行期」→第4期「競技期」と進んでいきますが、強度・技術は徐々に高めていくのとは反比例して、トレーニングの量は段々と減らしながら「競技期」を迎えます。

筋力トレーニングによって筋力やパワーを向上させる最適な時期はオフシーズンであり、、筋力トレーニングによってほとんどの選手は筋力が向上し、身体的負荷に対する抵抗力が高まり、怪我をしにくくもなりますが、筋力トレーニングには、ゴールキックの距離を伸ばしたり、シュートの威力を増したりする効果はあまりありません。

以前もお話しましたが、サッカー界では、ユース選手・プロ選手ともに1年あたりの出場試合数が多く、パフォーマンス不良と傷害が発生しています。1年あたりの試合数を60試合以下に制限すべきと意見が挙がる程、休息の重要性が様々な場所で説かれています。

オフシーズンの「積極的休息」に関しては特に重要な期間として考えられていますが、オフシーズン中は、食事や休息、トレーニングなどの管理は選手が実行する責任を負います。選手がオフシーズン中に行うことは、次のシーズンに大きな影響を及ぼします。

選手はこうした基本的な概念をしっかりと把握し、競技期のためのオフシーズンを過ごす必要があるようですね。