【官報癒着】2ちゃんねるが警察からの削除依頼を無視しているというのは本当か
【まとめ】
・警察やインターネット・ホットラインセンター(IHC)からの削除依頼が2ちゃんねるに届いていなかった可能性がある。
・IHCの削除依頼は独自方式(メールにPDF添付)で、2ちゃんねるの削除依頼ローカルルールが無視されている。
・違法情報の削除依頼ルートは「IHC」「警察庁」「その他」と大きく3つある。
・そのうち「IHCルート」は依頼が届いていない可能性がある。昨今見られる警察庁発表報道はこの「IHCルート」の削除依頼のことを指しているようだ。
・つまり、削除依頼が無視されているわけではなくて、単に届いていないだけなのではないか。
通常2〜3通メールをして反応がなければ、届いていない可能性を疑うべきなんじゃないかと思うが、IHCは反応がないまま5000通もメールを送り続けていた。ある意味すごいが、あまりにお役所仕事ではないだろうか。本当に削除依頼する気があるのか。
●「2ちゃんねる、警察が削除要請の違法情報を放置」一斉報道の謎
昨日「2ちゃんねるへの削除依頼が大量に放置されている」というニュースを各報道機関が報じた。
2011年下半期のインターネット・ホットラインセンター(IHC)による違法情報の削除要請件数が明らかとなり、2ちゃんねるが削除要請に一切応じていない、というもの。 IHCは、警察庁からの業務委託によりインターネット協会が運用している組織で、違法・有害情報を受け付けて掲示板管理者等をおこなっている。
同じ内容を報じた媒体は、ちょっとネットで調べただけでもMBS毎日放送、TBS、日本経済新聞、東京新聞、MSN産経、読売、時事通信、毎日新聞、NNN、FNN、朝日新聞等がウェブに記事を掲載しており、おそらく新聞紙面やテレビでのニュースでも流れているのだろう。内容はどれも似ていて、警察庁の発表をベースにしたものらしい。
これらマスメディア報道のポイントを、一言でまとめると「2ちゃんねるは違法情報の削除依頼を年間5000件以上受けているにもかかわらずまったく反応がない」というもの。「なぜ反応がないのか」「削除依頼はどのようにおこなわれているのか」「2ちゃんねる側に依頼はきちんと届いているのか」という疑問が自然とわいてくる。
●削除依頼は独自の方法でおこなわれていた実は今回と似たような報道が2ヶ月ほど前に流れたことがある。このときは、2011年上半期の集計結果を元にした報道で、論調も今回とそっくりだった。
実はそれまで、IHCからの削除依頼は2ちゃんねるの削除依頼ローカルルールにのっとっておこなわれているものだと記者は思っていた。しかし、調べるとどうもそうじゃない。2ちゃんねる内にそれらしい削除依頼が見当たらないのだ。それではどのように削除依頼はおこなわれているのだろうか。よくわからないのでIHCに質問状を送ってみた。(IHCへの質問と回答の一覧はこの記事の末尾に掲載しています。ここでは一部のみ紹介し、コメントを加えます。)
●ガイドラインのすれ違い
【IHCへの質問】
「2ちゃんねる」には削除依頼に関してローカルルールが存在しガイドライン通りに 依頼しないと削除がおこなわれないことはご存知でしたか。
【IHCからの回答】
そのようなローカルルールが存在することは承知しています。
【質問】
「2ちゃんねる」の削除依頼ルールについてご存知であった場合、なぜそのルール に従わなかったのですか
【回答】
対応依頼は、ホットライン運用ガイドラインに沿って行うことになっているためです。
2ちゃんねるでは削除依頼についてのガイドラインがあり、IHCにも削除依頼を送る際のガイドラインがある。2ちゃんねるは削除依頼掲示板に書き込む、というルールであり、IHCにはメールで送る、というルール。ここで完全にすれ違いが起きてしまっている。
【質問】
これはつまり、2ちゃんねるの削除依頼ルール通りではなく、メールアドレス宛に削除依頼を送付したということなのでしょうか。そのメールアドレスはどのページに記載されていたものなのでしょうか。
【回答】
個々のプロバイダ等の削除依頼の宛先やその入手方法については公表しておらず、個別にもお答えできかねます。
どこに削除依頼を送っていたのかは教えてもらえなかった。しかし、何千通もメールを送って反応がないのにメールを送り続けるというのはいかにもお役所仕事だ。普通は2〜3通でおかしいと気づくだろうし、反応がないところへメールを送り続けるという判断にはならないだろう。なぜそんな作業を延々と続けているのか、逆に疑問だ。
【質問】
フォーマットは PDF でしょうか?
【回答】
原則として PDF です。依頼の形式に関して改めてご説明します。
電子掲示板の管理者やプロバイダの方の
(1)メールアドレスが判明しているとき
は、デジタ ル署名を付した電子メールに、依頼書の PDF ファイルを添付して送信する方法で依頼しています。また、
(2)メールアドレスが判明していない場合で、問い合わせフォーム等が設置されているとき
は、まず、その問い合わせフォームから管理者等の方のメールアドレスを お知らせいただくようお願いし、そのメールアドレスに対して、依頼書の PDF ファイルを 添付したデジタル署名付きの電子メールを送信する方法で、依頼を行っています。
これ以外の方法により依頼を行うことは、原則としてありません。
IHCからの依頼は、メールに添付されたPDFファイルによっておこなわれる、とのことだ。それにしても何故PDFなのだろうか。これが効率的だとはとても思えないのだが。
既に報道などで明らかになった事などとあわせて話をまとめると、こういうことだ。
(ガイドラインのすれ違い)
削除依頼は2ちゃんねるの削除ガイドラインを無視し、IHC独自のフォーマットでおこなわれた
(虚空へメールを送っている可能性)
IHCが独自に入手した宛先に対してPDF添付メールを昨年5000通以上送ったがまったく反応がない
警察庁の先日の発表によれば「5000件の削除依頼を無視している」とのことだが、そもそも警察庁が削除依頼の仕事を委託しているIHCのやり方はこれで良かったのだろうか。まったく反応がなくて1年間に5000通のメールを送り続けられるIHCも相当ハートが強いとは思うが、見方を変えればお役所仕事の結果とも言える。
先日、違法・有害情報相談センターのアドバイザーの方にお話をうかがったところによると、こういった種類の2ちゃんねる等への削除依頼は、警察庁から直接送られているものと、IHCなど外部機関から直接送られているもの、そしてそれ以外、例えば相談センターへ寄せられるものの3つに大別されるらしい。違法・有害情報相談センターへも削除の方法についての問い合わせは多いが、2ちゃんねるへ要請した分に関しても適宜削除対応はおこなわれているという。このアドバイザーの方もIHCの削除依頼方法が間違っている可能性を指摘していた。IHCも変なとこで意地をはらずに2ちゃんねる側のガイドラインに沿った削除依頼を出すなど柔軟な対応をしてみてはいかがだろうか。
なお、ガジェット通信からは警視庁に対しても、これまでどのような形で2ちゃんねるへ削除依頼を出したのか、という質問状を送っているが、いまだに回答をいただいていない。●ウラを取れないマスメディア
マスメディアは、今回の警察が発表したことを疑いもせずにそのまま掲載していた。ちょこっと想像力を使って、ちょこっと調べればすぐにおかしいとわかることをウラ取りもせずに、警察側の発表だけで記事をつくってしまうからこのようなことが起きてしまう。これだけの数の報道機関がありながら警察側の発表のおかしな点を指摘できた媒体は実質、ひとつもなかったといえる。これが低レベルな日本のジャーナリズムの実態であり、警察とマスメディアの不適切な関係が非常にわかりやすい形で露呈した一件だと言うことができる。
警察は、捜査を有利に進めるためだけに都合の良い情報を垂れ流しにするという悪習をいますぐやめて欲しい。そしてマスメディアは、それをそのままウラ取りもせずに拡散するのをやめて欲しい。このままでは警察もマスメディアも、誰にも信用されなくなってしまう。
●情報提供お待ちしております
インターネット・ホットラインセンター(IHC)、財団法人インターネット協会(IAJ)に関する情報提供をお待ちしております。また、諸般の事情により書きたいことを書けないマスメディア関係者などからの情報提供も歓迎です。
[ガジェット通信]情報提供フォーム
https://www.razil.jp/getnews/tarekomi/
■官報癒着に反対し、警察からの適切な情報公開を求める署名
マスメディアと警察の情報癒着に反対し、オープン化と適切な情報公開を求める署名です。紙での署名集めと、ツイッターアカウントを使ったネット署名をおこなっています。
警察側の発表をうのみにし、何の疑問も持たずに情報を垂れ流しするマスメディア。そんな不健全な警察とメディアの関係にNOという意思表示をおこなってください。
●【賛同される方は署名をお願いいたします。】●(Twitterを使った簡易署名はこちらです)
警察からマスメディアへの情報漏洩の舞台となっている「夜回り(夜討ち)」「朝駆け」という悪習についての見解をたずねる質問状を先日送付しましたが、残念ながらまだ回答をいただいておりません。
【官報癒着】警察庁、マスメディアの「夜回り」問題について回答できずhttp://getnews.jp/archives/210666
新聞・テレビの記者が警察幹部の自宅を夜や朝に訪ね、秘密裏に捜査関係の情報をはじめとする機密情報を得る行為を「夜回り(夜討ち)」「朝駆け」といいます。警察からの情報漏洩の温床であり、警察と報道の不適切な関係の象徴ともなっているこの悪習に対する警察、そしてそれを監督する立場の方に対する見解を今後とも求めてまいります。
■資料:IHCへの質問と回答
【質問】「2ちゃんねる」には削除依頼に関してローカルルールが存在しガイドライン通りに依頼しないと削除がおこなわれないことはご存知でしたか。
【回答】そのようなローカルルールが存在することは承知しています。
【質問】「2ちゃんねる」の削除依頼ルールについてご存知であった場合、なぜそのルールに従わなかったのですか
【回答】対応依頼は、ホットライン運用ガイドラインに沿って行うことになっているためです。
【質問】IHC より「2ちゃんねる」へ削除依頼が送付されたとのことですが、どのような形式
のものですか。可能な範囲で具体的な事例を教えてください。
【回答】「ホットライン運用ガイドライン」の「第3 プロバイダや電子掲示板の管理者等 に対する違法情報の送信防止措置等依頼」の「5 送信防止措置等依頼手続」、及び、「第 4 プロバイダや電子掲示板の管理者等に対する公序良俗に反する情報に関する対応 依頼」の「5 対応の依頼手続」で定められている依頼手続きに従い、「違法情報に関 する送信防止措置等依頼書」、「公序良俗に反する情報に関する対応依頼書」を送付し ています。「ホットライン運用ガイドライン」の 24 ページ、25 ページに、依頼書の参 考書式が記載されています。
▼運用ガイドライン
http://www.internethotline.jp/guideline/index.html
【質問】フォーマットは PDF でしょうか?
【回答】原則として PDF です。依頼の形式に関して改めてご説明します。 電子掲示板の管理者やプロバイダの方の(1)メールアドレスが判明しているときは、デジタル署名を付した電子メールに、依頼書の PDF ファイルを添付して送信する方法で依頼して います。また、(2)メールアドレスが判明していない場合で、問い合わせフォーム等が設置 されているときは、まず、その問い合わせフォームから管理者等の方のメールアドレスをお知らせいただくようお願いし、そのメールアドレスに対して、依頼書の PDF ファイルを 添付したデジタル署名付きの電子メールを送信する方法で、依頼を行っています。これ以 外の方法により依頼を行うことは、原則としてありません。なお、個々のプロバイダ等へ 送付した依頼書の内容は公表しておりませんが、依頼書の参考書式は「ホットライン運用 ガイドライン」の 24 ページ、25 ページに記載のとおりです。
▼運用ガイドライン
http://www.internethotline.jp/guideline/index.html
【質問】「2ちゃんねる」への削除依頼はどこを宛先としてどのような手段で送られたのです か。
【回答】一般的な対応方法は、サイト上に管理者等のメールアドレスが記載されていれば そのメールアドレスへ、もしメールアドレスが記載されていない場合は問合せフォームから送付先メールアドレスを照会します。なお、個々のプロバイダ等の削除依頼の 宛先については公表していません。
【質問】これはつまり、2ちゃんねるの削除依頼ルール通りではなく、メールアドレス宛に削除依 頼を送付したということなのでしょうか。そのメールアドレスはどのページに記載されて いたものなのでしょうか。
【回答】個々のプロバイダ等の削除依頼の宛先やその入手方法については公表しておらず、個別にもお答えできかねます。
【質問】「2ちゃんねる」に対して IHC から送付された削除依頼の総件数と実際に削除がおこなわれた総数を教えてください。
【回答】統計情報は公表していますが、個々の削除要請先に関する対応状況は公表してい ません。
▼統計情報
http://www.internethotline.jp/statistics/index.html
【質問】これまで「2ちゃんねる」に送付された削除依頼の月毎の件数と実際に削除がおこな
われた件数を示してください(IHC 設立以来すべて)
【回答】統計情報は公表していますが、個々の削除要請先に関する対応状況は公表してい
ません。
【質問】「2ちゃんねる」に送付された削除依頼のうち「薬物犯罪等の実行又は規制薬物 の濫用を、公然、あおり、又は唆す行為」「規制薬物の広告」に該当するものはそれぞ れ月あたり何件ですか。
【回答】統計情報は公表していますが、個々の削除要請先に関する対応状況は公表してい ません。
【質問】公表されていないとおっしゃっている個々の削除要請先に関する対応状況についての報道 が見受けられますが、これは IHC から「警察関係者」へ直接提供されたものということで よろしいでしょうか。この情報提供は警察側からの要請に基づくものでしょうか。
【回答】IHC では、ホットライン業務の委託元である警察庁に対しては詳細の情報を報告 しておりますが、警察庁において、その情報がどのように取り扱われているか掌握してお りません。
【質問】IHC からの削除依頼にはどのような法的根拠があるのでしょうか。関連する法律と条
文を添えてご説明いただけますでしょうか。
【回答】違法情報については、「ホットライン運用ガイドライン」の 26 ページ以降で示し ている法律が根拠です。有害情報(公序良俗に反する情報)については、ホットライ ン運用ガイドラインを根拠に、サイト管理者やプロバイダの方に対して、利用規約や 利用者との間の契約に基づく自主的な対応をおとりいただくよう依頼を行っています。 なお、依頼を受けたプロバイダ等が対応を行うかどうかは任意となります。
【質問】つまり、無視しても問題ないということなのでしょうか? IHC からの削除依頼を無視したらどうなるのですか?
【回答】IHC としては、違法・有害情報が掲載されているにもかかわらず、適切な措置がサイト管理 者やプロバイダ等によりとられなかった場合、その上位プロバイダに対して、別途送信防 止措置や自主的な対応を行うよう依頼することになります。

その依頼を無視した結果、サイト管理者やプロバイダ等がどのような責任を負うことにな るかは、IHC はお答えできる立場にありません。
【質問】IHC に関係する方の中に過去警察に関係した方は一名もいらっしゃらないという認識でよ ろしいでしょうか。そうでない場合は、それぞれの方々が警察とどのような関係を持っていたのか教えてください。
【回答】IHC の業務に従事する者の中には、過去にも現在も、警察組織に属する者は含まれておりま せん。
【質問】警察庁と財団法人インターネット協会の業務委託契約の内容を開示してください。
【回答】財団法人インターネット協会は、業務委託契約の内容を開示していません。
【質問】業務委託契約の内容を開示できない理由を教えて下さい。
【回答】財団法人インターネット協会情報公開規程(平成13年8月28日制定)で対象とされて
いない情報だからです。以下、情報公開規程を抜粋します。
(目的)
第1条 この規程は、財団法人インターネット協会が「公益法人の設立許可及び指導監督
基準」及び「公益法人の設立許可及び指導監督基準の運用指針」に定めるところによる情
報公開に関する事項を規定する。
(情報公開の対象とする資料及び備え置き)
第3条 情報公開の対象とする資料は次の各号に掲げるものとし、情報公開に係る資料の
閲覧場所に常時備え置くものとする。
(1)寄 附 行 為 (2)役 員 名 簿 (3)事業報告書 (4)決 算 書 (5)事業計画書 (6)収支予算書