橋下徹新大阪市長が、今月19日の就任を前に先手を打った。市役所の主要なセクションを次々と訪問。さらには、大阪選出の自公国会議員を中心に「都構想」を推進する議連まで発足する勢いだ。そうした中、戦々恐々とするのが、4万人の職員を擁する大阪市役所。今まさに、激しいまでの「反橋下パージ」が始まろうとしているのだ。

 12月5日午前に、大阪市役所に初登庁を果たした橋下徹新市長(42)。正式な市長就任は19日だが、それまでに、市の幹部から重点事業や課題について説明を受けた。今週いっぱいかけて、全局の幹部と面会する予定だ。現在、市政改革に使える人間か使えない人間か、恭順の意思か敵対か、事実上の面接による「仕分け」が行われている。

 同じ5日には、早くも市政改革の組織のあり方と工程表を明らかにし、来年6月中旬をメドに改革案をまとめるとしている。総額300億円に上る各種外郭団体などへの補助金を見直すとも明言しており、甘い既得権益を吸う団体には容赦なく締めつけるスタンスを示した。いわば、先制パンチを繰り出した格好だ。

「4年前とはまったく様相が異なる」

 と指摘するのは、ある自民党関係者だ。

「4年前に、橋下さんが大阪府知事になった時は、最初は素人でしたからね。府の職員も最初は様子見をしていたら、橋下さんは勉強して、既得権益叩きを始めたので、職員が泡を食ったという経緯がありました。今回は、最初から完全に敵対関係で臨んでいますからね。市の職員はたまったもんじゃないでしょう。ですが、選挙結果もありますし、白旗でしょうね」

 表向きは、平静を保ちつつも、4万人の大阪市職員の心中は穏やかではないだろう。

 当の大阪市労組では、

「橋下さん本人が市のことはわからないと言っているように、具体的な提案が新市長からはまだ出てきていません。『大阪維新の会』側から2月に出された、『教育基本条例案』と『職員基本条例案』の2条例案に対する対策は継続的に行っていますから、その延長線上でどうなるかですね。かつての大阪市特別顧問で、現『維新の会』政策特別顧問の上山信一・慶応大学教授の方針などを受けて、平松さんの前の関淳一市長時代から、職員数や給与については、リストラは相当進んだはずなんですが‥‥」

 と言葉は重く、戦々恐々といった様子がうかがえる。

 もともと、大阪人は「大の権力嫌い」で知られている。東京に対するライバル意識もあり、お上に対しても手厳しい。それだけに、国を敵に回してでも橋下氏が断行する“改革”を支持してきた経緯がある。

 さらには、橋下氏も「アメとムチ」の使い分けで、市役所の“無血開城”を迫る勢いだ。

 府政関係者が明かす。

「橋下さんは約4年間の府知事時代にいろいろと学んで、部下に対してアメとムチをうまく使い分けられるようになっています。そのため、自殺する府職員が増えた一方、府政改革に意欲を燃やすシンパも増やした。今まさに、その市役所内の“橋下シンパ”を取り込もうとしている最中と言っていい。そして次の段階では、シンパ職員に反発勢力を抑えさせつつ、市職員同士で争わせて人心を掌握するつもりですよ」

 さながら、市役所内に「スパイ網」を張り巡らせる恐怖政治の始まりと言えよう。